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第一話(16) 崩壊への序曲 - (2007/09/04 (火) 03:05:21) のソース

宮中から戻ってきたルイズ一行。学院に戻ってすぐに、ルイズはオスマンに呼ばれて学院長室に向かった。 
オスマンから始祖の祈祷書を渡され、その旨をルイズは聞かされる。 
その際ルイズは、先程会話の途中に豹変したアンリエッタのことを思い出し、複雑な心境だった。 

ゼロの奇妙な使い魔~[[フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ]]~ 
    [第三部 未来への祈祷書] 第一話(16) 崩壊への序曲 その① 


「僕のルイズー!クックベリーパイを持ってきたよー!」 
学院長室から戻ってきたルイズを待ち受けていたのは、クックベリーパイを持ったマリコルヌだった。 
「な、何よマリコルヌ。そんなもの持ってきて。」 
暗くぼんやりとしたルイズが言う。 
「きっと落ち込んでいるだろうと思って差し入れを持ってきたんだ。」 
アンリエッタ云々の件はマリコルヌは知らない。 
しかし信頼していたワルドに裏切られ、目の前でウェールズが肉塊になった。 
マリコルヌはそれを考え、ルイズはきっと落ち込んでいるだろうと踏んだのだ。 
「そ、そんなことされなくたって落ち込んでないわよ!ででで、でもね、折角持ってきてくれたんだから、たたた、食べないのは悪いわよね。 
とっととと、特別に私といっしょに食べることを許可してあげるわ。ヴェストリの広場に行きましょう。」 
「よ、よろこんで、僕のルイズ!」 
ルイズはマリコルヌの行動に瞳を潤ませて感謝していたが、そんな顔を見られたくないので先頭をきって歩く。 
ヴェストリの広場に到着した二人は、その場に腰掛けてクックベリーパイの皿をを地面に置く。 
マリコルヌのマヌケな話を笑いながら食事をしている二人。 
その様子を一人の人物が偶然目撃する。タバサだ。 
(ルイズ…キュルケが死んだのに、仲の良い友人が殺されたっていうのに…貴女はどうしてそんなに笑っていられるの…。) 
キュルケの死が未だに頭から離れないタバサ。 
キュルケの代わりにルイズを心配しようと考えていたその気持ちは、笑っているルイズへの憎しみへとかわっていった。 
タバサはそのまま自室に戻り、キュルケのことを思い出し、眠った。


 第一話(16) 崩壊への序曲 その② 

「う~ん。まったくもって思いつかないわ。」 
始祖の祈祷書と睨めっこをしながら、再び復活したFF下っ端に話しかけている。 
その横にある窓からは、シルフィードに乗って出かけていくタバサが見える。 
ただしルイズはそのことには気が付いていないのだが。 
日はあけ、ワルド戦からは二日も経っている。 
つまりタバサがプッチ神父と接触してから三日後だ。プッチとの約束の日である。 
タバサは待ち合わせの魅惑の妖精亭に向かう。十二時という約束であったが、タバサはいても経ってもいられず、明け方に出発した。 
勿論時間に余裕がありすぎるくらい早くついたので、そのあたりを散歩してから、約束の三十分前に店に入った。 
するとそこにはあの男、プッチが既に座っていた。 
タバサは警戒気味で椅子をひき、座った。 
「これが解毒剤だ。」 
タバサが座るとすぐに、プッチは液体の入ったビンを目の前に差し出す。 
タバサは少し疑り深い目をしながら受け取った。 
どうしてこのような物を持っているのか気になったが、それは口に出さない。 
「それを飲ませれば君の母親はすぐに良くなるだろう。」 
タバサは無言で頷く。 
「次は父親の仇だ。実行するときは私を同伴しろ。そうすればいつでも討てる。」 
「じゃあ今すぐ。それで条件は?」 
タバサはことを急ぐ。何が何でも仇は早く打ちたかった。 
「前に言ったと通り、天国に到達するための手伝いをしてほしい。そのためにまずは君に王位を継承してもらいたい。」 
その後、話は纏まり、二人は魅惑の妖精亭を後にして、シルフィードでガリアに向かった。


 第一話(16) 崩壊への序曲 その③

「以上のことからマザリーニ枢機卿を幽閉します。賛同者は起立して下さい。」 
ここは王宮の一室。アンリエッタ、マザリーニ、その他多くの貴族が今後のことで話し合っていた。 
そしていきなりマザリーニの話になる。そこでマザリーニは全く身に覚えのない行為についての訴えを受けた。 
横領しているだの、権力を好き勝手に使っているだの、貴重品の盗難の主犯だの言いたい放題だった。 
そして話が続き、文頭の一文に繋がる。マザリーニ以外の貴族がみな、立ち上がる。 
マザリーニは絶望したかのように力が抜けた。一体何が起こっているのかと。 
アンリエッタの命で、扉を開け、兵が入ってきてマザリーニを連行する。 
「さぁ、会議を続けましょう。」 
アンリエッタの一声で、規律した貴族たちが座る。 
彼らはリッシュモンとその息のかかった連中である。 
「王党派のふりをしてトリステイン領を攻撃。その名目でアルビオンの内紛に参入。 
そしてレコン・キスタと共同戦線。王党派と邪魔になりそうな者を相打ちさせる。わかりましたね。」 
アンリエッタが話を進める。 
「攻撃対象はタルブの村が候補地としてあがりましたぞ。」 
「ご苦労様です、リッシュモン高等法院長。では軍役免除税を払った者はどうやって排除するのがいいと思いますか?」 
「何か適当な罪をかぶせて幽閉するのが良いでしょう。戦争が楽しみですな、姫殿下。」 
「ええそうね、とても楽しみだわ。ウフフフフフ。」 
このあと、太后マリアンヌやアニエス・ミランなどが幽閉されていった。


 第一話(16) 崩壊への序曲 その④

プッチとの約束のあった翌日、本日はシュヴルーズの授業である。 
ガリアに向かったタバサは当然帰ってきていないので、無断欠席だ。 
「タバサは一体どうしたのかしら?」 
「そうだね、どうしたんだろう。」 
ルイズはマリコルヌに話しかけていた。 
同じ目的を持って旅をしたのだ。当然仲は良くなる。 
それを見たシュヴルーズは、とてもルンルンで微笑んでいた。 
そしてマリコルヌにいいところを見せる場面を用意してやろうとして、言った。 
「ではミスタ・グランドプレ。みんなの大好きな錬金ですよ。やってみてください。」 
それを聞いてルイズは思い出した。マリコルヌは現在魔法が使えないのだ。 
マリコルヌがあまりにも明るかったので失念していた。ルイズはそう思った。 
そして、前に出て魔法を使おうとしないで、と祈った。 
だがマリコルヌは前に出て行く。そして錬金を唱えるが何もおきない。 
周りは大爆笑だ。ルイズは、自分を庇ってその能力を失ったマリコルヌが笑われているのを見て、泣いて呟いた。 
「ごめん、ごめんねマリコルヌ。私のせいで…。」 
そんなルイズの声も聞こえないくらい野次が騒がしい。そしてある生徒がこんなことを言った。 
「最近ゼロのルイズと仲が良いからなぁ。ゼロが移ったんじゃあねぇのか。ゼロのマリコルヌ!」 
周りは更に爆笑する。しかし、そこで先程までシュヴルーズに心配そうに話しかけられたマリコルヌが、生徒のほうを向き声を荒げる。 
「ルイズを侮辱するな!僕だったらいくらでもコケにしたまえ。だがルイズを馬鹿にするのは許さない!謝れ!」 
そして静寂が訪れる。ここで何とかシュヴルーズが取り直し、授業は無事に再開した。


 第一話(16) 崩壊への序曲 その⑤

授業の後、二人は食堂にいた。 
「ごめんねマリコルヌ。私のせいであんなことになったのに、私を庇ってくれて…。」 
「泣かないでよ、僕のルイズ。当然のことをしたまでなんだから。それに最近泣いてばっかりだよ。笑っておくれ、僕のルイズ。」 
この言葉にルイズは涙をぬぐう。そしてその後の第一声はというと… 
「な、泣いてなんかいないんだから!そそそ、それに庇ってなんて一言も言ってないわ!私はあんなのまったく気にしてないんだからね!」 
それをシエスタが微笑ましそうに見て呟く。 
「いいなぁ、恋人がいて。それにしてもミス・ヴァリエールはどうして連れてこないんだろう。 
フー・ファイターズさんとお話がしたかったのに。」 
フー・ファイターズが食事を摂取しないということはすっかり忘れてしまっている。 
しかし、直後に耳にしたことで、シエスタの周りは時が止まってしまう。 
「おい、聞いたか、タルブの村の話。」 
「ん、何かあったのかい?聞いたこともない村の名前だけど。」 
「何言ってんだよお前、今は結構有名だぞ。」 
「だから一体何なんだよ。」 
シエスタはここまでの会話の流れで、龍の羽衣の噂でも広まったのかなぁ、なんて微笑んでいた。 
だがそれは違ったのだ。 
「昨晩なにやらアルビオンの王党派が、食料を手に入れるために襲ったんだとよ。」 
「げぇ、本当かよ。いくら貴族派に追い詰められているからって、そんなことして貴族の誇りはねぇのかよ。こりゃあトリステインも敵に回したね。」 
「そうなんだよ。村人も皆殺しにされたらしくて、姫殿下も途轍もなくお怒り、すぐさま討伐軍を編成したらしいぜ。」 
「こりゃあ大変なことになったな。まさか貴族派の肩をもつなんて予想外の展開だね。」 
シエスタは、持っている皿を床に落とし、その場に座り込んで泣いてしまった。 
食事中の生徒たちは、何事かと一斉にシエスタを見たが、他のメイドたちがシエスタを奥の部屋に連れて行き、割れた皿を片し、生徒たちに謝ったので、何事もなかったかのように場は収まった。 


to be continued…
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