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黄昏の銃声




題名:黄昏の銃声
原題:Long Range (2020)
著者:C・J・ボックス C.J.Box
訳者:野口百合子
発行:創元推理文庫 2026.06.26 初版
価格:¥1,400

 「なめらかな金色の弾丸は秒速九百十五メールで高地の薄い空気中へ飛び出した」

 という書き出しの本書。タイトルは『黄昏の銃声』。ということで狙撃が、本書のテーマである。最初の頃は『ブルー・ヘブン』『さよならまでの三週間』などシリーズ外作品も書いていたのだが
、やはり同主人公(今ではジョー・ピケット夫婦と三人娘も立派なサブキャラたち)の人生や家族の歴史を着実に辿りながらの作品づくりが目立つ。

 家族のサブキャラを前に立てたりしながら二十作にも渡りこれでもかこれでもか事件を起こし、このファミリーをピンチに追いやらせ、と良く書き継いできたものだ。

 特に前作では、超のつく暴力集団を前面に立て全面的なバイオレンス・アクションとあいなり、本作ではその流れを引きずりつつも、新たな遠距離狙撃事件が幕を開ける。ややストーリーが乱暴になってきた傾向に戸惑いを覚えつつも面白さという意味ではかなり上向きになっているので、アクション好きな読者には喝采なのだろう。

 それでもこの作家の持つファミリー・ドラマ的要素が、バイオレンスなストーリーの裏をしっかりと支えてくれているゆえにぼくはこのシリーズを推してきた。最近は裏主人公と言ってもいい鷹匠ネイト・ロマノウスキーまでが一家を成しているが、本書では前作と異なりいきなり投獄されてしまう。ジョー一家は彼の力を借りられないばかりか、彼の疑惑も晴らさなねばならない。

 そんな窮地のなかで、謎のスナイパーを割り出し追い詰めてゆくのが本書のストーリー。スナイパーというのは、標的との距離が離れているゆえに特定が困難であることを思い知らされるようなストーリーである。

 同時に、寒々しい事件が続いているので、シリーズもそろそろ一旦バイオレンスから離れて頂けないものかなと、初期作品たちへの回帰を望んでいる自分がいる。「荒野のディック・フランシス」と呼ばれた頃の初期に。

(2026.07.06)
最終更新:2026年07月14日 13:19