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ゼロの来訪者-21 - (2007/08/16 (木) 03:03:00) のソース
「駄目かな?」 「そりゃ駄目って事は無いけど…」 昨夜タバサに母の治療を頼まれた育郎は、朝の食堂で、食事をとろうとするルイズに、タバサと供に、昨夜の事を話していた。 といっても、タバサが呼び出して襲い掛かった?辺りの話は伏せてだが。 「でも、あんたに治せるかどうかはわからないんでしょ? えっと、タバサだっけ、貴方はそれでも良いの?腕の良いメイジに見せた方が」 「かまわない」 タバサが何時もと変わらない無表情で即答する。 「それなら良いんだけど………そっか…ひょっとして…」 しばらくブツブツとつぶやいたルイズが、一度育郎を見、そしてタバサの方に向き直る。 「ねえ…あなたの使い魔って風竜よね。家に帰る時は使い魔に乗ってくの?」 その質問に頷くタバサ。 「じゃあさ…帰りでいいから、私の家に寄ってくれない?」 「わかった」 「じゃあ家に連絡入れないといけないから、出かけるのは来週の虚無の曜日ぐらいに」 「あらタバサ。珍しいじゃない、ルイズと一緒だなんて…あ、そういう事…」 食堂に入ってきたキュルケが、ルイズ達と話しているタバサに気付く。 「キュルケ…何がそういう事なのよ」 「さーねー、にしても相変わらず空いてるわね、貴方達の周り」 先日育郎が生徒達を返り討ちにした事が伝わってから、食事の際、以前にもましてルイズ達の周りに人がいない状況になっていた。 寄って来るのは、何かとルイズにちょっかいをかけに来るキュルケと、何故かギーシュがモンモランシーと一緒に話しかけてくるぐらいである。 もっとも、モンモランシーはいまだに育郎を警戒しているようだが。 「それで、何を話してたのかしら?」 「えっと…今度の休みにこの子の家に行く事になって」 他人の家の事を話すのもどうかと思い、ルイズはそれだけを告げる。 「タバサの家?じゃあ私も行かせてもらうわ」 「な、なんでよ?」 「あらいいじゃない。タバサ、良いわよね?」 「…かまわない」 「ほらね。っとそれとタバサ、こっち!ちょっとこっち来て!」 「ちょ、ちょっとキュルケ、何処行くのよ!」 ルイズを無視し、キュルケがタバサの手を引いて、食堂の外に連れて行く。 「もう、なんなのよキュルケの奴…」 「友達が心配なんだよ、きっと」 「…そうかしら?」 ぶすっとするルイズを育郎がなだめている最中、キュルケは人目の無いところまでタバサを連れて行き、少し躊躇した後、真剣な目で話し始めた。 「あのねタバサ、あたし昨日貴方がイクローに手紙を渡しているところを見てたの…その、なんて言えばいいのかしのね?あたしね、彼が人間じゃないって知って びっくりしたって言うか…ほら、あたしの二つ名知ってるでしょ? そう『微熱』…でね、実は彼の事いいかなーって思ってたんだけど、 でも彼が亜人って分かって、さすがにどうかと思って諦めたのよ…」 そんな事を自分に話す意味がわからないが、とりあえず黙って聞いているタバサ。 「だからあたし、貴方の想いに気付いた時ショックだったのよ… 確かに貴方に恋をするように勧めたわ。でも貴族が亜人となんて…って」 少し間を開けた後、ガシッ!っとタバサの両肩をつかむ。 「でも一晩考えて気付いたの!私が間違ってたわ!そして感動したのよ! そう!種族の差なんて、愛の前に関係ないって貴方に教えられたの! あ、でも心配しないでね、あたしは貴方の事を応援するから」 「応援?」 何を応援するというのだろう? 「そう、だって親友の貴方が恋をしたんだもの!」 なるほどとタバサは思った。 キュルケは自分が育郎に渡した手紙を、恋文と思ったらしい。 「勘違い」 いつも通り、簡潔にその事を伝える。 「もう、照れなくてもいいのよ!家に帰るのも、親御さんに紹介しに行くんでしょ? 安心して、そりゃ反対されるでしょうけど、一緒に説得してあげるから! そうだわ!いざとなったら私の実家でかくまってあげる!」 しかしキュルケは分かってくれなかったようだ。とはいえ特に害があるとも思えず、さらに言えばめんどくさいので、タバサは一々訂正する事はしなかった。 自分の実家に一緒に来るのだ、その時に分かるだろう。 タバサがそんなことを考えているとは露知らず、キュルケは少し困ったように続ける。 「それでね、彼の全てを受け入れたくなるのは、すっごくよくわかるんだけど…… あのね………その………一度に2本までにしておくのよ?」 「何が?」 「オールド・オスマン、モット伯をお連れしました」 「うむ、入ってもらいなさい」 王宮勅使、モット伯を案内するミス・ロングビルは、顔にこそ出しはしないが、これ以上ないというほど不機嫌だった。 その原因は2つある。 一つは彼女が王家やそれに近しい貴族が、この世で何よりも嫌いだという事。 そしてもう一つは… 「では、王宮よりの命しかと伝えました」 「うむ、ご苦労」 受け取りの書類をオスマン氏から手渡されたモット伯が、部屋を出る前にミス・ロングビルに話しかける。 「相変わらず美しいですな、ミス・ロングビル。今度是非一緒に食事でも」 「まあ、お上手ですこと。お言葉は嬉しいですが、遠慮させていただきますわ」 モット伯のお世辞を抵当に受け流すロングビルは、彼の目が何を見ているか気付く。 その視線の先にはミス・ロングビルの胸があった。 おっぱいである。 その谷間を見る顔は、好色極まりなく。 そしてその視線はねっとりと執拗で、そして容赦がなかった。 視 姦 で あ る そのスケベ面に拳を叩き込みたくなるが、グッと堪える。 ていうか、いつまで見てるんだいこのドスケベ! かれこれ5分はたっぷり眺めているが、それでも全く止める気配がない。 何とかしてくれないかと、オールド・オスマンを見る。 「モット伯…それぐらいにしておきなさい」 期待はしていなかったが、なんと意外なことに、オスマン氏がモット伯を諌める。 「オールド・オスマン…」 「よく見ておきなさい」 よく見る? どういう事かと思っていると、オスマン氏がミス・ロングビルの方を向き、その視線を胸に向けた。 おっぱいにである。 その谷間を見る顔は、モット伯を上回る好色さだった。 そしてその視線はモット伯よりさらに執拗で、そして容赦がなかった。 しかし、そこにはモット伯には無いものも物も含まれていた。 それは愛であった。 おっぱいに対する愛が溢れていた。 その視線には、乳飲み子を見る母の愛にも似たものがあった。 い っ そ 惚 れ 惚 れ と す る よ う な 視 姦 で あ っ た 「おお、オールド・オスマン…」 モット伯が感極まった声をあげる。 「わかったかね?モット伯」 威厳に満ち溢れる声でそれに応えるオスマン氏。 「お見事!私のような若輩者では、まだ貴方の足元にも…」 「なに、君も後10年もすれば…」 「いやいや、私などまだまだ…」 「いやいや、君もなかなかの…」 「うおおおお!ギブギブ!ギブアップじゃ、ミス・ロングビル!」 あぁもう!ハラがたってしたがないね! モット伯が部屋を出た後、早速オスマン氏にキャメルクラッチをかけながら、ミス・ロングビルこと、盗賊土くれのフーケは考えた。 まったくあのスケベ親父、人の胸をじろじろと…そのうち盗みに入るつもりだったけど、いますぐホエヅラかかせてやろうかい!? 「し、しかしこれはこれで尻の感触が背中にぃぃぃぃぃぃぃ! ミス・ロングビル!それ以上力を入れてはいかん!折れてしまう!」 そういえばあのドスケベ、学院のメイドを一人買い入れてたねぇ… 人が足りないとかほざいてたそうだけど、どうせ夜の相手でもさせるつもりなんだろ そう考えると、さらに怒りがこみ上げてくるが、ふとあることに気付く。 そう言えばそのメイド、確かあの坊やと… 密かにほくそえむ。 うまくいけば、このうっぷんを晴らすだけでなく、回りくどい事をする必要も無くなるかもしれない。 「そろそろ許してくれんかミス・ロングビル!? それとも、もしやワシを真っ二つにしてラーメ」 「ふん!」 ゴキャ! 「うっ!」 オールド・オスマンを昏倒させたミス・ロングビルは、部屋を出て、学院の正門へと急いだ。そして、いままさに出発しようとするモット伯になんとか追いつく。 「おや?どうかしましたか、ミス・ロングビル」 息を切らすミス・ロングビルの、上下する胸を凝視しながらモット伯が尋ねる。 「いえ…その、モット伯。先程の食事の件、やはりお受けする事にしますわ」 笑みを浮かべてそう告げる。 「おお!それは本当ですか?」 「ええ、よろしければ今夜にでも」 「喜んで!」 そのやり取りの最中も、胸からは視線をそらさないモット伯であった。 #right{[[To be continued……>ゼロの来訪者-22]]} ---- #center(){[[20<>ゼロの来訪者-20]] [[戻る>ゼロの来訪者]]} //バオー,橋沢育郎