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使い魔は手に入れたい-9 - (2007/07/26 (木) 13:09:53) のソース
ルイズの話しによれば今日は学院全員の生徒は部屋にいなくてはいけないらしかった。 理由は聞かされていないそうだ。 こんなことは初めてだとルイズは言っていた。心当たりも無いらしい。私にはあるがな。 というかここで働く平民なら大抵知っているだろう。失踪した教師と生徒、現場と思われるところにあった大量の血溜まり。 だれがどう考えても事件じゃないなんて言える奴はいないだろう。 そして何らかの事件を考慮して生徒たちが巻き込まれないように隔離しとくのは当然かもしれないな。 この学院にいる生徒はみんな貴族だ。何かあってからじゃ遅いからな。 でもやっぱり平民は普通に仕事してるんだよな。平民だからどうなっても良いんだろう。 平民なんて一人二人いなくなったって補充できるからな。 何処からか鐘の音がなる。なんだ? 「昼ごはんの合図よ」 それが顔に出ていたのだろう。ルイズが教えてくれる。 「こんなの今まで鳴ったことあったか?」 「無いわよ。今回はみんなが部屋に篭ってるから知らせるために鳴らしてるの」 「ふ~ん」 「納得してないで行くわよ」 ルイズがドアを開けながらこっちに言ってくる。 それに従い私たちは食堂へ向かった。 アルヴィーズの食堂。朝食、昼食、夕食と、学院にいる教師、生徒全てが食事を取るところだ。 アルヴィーズというのは小人の名前で、壁際には精巧なアルヴィーズの彫像が並んでいる。夜中に踊るらしい(怪談だな)。 いつも私はここでルイズの椅子を引き、床に座らされ、ルイズが出す餌を食べるのだ。もっともその後厨房でちゃんとした食事をとるが。 そして食堂に着いた私は何時も通りルイズの椅子を引く。 そして何時も通り床に座る。素早く、そして自分から座っておけば文句を言われることはない。 椅子に座ったルイズからいつもなら餌が渡される。そう、いつもならだ。 しかしその日は何時まで待っても餌は渡されなかった。さすがに1日食事を抜いたぐらいで死にはしないが腹は減る。 餌でもないよりはマシだ。腹の足しになるからな。 だというのに渡されない。さすがに焦れる。 そして催促しようとしたとき、 「今日からあんた、テーブルで食べなさい」 ルイズがそう言ってきた。 は? 初めは意味がわからなかったがわかると同時にルイズのほうを向く。 ルイズは頬を赤くしてそっぽを向いている。 何だこいつ?熱でもあるのか? 「急にどうしたんだ?どこか調子でも悪いのか?」 しかしここに来るまでにそんな様子はなかった。 もしかしたらさっき聞こえたのは幻聴だったのかもしれない。 だってあのルイズがテーブルで食べろだなんて…… 「べ、別に調子は悪くないわよ。いいから。ほら、座って。早く」 マジで誰だよこいつ。ルイズじゃないのは間違いない。 いや、ルイズなんだろうが、行動があまりにもルイズらしくない。床でありがたく思えとか言ってた奴が椅子に座って食事しろだなんて言うはずが無い。 が、椅子に座ってもいいならありがたく座らしてもらおう。 そう思い椅子に座る。でもやっぱりなんとなく怪しいのでルイズとは距離を取れるだけ取れるだけとる。そんなに離れられないがな。 やっぱり怪しいものは怪しい。 それで、だ。 「私の食事は何処だ?」 椅子に座ったが見当たらない。 「何言ってるの。目の前にあるじゃない」 「は?」 こいつはマジで何言ってんだ? 「もしかして、これらか?」 「だからそう言ってるじゃない」 目の前にあるのは貴族の食事だった。ルイズは椅子に座り貴族と一緒の食事をとれと言っているのだ。 今度こそルイズを見たまま固まってしまった。 誰じゃ!? 今の心境はまさにこんな感じだな。 ルイズじゃない。確実にルイズじゃない。ルイズの形をした何かだ。 自分が知っている人物が突然予想外の言動を取り出したとき一番初めに感じる感情は疑惑だと私は思っている。 そしてその言動が理解できればそれは納得できる。 しかしできなければ次に感じる感情は恐怖だ。得体の知れない未知に対する恐怖。 今私はほんの少し、ほんの少しだけだが恐怖を感じていた。 こんなときはデルフの軽口が無性に聞きたいぞクソッ! こんなことならさっさと投げたデルフを回収しとくんだった!明日まで放っておくつもりだったが食い終わったら回収しとこう! どうして俺はあんなことだけでデルフを投げちまったんだよクソッ!あ~イライラする! 「おい、ルイズ。そこは僕の席だぞ。使い魔を座らせるなんて、どういうことだ」 突然身に覚えが無い声が聞こえ現実に引き戻される。 声のした方向を見るとそこには少しぽっちゃりした少年がいた。 見たことあるな。たしか、マリコルヌとかいう奴だ。 「座るところがないなら、椅子を持ってくればいいじゃないの」 ルイズはマリコルヌに向かって言い放つ。 いや、普通平民で、しかも使い魔がここに座ること自体がおかしいんだからマリコルヌの言ってることは正論じゃないか? 「ふざけるな!平民の使い魔に座らせて、僕が椅子をとりに行く?そんな法はないぞ!おい使い魔、どけ!そこは僕の席だ。そして、ここは貴族の食卓だ!」 マリコルヌが胸をそらし俺に向かって言い放つ。 確かに言ってることは正論だ。いつもの俺なら従うさ。でもな。 立ち上がりマリコルヌの頭を掴む。 俺は今苛立ってるんだよ。 「マリコルヌだったよな。今からいう場所に走って行ってこい。剣があるはずだから取って来るんだ」 「な、なんで僕がそんなことを……イタタタタタタ!」 『手』を発現させ頭を締め上げる。 「行ってくるよな?」 「い、行かせて貰います!だからやめてー!」 それを聞き手を話す。そしてデルフがある場所を喋る。 「早く行って来い。そうすれば少しはやせるぞ」 そういって背中を蹴ると、泣きそうな顔になりながら走っていった。 ふむ、少し落ち着いたな。 しかしこれって完璧な八つ当たりだな。……まあいいや。八つ当たりなんてギーシュにしたことあるしな。 あのときに比べれば安いものだろう。 そう思いながら私は再び席に着いた。 ----