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獲物



題名:獲物
原題:Voodoo, LTD. (1992)
作者:Ross Thomas
訳者:菊池よしみ
発行:早川書房 1995.8.31 初版
価格:\1,800

 二冊続けて読むだけで贅沢さを感じさせてくれる登場人物たちのこのシリーズ。『大博奕』から三作続けて読めるような人は、本当に最高の読書的幸福感に浸れるのだろうなあと思うことしきりである。

 前作を引き継いだ部分のあるストーリーで物語は始まる。世界のあちこちにいる五人がウェストコーストに結集するまでの話にはにやりと笑いたくなるような懐かしさがいっぱい。ウーとデュラントの怪しげなウーデュー有限会社に「ブードゥー有限会社はここですか?」と訪ねてくる依頼人。こんなものを原題に使ってしまうロス・トーマスのおかしさが、まず、ぼくのようなファンにはたまらんのである。

 内容は、前作のマルコス亡命後関連の大スケール冒険話とはうってかわって、ハリウッドの催眠術師兄妹の失踪を追う話。金額も五百万ドルから較べるとずいぶんスケールダウンするので、この五人の活躍の場としては少々物足りない感じ、あるいは次の作品への繋ぎみたいな感じもしないではない。

 前作では練りに練られたプロットの醍醐味も、ここでは意外性に乏しく、それなりに小じんまりとした展開で、キャラクターに興味なんかないよという人には、退屈な話なのかもしれない。でもロス・トーマスの旨味である暗喩に富んだ会話の妙、キャラクターたちのとぼけ具合い、裏切りへの不安とか、緊迫した懐疑や恋・・・・いろいろな意味で大人にしか書けず大人にしか読み取ることのできない味のある作品であることは、いつものロス・トーマス通り。

 『五百万ドルの迷宮』の同窓会、または彼らの近況報告といった感じで気楽に読んで楽しんでいただきたい一冊である。

(1995.09.27)
最終更新:2007年07月13日 01:47