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愚者(ゼロ)の使い魔-20 - (2007/11/08 (木) 22:45:20) のソース
宝探しでギーシュが買ってきた地図は五つ。 いちいち細かく言うのも面倒なのでダイジェストで行こうと思う。 まず一つ目。竜の金貨だ。 これは五つ集めると自分が一人増えるらしい。 どういうことなのかは分からない、偏在みたいなもんか? 竜の金貨があるのはダイナソー陸地と呼ばれる場所だ。 陸地ってのは土地名に使うには正しくない気もするが細かい事は気にしないでおく。 そのダイナソー陸地に着き、地元住民から情報を集めていたらとんでもない事が分かった。 竜の金貨はもう無いのだ! 地元住民のYさん(仮名)が言うには突如現れた赤い帽子のひげ男が『便利だから』と全部とって行ってしまったらしい。 もう無い物を手に入れる事ができるわけも無く、だが次に行くには時間がないのでその日はダイナソー陸地に泊まった。 一日目終了。 二日目。 二つ目は青眼の白龍。 これは龍の形の彫刻とかじゃなくて青い目の白い龍を召還できるお札らしい。 キュルケが言うにはこの秘宝は考えられるとしたらサモンサーヴァントを応用したマジックアイテムらしい。 だがサモンサーヴァントには色々と制約があるため、そんなものはまず存在しないとも言っていた。 だが実際に存在しているのだ。この場合は未知の技術か真っ赤な嘘かのどちらかだろう。 それも実際に見てみればハッキリする。 その青眼の白龍が祭られている神殿に着いた。 だが中には何も無かった。 あるのはただの破壊の跡。 鋭い爪によって抉られただろう壁。 堅い尾によって倒れたと思われる柱。 この傷跡をみればここで龍が暴れただろう事を想像するのは容易かった。 少し離れたところにある壁には何か文字が書かれていた。 近くにいたギーシュが読み上げる。 『これが青眼の白龍か!ウワハハハー!すごいぞーカッコいいぞー!』 どうやらこの龍を手に入れたヤツはどうしようもないヤツらしい。 ギーシュが続きを読む。 『龍を一度戻したらもう出て来なくなってしまったのですがどうすればいいのでしょうか? 分かる人は教えてください。もちろん報酬は出します。 レコン・キスタ総司令官 オリヴァー・クロムウェル』 おれ達は次の場所へと向かった。これはほっといても良いや。 三つ目はブリーシンガメン。 これは首飾りらしい。 これがある寺院はオーク鬼が住み着いていたのでそれを倒す必要があり、 それを終わらせ、中を調べてみたのだが見事なまでに何も無かった。 ギーシュはブリーシンガメンを使ってワルキューレを強くするつもりだったらしくちょっと落ち込んでいた。 「やっとクラスチェンジできると思ったのに…」 まあまあ、スターランサーの方が使い勝手は良いしさ、そっちにするチャンスだと思えよ。 四つ目は退魔の剣らしい。 コレを抜けるのは真の勇者だけだ! みたいなことが地図には書いてあるのだが…これは宝の地図と言うよりは観光パンフレットだ。 その証拠に剣が祭られてる神殿には金を払えば普通に入れるし台座に刺さってる剣を抜く事だってさせてくれた。 だがおれにもキュルケにもタバサにも抜けなかった。 それにしてもおれが何も言われず挑戦できたのには驚いた。 最後にギーシュがチャレンジ。 どうせ抜けないと分かっていてもこういうのはワクワクするらしく顔を輝かせている。 そんなギーシュを見ることもなく次の相談をするおれ達。 全く関係ない人たちと思われても仕方ないくらいのスルーっぷりだ。 おれ達がもう遅いし今日はここに泊まろうと決めたところでギーシュが台座から降りてきた。 だが様子が変だ。 表情がポルナレフのAAみたいになっている。 「あ…ありのまま今起こった事を話すよ!」 台詞までそのままだった。 「僕は剣を抜いたら七年後の世界に飛ばされていてその世界は大変な事になっていて僕がそれを救ったんだ!」 ハイハイワロスワロス。 二日目終了。 三日目。 五つ目にして最後は竜の羽衣。 これを身に着けたものは空を飛べるらしい。 だがはっきり言って必要ない。 だって自力で飛べるもん。紙飛行機みたいに舞うだけだけど。 それでも売れば金になる。 そしておれ達は竜の羽衣があるタルブの村までやってきた。 タルブの村はだだっぴろく綺麗な草原があり、のんびりとした所だ。 おれはこの草原の匂いを嗅いだ事があるような気がする。何故かは分からないが。 これが最後でかつ戦闘も無さそうと言う事でみんなもリラックスしている。 おれは使いそうにないデルフを外し、シルフィードに預けた。 キュルケはこうも言っていた。 「ルイズも来れば良かったのに…」 最近のキュルケはルイズの心配をしている。確かにちょっと様子が変だからな。 おれも昨日の夜キュルケに色々と聞かれたのだが、おれはそこまで気にするほどの話じゃないだろうと思っている。 で、おれが他のヤツに相談したらどうだ?と聞くと 「『自分』にも相談したんだけどやっぱり使い魔である貴方も無視できないでしょう?」 と言われた。なるほど、正論だ。 さてそんな風に気分転換に丁度良いタルブの村だが、おれ達は休暇や観光で来たのではなく冒険に来たのだ。 とりあえず話を聞くために人間を探す。 丁度道の向こうから女が来たのでそいつに話を聞こうと近づく、 おれ達貴族が近づいたのを見て、大名行列みたいに脇にそれ頭を下げる。 素朴な感じで明らかに村娘といった娘だが、かなり胸がデカイ。 そして何故だかおれはこいつがメイド服を着ている姿を思い浮かべてしまうのだ。 その理由はすぐに分かった。草原の匂いの謎と共に。 「よう、シエスタ」 その女はシエスタだった。 メイド服を着ている姿を思い浮かべるのもいつも着ているのだから当たり前。 そして草原の匂いはおそらくここがシエスタの故郷だからだ。 匂いってのはそいつが何処に住んでいるかと、何処で育ったかで違ってくる。 だからシエスタの匂いとこの草原の匂いが重なり、前にこの草原の匂いを嗅いだように感じたのだ。 で、次がこの推理をした名探偵イギーへのシエスタの反応。 「イギーちゃん!?」 『ちゃん』付けだった。 いつもはおれが使い魔だからか『さん』なのに。 きっと今までも心の中ではそう呼んでいたに違いない。 シエスタに会ってからの話は早かった。 おれ達が竜の羽衣を探していると言ったら、それはシエスタの家にあるものだがインチキで名前だけの秘宝だと言う事を教 えてくれた。 それでもここまで来たのだし、一応見ておくことになり、 寺院にある実物を見たのだが、これがビックリ! 飛行機だった! 「まったく、こんなものが飛ぶわけないじゃないの」 キュルケが言い、ギーシュも頷く。 「これはカヌーか何かだろう?それに鳥のおもちゃのように、こんな翼をくっつけたインチキさ。」 「……」 そして相変わらず本を読んでるタバサ。 誰一人としてこれが飛ぶとは思ってないらしい。この馬鹿共が、科学を舐めるな。 ちょっと説明しようとも思ったが、今はもっと情報が欲しい。 おれはシエスタに話しかける。 「シエスタ」 「何?イギーちゃん」 「これについてもっと教えてくれ」 シエスタへの質問の結果、これはシエスタのひいおじいちゃんの物で、そのひいおじいちゃんはこれで飛ぶ事ができなかっ たという事が分かった。 そしてひいおじいちゃんのお墓があると言うのでちょっと見せてもらう事にした。 タルブ村の共同墓地の一画に他の白い石でできたものとは違う、黒い石のものがあった。 それがシエスタのひいおじいちゃんの墓だった。墓石には墓碑銘が刻まれていた。 「ひいおじいちゃんが死ぬ前に自分でつくったそうよ。異国の文字で書いてあるから、 誰も銘が読めなくって。なんて書いてあるんだろうね?イギーちゃん」 さっきからちゃん付けが定着してしまっている。言葉遣いももう友達へのものだ。 「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」 「え?イギーちゃん読めるの?」 「まあな」 話す事や書く事はできないけど読んだり聞いたりなら六ヶ国語は軽い。 承太郎や花京院、それにアブドゥルと一緒にいたせいか日本語とアラビア語も何とかなる。 寺院に戻ると四人が待っていた。…四人? 「おお!イギー君!」 まばゆく輝くハゲ頭、コルベールだ。何でここにいるんだ? コルベールはかなり興奮している。 「竜の羽衣について君は何か知っている、いや解っているらしいね!?」 多分キュルケ達から話を聞き、そしてそう思ったのだろう。 「是非教えてくれ!」 何でおれが…と前のおれなら思っただろうが、 コルベールとはちょっとした協力関係にあるし、これだって立派な機械だ。 これを応用したものを作るとしても作るのはコルベールだ。知識はあったほうが良い。 そんな訳でキュルケとタバサとギーシュとシエスタは今日泊まる予定の、 そしてコルベールが泊まっている(持ち主の家だかららしい)シエスタの家まで案内され、コルベールとの二人きりでの飛 行機講座は開かれた。 飛行機に触れると左前足のルーンが光り、この飛行機の情報が頭に流れ込んでくる。 そして飛行機が飛ぶ原理やこの飛行機の名前はおそらく『ゼロ戦』で今は燃料がないこと等、今わかっている事や推理した ことを話す。 一通りの事を話し終え、日も暮れてきたところでとりあえず今日は終わりにしようって所でコルベールが口を開いた。 「君は確か異世界から来たといっていたね?」 「ああ、異世界から来た」 コルベールは少し考え、話し出した。 「もしかしたら、君は元いた世界に帰れるかもしれない」 コルベールがこの『竜の羽衣』の存在を知ったのはある伝承からだそうだ。 そしてその伝承によると竜は二匹いたらしい。 その竜は日食と共に現れ、一匹は日食へと消えた。 これはつまり日食が何か関係してるという事。 ゼロ戦に乗って日食に飛び込めば…帰れるかもしれない。 「まあ、証拠なんて一つもありませんがね。けれど、可能性は高いと思われます」 元の世界に帰る。 それは、つまり、あいつらにまた会えるかもしれないという事だ。 しみったれたじいさんが車を運転しながら馬鹿話をして、 そのじいさんのケチな孫がそれを聞き流して、 マヌケなフランス人がそれに笑い、 胡散臭い占い師がそれを聞きながらひょろっちい高校生の事を占ったらヤバイ結果が出て、 その横でおれはガムを食べる。 何が楽しいのかなんて今も分からないけど、楽しかった時を過ごせる。 また、あいつらに会いたい。 これは自分がずっと諦めていた事。 でも諦めきれないから無意識の内に別の目標を作った。 それをする事によって忘れられるように、 『国を作る』そんな事犬にできる訳ないよな、常識的に考えて。 最初は神になるとか言ってた事も会ったけどそれだって本気じゃない。言われた側だってただの誇張表現だと思ってるだろう。 それにおれが帰ることで一つの可能性も伝えられる。 確かアブドゥルと花京院もおれと同じく死んだはずだ。 だがおれはこうしてここに生きている。それは普通にはありえない事だ。 だから花京院とアブドゥルも同じように異世界に飛ばされてるのかもしれない、 もしかしたらハルケギニアの平行世界でルイズの使い魔をやってる可能性だってある。 SPW財団ならこの謎について解明しようとするだろう。 それがもし、上手く行ったのなら。 また、あいつらに会えるかもしれない。 これは嬉しい事だ。 だが、おれは何故だか沈んだ気分でシエスタの家に向かった。 家に入るとシエスタの弟達がやってきた。全員まだ小さい。 そしてそいつらはおれを見て 「犬だ」 一人がおれの体を撫で始めた。 「止めろ」 「喋ったよ」 もう一人なで始めた。だから止めろ。 「可愛いね」 三人目。 「でも元気ないよ」 「じゃあ元気付けよう」 残りも含めて全員でおれの体を撫で始めた。 「おい止めろ!」 だがそう言ってもガキ共はおれの言う事を無視しておれを撫で続ける。 「ああ!もっとやさしく」 一人が胸の方に手を伸ばしてくる。 「そこはダメ!ダメッ!ダメッ!ダメッ!」 何本もの手がおれを撫で回す。 「ああ!やさしくして やさしく!」 トドメとばかりに全員が同じリズムで撫でてくる。 「うああああ!ダメッ!もうダメ~ッ!」 To Be Continued… ----