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瞬きすら許さない




題名:瞬きすら許さない
原題:In The Blink Of Eye (2023)
著者:ジョー・キャラハン Jo Callaghan
訳者:吉野弘人
発行:創元推理文庫 2026.03.13 初版 206.5.29 3版
価格:¥1,300


 これは、『このミス』海外部門1位になるような作品ではないだろうか? アイディアもストーリー・テリングも、そう思わる高品質な作品と思う。

 AI捜査官と実験的に組んで捜査活動に臨むことになった女性警視正、というアイディア勝ちにも思われるが、予想するような奇抜なものではなく、現代てあればこんなアイディア・グッズとしての捜査用AIがあってもおかしくない。そんな時代にしっかりフィットしたストーリーだから、奇を狙ったゲテモノではなく、とこまでも読者に寄り添ったリアルなストーリーなので、ご安心頂きたい。

 このAI捜査官というアイディアであれ、地に足の着いた作品としか読めないのは、今という時代のせいなのだろう。

 作者も主人公捜査官も女性。舞台は英国ウォーリックシャー。女性捜査官キャット・フランクは夫を亡くし年頃の息子を抱えた生活感たっぷりのヒロイン。周囲には、同様に夫に先立たれたひとり親世帯で息子たちの失踪事件が数件発生しているという不穏さの中、他人事ではない事件に挑むが、捜査は困難を極める。

 実験的に起用されたAI(人工知能捜査体)、通称ロックは手首に装着される小型のものだが、ホログラムで一応成人男性のような形に投影できる。(TVシリーズで映像化されたらどうなるのかを、ぼくは想定してみたりした。)

 今という時代だからこそ、リアリティがないと否定できないこの設定が、現代の殺人事件にどのようにフィットするのか? ご心配なく! この作家はふわふわした幻想ではなくしっかりした人間たちのドラマをリアルに構築して、ストーリーテリングも、思いの外、SF感がなく、リアルで親近感が強い。

 主人公の女性刑事キャットが、ひとり親家庭の息子たちの連続失踪事件に挑む挙句、愛息子までが行方知れずとなる難事件に挑む彼女とAI捜査官ロック。前代未聞の捜査官コンビは、刑事小説でもありながら、家族小説としても成り立っていて、結構奥行きのある力作になっている。

 続編、続々編も本国では出版済み。早くも翻訳が待たれる堂々のシリーズである。

(2026.9.01)
最終更新:2026年09月02日 07:10