魔術師
題名:魔術師
原題:The Vanished Man (2003)
作者:
ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver
訳者:池田真紀子
発行:文藝春秋 2004.10.15 初版
価格:\2,095
今ごろになって読むのは、ここまで読む気がしなかったからだ。何故かというと、サービス満点で疾走してきたこのシリーズ、そろそろ自爆しても不思議じゃないという、嫌な予感がしていたからだ。それにこのタイトル。それに11/1締切の『このミス』アンケートで10/15発売後たった二週間の間に得票を集め、どちらかと言えば本格ミステリ系の回答者が多いこのアンケートで2位に輝いたりしていた事実。いろいろな意味で、不安要素たっぷり。嫌だなあ。読みたくないなあ。なのに買ってしまう自分はいったい……。
そんな心配を吹っ切って、ついに手に取った本書、予感はまさに的中しているではないか。ディーヴァーはサービス精神という最悪の檻に捉えられてしまい、そこから出られなくなっているとしか、ぼくには見えないのだった。読んでいる間中、何一つ面白く感じられなかったこのシリーズは初めてだ。
一作目、二作目は何とか珍しさで走った。三作目は場所を変え、四作目は東洋精神を持ち込んで、凌いだ。四作目は、ついにやっちまった。ディーヴァーシリーズは人間ではなくトリックを描くようになってしまったのだ。本格という二文字が浮かび上がり、せっかく『
石の猿』で見せてくれた冒険小説への流れを自ら断ち切ってしまったのだ。
トリックや騙し合いが本書の道具であっても主題になってはいけないと思っていた。もっとサックスやライムの次なる人生への展開が込められてなければならないと思っていた。捜査チームの面々に個性や顔がなさ過ぎると思っていた。誰が入れ替わってもわからないチームに比して、介護士トムの存在感は何なのだろうと常々思っていた。
いろいろな意味で、この本を読まねばよかった。リンカーン・ライムのシリーズで失望を味わう日が来ることは予感されていただけに恐れていたことでもあった。これでは、まるでコミックの世界だ。
(2005.03.27)
最終更新:2007年05月13日 12:52