死体はどうなる
題名:死体はどうなる
原題:What About The Bodies (2025)
著者:ケン・ジャヴォロウスキー Ken Jaworowski
訳者:白須清美
発行:集英社文庫 2026.8.25 初版
価格:¥1,250
ペンシンルバニア州中部のロックスバーグという小さな町を舞台にした三人の主人公を描く物語。シングルマザーのカーラ。スーパーで働く青年リード。歌手を志望する高校の受付係リズ。彼らの三つの物語が同時進行してゆくという珍しい構成のミステリーである。
三人が三人とも違った事情を持ち、それぞれの異なる理由により、ほぼ同時制で殺人を犯してしまうという、確率的にはあまりあり得ない物語であるだけに、ぼくの場合、この実験小説的新機軸の作品を逆に楽しんでしまおうという読書時間となった。
三人のそれぞれの物語は短く、とても頻繁に切り替わってゆき、最初はあまり繋がりを持たないが、一つの町を舞台にしているだけあって、後半部まで読んでゆくと、互いが互いの殺人を知らぬままの接触もあり、そんなスリリングなシーンを読者は冷やりとしながら読むことができる。
そんな多重構造おもちゃ箱的な作品なのかな、とぼくは思いつつ本書を読んだ。最初はそうした全体を把握するのと、三人を取り巻く町とそこに生きる警察官、医師、そのたもろもろの職業の人々の思いのほか忙しい登場と退場する忙しさに少し戸惑いを覚えるのだが、読み進むにつれ小さな町ならではの混沌のようなものが見えてくるので、そこも楽しいかと思う。
意図的な悪意を持つ者と、偶然性の強い殺意を抱かざるを得ない者など、三者三様異なりつつも結局殺人へ辿り着いてしまったそれぞれの経緯。いずれ別々の理由で命を落とすことになった死体たちのそれぞれの結末、といったところに舞台劇的なサスペンスも含めて、新機軸のミステリーなのだな、と思える作品。
著者のケン・ジャヴォロウスキーは、本作の前にも『罪に願いを』という作品を書いているそうである。「ペンシルヴェニアの寂れた町で交差する三つの罪」(本書の帯より)なのだそうで、これまた読みたくなる。画面転換の速さと、キャラクターたちの個性的な動きを本作で味わってしまったがために、余計にぼくはそう思う。
(2026.9.28)
最終更新:2026年09月28日 16:30