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ゼロのパーティ-22 - (2007/11/01 (木) 03:15:48) のソース

部屋で魔法を放つわけにもいかず、僕や才人、ルイズ達は再び、素振りをおこなっていた中庭まで戻ってきた。 

「ほんとにお前等、決闘なんかするのかよ」 
「そうよ」 

才人が呆れたような声で、二人の意志を確認する。 
その言葉に、ルイズが息を荒げて答えた。既に臨戦態勢のようだ。 
この興奮しているルイズを止めるのは、僕には不可能だな。 
なら、キュルケはどうだろうか? 
どうにか落としどころはないかと、僕は少しばかりの望みを掛けて、キュルケの方を見る。 
得意げに鼻をならして、ルイズの方を見ていた。こっちも臨戦体勢の様だ。 
こちらの方も、僕に止めることは不可能だ。 
まあ、彼女たちが何を始めようと、僕や才人に火の粉が降りかからなければ、別に止めようとも思わないのだが。 
結局こういう名誉や意地は、いつか自分の手で決着をつけなくちゃあならないものだしな。 
キッカケこそ才人だが、僕がキュルケに誘惑された日の説教、及び先程の話の流れからして、起こるべくして起こったことだ。僕らの知ったことじゃあない。 
僕は才人の方に手で、クイッとそこから離れ、こっちに来るように指示を出す。 
才人は一応、その指示に従って僕の方へとついてくる。が、その表情は何故そんなことをするのか解らない、というのが顔に出ている。 

「何だよ、止めねぇのかよ」 
「僕たちが口を挟むことじゃあない。当人達が決着をつけなきゃならないことだ」 

才人と僕はぴりぴりした空気を放つ二人から、大体十m程度距離を取り、事の成り行きを見守る事にした。 
しかしここに来てにらみ合いはすれども、ルイズもキュルケも中々杖を抜かない。 
流石に僕らとギーシュがやったような決闘をするつもりは無いか。 

「危ないと思わないのかよ。なぁ、花京院。やっぱり止めた方が…」 
「必要ない」 

っと、先程からずっと黙っていたタバサがキュルケに近づいて、何かを呟き出した。あいにくと、その内容は此方にまでは届いてこない。 
キュルケは身体を屈め、そのタバサの呟きをフンフンと頷きながら聞いている。 
どうせロクな事ではないだろうが、聞こえない話を何時までも観察してもしょうがない。 
僕はキュルケ達から視線を外し、辺りに彷徨わせた。 

「……ン?」 
「どうした?」 

ふと視界に、茂みが揺すられるのが入った。 

風だろうと思うが、それにしては一部分だけしか揺れないというのは変だな。 
誰かの使い魔か、この様子をつけている人間が居るのか。 
しかし、そのいずれの理由にしても、葉のすれる音が全くしなかったというのはどういう事だ? 
現にそちらを見ていなかった才人は、あれほど揺れたのに気づきもしていない。 
僕はその、揺れた辺りがどうにも気になり、ハイエロファントの聴覚で、虫の足音一つ聞き逃さぬよう、注意を払って様子を見た。 

「……」 
「花京院、どうしたんだよ?」 
「…才人、少し静かにしてくれ」 
「?」 

暫く、じっとそこに神経を集中する。 
後ろから、なにやら大きな声で相槌を打つキュルケや、ルイズの声すら聞こえないほどに。 

「ッ!」 

再び、茂みが揺れた。先程とは違い、今度は風によって揺らされたようだ。 
しかし不自然なことに、またもや葉のすれる音がしなかった。 
それどころか、あの辺りに風が通った時、唐突に風の音まで途絶えたのだ。まるでそこだけ何かで切り取ったかのように。 
音が消える。そういう魔法があっても可笑しくは無いな。 
その魔法をこんな人通りの少ない屋外で使うとなると、最初にたどり着く結論は侵入者だろう。 
少し、確認を取ってみるか。 
僕はその茂みに近づきながら、集中を高め、ハイエロファントの掌へ破壊のエネルギーを集約し… 

「あの、ご主人サマ? その手に持っている縄で、何をするつもりデスカ?」 
「縛る以外に何があるっていうのよ」 

ようとした所で、才人の気の抜けた声で気を散らされた。 
いつもであれば、すぐさま才人に文句を言っている所だが、縄なんてものが出てくる、その会話の内容が気になった僕は、茂みの方をハイエロファントに任せ、後ろを振り向くことにした。 

振り向いた先には、サディスティックな笑みを浮かべ、手に持った縄をピンと引っ張るルイズ、それを楽しそうな表情で見つめるキュルケ、 
全く反応の見られないタバサ、そしてそのタバサの傍らに、デルフリンガーとキュルケの持ってきた小綺麗な剣を加えた、見覚えのある青い竜。 
……あの竜はやっぱり、タバサの使い魔だったのか。 
と、そう様子を見ている間に、タバサが杖を引き抜き、なにやら呪文を唱えだした。 
すると、ルイズの持っていた縄が、まるで蛇の様に僕らめがけて飛びかかってきた。 
マズイッ! このままでは巻き付かれてしまうッ! 
僕は慌て、ハイエロファントの左腕をのばして縄をつかみとった。 

しかし、コレは蛇ではなく縄である。一点を抑えた程度じゃあ止まりはしないッ! 
かといって、ハイエロファントの右腕まで此方に向けては、茂みの方が疎かになる。 
逆に縛られた場合でも、茂みの観察は続けられるが、だからといって縛られるのは嫌だッ! 
どうする? どうすればいいッ! 
そう考える内に縄の蛇は、今度は押さえている方と反対を頭として、また飛びかかってきた。 
考えている暇は無いッ! 
僕はとっさに右手でその縄の頭をつかみ取る。そして、その行為の失敗に気がついた。 
これじゃあ、間のたるみから巻き付かれるのを止める術がないッ! 
案の定、縄はそのたるみから僕の右手を登り、あっという間にその腕を拘束した。 

「何をする気だッ!」 
「そうだ! 俺や花京院にそういう趣味はねぇ! 女相手ならともかく!」 

何を言っているんだ才人ォォオオオッ! 
お前の性癖なんて聞いて無いッ! 聞きたくも無いッ! 

「ハァ? アンタ何いってるのよ? いいから黙って縛られなさい!」 

縄はそうこうしている間にも、僕と才人の身体に絡みついてくる。 
何とか逃れようと、僕と才人は必死で身をねじる。 

「クッ! ……才人! 身体に力を込めろ! そうすればまだ…」 
「もう遅ぇよ、絡みつかれちまった!」 
「クソッ!」 
「あ、暴れないでッ! 縄が、縄が食い込んで!」 

しかしあがいても縄は外れてくれない。 

「さて、後はつるし上げるだけね」 

つるし上げるだってッ!? クソッ! よりにも寄ってこの状況で! 
説明するしか無いッ! 
侵入者にも聞こえてしまうかもしれないが、つり上げられるよりマシだ。 
僕は確実に聞こえる様に声を張り上げた。 

「待ってくれ! ルイズ、キュルケッ! 侵入者が居るかもしれないんだ!」 
「え?」 
「え?」 
「……」 
「マジか!?」 

僕のやや張り上げた声に、普段反応の薄いタバサですら、本から顔を上げて此方を見てきた。 

「そこの茂みの中、彼処だけ、音がしないんです!! そこを調べれば、確実に!!」 

だが、全員反応は薄い。 
何を言っているんだ、といった感じの視線が僕に向けられる。 
だが、今、声を張り上げた時、確実に茂みが揺れた。 
間違いなく、居る! 

「ここはトリステイン魔法学院よ? いくら何でも、メイジの多いこの学園に、侵入者なんか出ないわよ。見間違いじゃあないの?」 
「つくなら、もっとマシな嘘をつきなさい。国中の貴族を敵に回す事になるのよ。第一アンタ、どうやって音がしないって気がついたのよ」 

ルイズもキュルケも、冷ややかな反応を返すだけ。 
かくいう僕も、何か居ると言っても、口で説明できる証拠を持っている訳じゃあない。 
気付いた理由にしても、スタンドについて、ルイズもキュルケも理解が薄く、タバサに至っては説明すらしていないので、喋りようがない。 
どうしたものかと黙っていると、才人がぼそぼそ声で、僕に話しかけてきた。 

「なぁ、どうやって気がついたんだよ? やっぱり、さっきスタンド……だったっけ? アレを出してる時か?」 
「ああ、そうだ。ちゃんと話してはいなかったが、僕のスタンドは聴力がある。それを使って聞いても彼処だけ、切り取られた様に音がしないんだ」 
「成る程、つーことはつまり、確信だけはあるんだよな? だけれど、説明のしようがない……」 
「Exactly(その通りでございます)」 

しかし、才人にだけ伝わってもしょうがない。 
縛り付けているのはルイズ達だ。 
どうにかして、この事実を伝えなければッ! 

「それだったら俺も、そこの茂みで影をみたぜ。侵入者かどうかはしらねぇけど……」 
「何、アンタも?」 

才人のフォローが入る。ナイスアシストだッ! 
一人よりも二人。これなら市にいる虎にだって気がつくだろう。 
気づかせられずとも、時間ぐらいは稼げる。つり下げられたら、抵抗のしようもないからな。 
初めて、僕は才人に感謝の念を抱いた。 

「茂みが揺れた時も、音一つしなかったから、間違いねぇよ」 
「……」 

まだルイズは納得いかない様子で、疑いの目で僕達の方を見続ける。 
せめてもう少し証拠があれば、信じさせることも出来そうだが。 
まぁ、とりあえず時間は稼いだ。 
その間に、既に僕はエメラルドスプラッシュを撃つ用意を完了させている。 
すこし強引ではあるが…… 

「やむをえんッ、強行手段だッ! エメラルドスプラッシュ!」 

僕は先程の茂みの辺りに、解放したエメラルドスプラッシュを叩き込む! 

エメラルド色の拡散されたエネルギーは、茂みを根本からえぐり取る威力がある。人に当たれば、骨ぐらいは折れるだろう。 
メイジ、平民を問わず見ることは出来ない、この散弾銃を避けられるのか? 無理に決まっている。 
他人に見えないことを鬱陶しく思ったが、こういう時はそれがアドバンテージになる。 
確実に当たる! 僕はそう確信した。 
だが、 

「何ッ!?」 

その破壊のエネルギーは茂みに到達することなく、突如合間に現れた巨大な土の手を砕いて消え去った。 
狙ったかのようなタイミングで出現したそれは、間違いなく、ガードを目的として現れた筈だ。 
何故、ガード出来たのか。 
直進的にしか撃ってないとはいえ、初めて見る人間には何が起きているのかさえ解らないはずだ。 
その理由を考える暇もなく、砕かれた巨大な土の手は再生して、いや、その手に見合う巨大な身体も含め造られていく。 

「嘘!」 
「本当に」 
「いた」 

ルイズ達は侵入者が居ることに驚いている、僕はガードされたことに驚いたそのわずかな間に、土の手はそれ相応の、30mはありそうな巨大なゴーレムとなって、僕達の前へと現れたのだった。 

To be contenued…… 
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