ライルズ山荘の殺人
題名:ライルズ山荘の殺人
原題:When There Ware 9 (2021)
著者:
C・A・ラーマー C.A.Larmer
訳者:高橋恭美子
発行:創元推理文庫 2024.11.08 初版
価格:¥1,400
オーストラリア製コージー・ミステリのシリーズは、四作目の本書でその後の出版は止まっている。最近、翻訳者の高橋恭美子さん(札幌在住!)ともお会いしていないので、続編情報は入っていないけれど、彼女は彼女で他のシリーズの翻訳等ご多忙そう。それはそれで良いことだ!
さて、毎作アガサ・クリスティの作品をテーマにした読書会を開催する中で勃発する殺人事件という、けっこう難度の高いシチュエーションの中、しっかりしたミステリを構築してくれている著者であるが、本書はまたもミステリ度の高いひねりの利いた作品に仕上がっており、完成度も高いように思う。
半数ほどが新メンバーになっている上、読書会とは別の個性的なキャラクターも怪しげに登場する中で、読書会のメンバーではなく、舞台となるライルズ山荘の支配人と料理人が何者かに殺害される。同時にメンバーの一人が車を駆って町に下りたきり、行方知れずとなる。事件は早い時点で起こり、そこから謎はさらに深みを増してゆく。
いつもながら語り口が巧い作家なので、物語性も十分、キャラクターの個性もそれぞれに描き分けられていて安心感の得られる読書時間と言えるうえ、ひねりの利いたシナリオが用意され、不審そうに見える人物も登場するなど、謎が幾重にも重なってなかなかの迷宮ぶりを見せる。
オーストラリアには2000m級の山しかないのだが、本書は、山荘を舞台にしたミステリ。ということで、最大の特徴は孤立感であろう。増してや中腹で起きた山火事が徐々に迫っていたり、それゆえに帰路を絶たれているいやなムードに包まれていたりと、これまでの作品以上に状況がスリリングアでミステリアスなストーリーとなっている。
新メンバーも増えるなか、互いの疑わしさに震撼しながらのフーダニット・ミステリに仕上がっている。原作者のストーリーテリングも良いし、安定の翻訳もいつも通り。今回のアガサ・クリスティへのオマージュとなる原本は『そして誰もいなくなった』。怪しい人物満載の中、意外な
真犯人の魔の手が伸びる。ミステリ色がこれまで以上に強く、仕掛けもたっぷりの玩具箱のような密室ミステリとして、本書をお楽しみ頂きたい。
(2026.8.24)
最終更新:2026年08月24日 09:38