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ハートの刺青



題名:ハートの刺青
原題:The Con Man (1957)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:高橋泰邦
発行:ハヤカワ文庫HM 1976.7.15 1刷

 <87分署>シリーズ第4作。このシリーズは今までのところどれも一定の水準に達しているばかりか、はっきりいって安心してその面白さを堪能できる。そうした確信を持つに至ってしまったのだ、ぼくは。しかしとりわけこの第4作は、面白かった。

 主題は詐欺である。この本は、大小の詐欺について語られた一冊である。このなかには、わずか5セントを掠め盗る詐欺から、殺人をも容赦なく絡めた詐欺まで、さまざまな犯罪が盛り込まれている。そして、これらが平行に進行してゆき、複数の事件が複数の捜査員の手によって解決してゆく。

 最も凶悪な殺人犯と対決することになるのが、スティーブ・キャレラの聾唖の妻テディという皮肉な結末。ラストは『警官嫌い』とほぼ同じように締めくくられてゆくのだが、ここへの経過が実にいい。第一級の面白さ。手に汗握るこの種の描写がぼくは好きだ。クライム・ノベルなどの原点は、こんなところにあったのかと思う。

 1957年。ぼくが一歳になったときに刊行された作品である。今年発表された作品だといわれれば、きっと誰もがそれを疑わないことだろう。

(1990.03.31)
最終更新:2007年05月27日 12:23