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真夜中の予言者


題名:真夜中の予言者
原題:Random Walk (1989)
作者:Lawrence Block
訳者:田口俊樹
発行:二見書房 1998.2.25 初版
価格:\2,100

 ブロックの小説ならたいていのものはたいていの人にお勧めなんだけど、これはあまりお勧めとは言えない。マット・スカダーものがいいので、と言って手に取るとまずその傾向の違いというギャップにがっくり来ると思う。

 まずはハードボイルドとは縁遠い。それどころか、SFファンタジィの世界といっていいかもしれない。帯に「大人の童話」とある。あるいは「寓話」なのかもしれない。とにかくそういう風にあり得ない話であり、奇跡の話だ。宗教がかっているようにも見えるし、説教じみた会話に彩られてもいる。

 ブロックがとっても力を抜いてリラックスして書いた、どちらかといえば軽めの作品だと言ってもいいと思う。

 この本には、普通のミステリーでは考えられないほどのおぞましい殺人者が出てくる。殺しのシーンも両手で足りないほど盛りだくさんで、残酷極まりない。もう一方のカルトめいた奇跡集団とこの殺人者の物語の軸が、どこで重なるのか。重なったその瞬間は、巧い、やはりブロックは巧いわ、と思った。

 ブロックの筆使いの巧さ、ストーリーテリングの妙。そんなものだけが、この荒唐無稽でまとまりようのない物語をまとめる。確かにハートウォーミング。夢いっぱいの童話。確かにこの作者らしいブラックな殺しの場面もいっぱい。

 まあ、一言で言えば、そうした甘くてカラフルな……お菓子みたいな本なのである。

(1998/02/25)
最終更新:2007年06月28日 22:20