さもなくば 友を





題名:さもなくば 友を
作者:藤田宜永
発行:集英社 1994.9.30 初版
価格:\1,500(本体\1,456)

 ロマン・ノワールである。ひところしきりにフランスから輸入されていたフィルム・ノワールを懐かしむ世代には、なかなか懐かしい味わいだ。暗黒街にしか生きられないギャングたちの友情と誇りと死とが、パリの闇に蠢く一冊。

 こういう作品を書くことのできる藤田宜永という作家を、ぼくはこれまで読んでこなかった。当のご本人とは、確か冒険小説協会の熱海総会にて、お話を交わす機会を得ていたのだが、こちらは全くの未読作家であり、あちらはかなりアルコールの方をきこしめしていた。作品との出会いこそがやはり作家との出会いなのだと、つくづく思う。

 本書は本当に60年代フランス映画を偲ばせる。ベトナム戦争を背景にして、心身に傷を負った者たちが、裏切りと野望の中で綱渡り的な生を営んでいる。もうそれだけでハードな話なんだが、友情の篤さに泣ける。こんなふうに最後までクールに進んでゆく物語が、どうにもやり切れない話なのである。

(1995.01.11)
最終更新:2007年06月03日 22:17