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ハウスメイド




題名:ハウスメイド
原題:The Housemaid (2022)
著者:フリーダ・マクファデン Freida McFadden
訳者:高橋知子
発行:ハヤカワ文庫HM 2025.8.25 初版 2025.12.15 6刷
価格:¥1,280


 本邦初登場の作家ながら、昨年度『このミス』3位『ミスマガ』1位に選ばれた作品で気になっていながら、今頃読み終える。タイトルが自分向きではないのかな? と思ったが、どうもそれだけでは収まらぬ気がして、時期を失しつつも手に取った本作。

 キャラクター表を見ると何と5人。うち1人は小学校へ通う幼い娘なので、セリフを持って行動するのは実質4人だ。500頁超の大作なのに4人。チョイ役は多少登場するとしてもセリフのある人は本当に4人だけ。

 そのせいだけとは思えないけれど、こんなアンブレイカブルに読書が進むとは思わなかった。一度読み始めたらやめられないタイプの面白本というのはあるようでなかなか珍しい。20代女子のハウスメイドであるミリーの一人称で大方が進められる本書は、その手のリーダビリティは抜群なので、本の分厚さ(500頁超)の割には、相当に読み易い。

 青春期を刑務所で送ったらしいミリーは、奇しくもメイドという職業にありついたのだが、住み込みで働くウィンチェスター家はどうも怪しい。その顛末は第一部で語られ、初のハウスメイドとしての日々を奇妙な家族たちの中で送るうちに、その家族(夫、妻とその連れ児の三人+パートタイムで来ている庭師のエンツォ)のあまりの奇妙さに困り果ててゆく。仕事には就きたいし、ムショには戻りたくないとの思いから、奇妙な家族関係の裏を徐々に知ってゆくが……。

 知らないほうが良い場合もあるけれど、一度深追いするするともう戻れなくなるのが犯罪ミステリの定番であり、本書もその枠を外れることはない。

 二部では、視点が嫁のニーナに代わり、ここで家族の裏事情が語られることによって、この家族の実態がミリーの観るものとはまるで異なるところにあることが判明する。そして大団円としての三部に繋がるが、そこはある意味、破綻でありの家族のカタストロフである。

 ミリーがこの家で働き始めた小さな部屋は、この作品でも重要な働きをする。むしろこの小さな空間こそが本書の主役であると言っても過言ではない。

 各章毎に舞台が反転し、世界が入れ替わるような感覚がもたらされるこの物語は、読者のバランスをさえ脅かしてくる。怖いが面白い。ページターナーぶりがただものではない本書が、各ミステリー雑誌で昨2025年の年間上位ランクとなり、続く二作が異常なスピードで翌2026年に翻訳出版されている現在の状況を見ればそれは何ら不思議なことではない、という気がする、あまりに印象的な一作であった。

(2026.7.24)
最終更新:2026年07月24日 22:29