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ゼロと奇妙な隠者-1 - (2007/08/18 (土) 10:09:49) のソース
(ふぅ~~~~ッ、危ないところじゃったわいッ。 ちと刺激的なギャグじゃったとは言え本気で殺されるかもしれんかったのォ) 救急車の中、空の向こうから魂を引き戻されたばかりの[[ジョセフ]]は包帯を巻かれた胸を撫で下ろしていた。 既に死亡していた自分にDIOの死体から輸血して蘇生させるという、ある意味今までの冒険と戦いを台無しにしかけないくらいの大博打ッ。 しかしさしものDIOとは言え、血だけではジョースターの血統を乗っ取ることは出来なかったようだ。 ジョセフは自分の横のベッドに視線を落とす。スタープラチナと承太郎に吹き飛ばされて完全敗北した、かつてDIOだった男の死骸は今も救急車の中で自分達と共に運ばれている。 この死骸を太陽光に晒し、復活の芽を完全に摘み取った時こそ、五十日にわたる冒険が真に終わるのだから。 (じゃが念には念を入れておかなければなるまい……) ジョセフは知らず知らずのうちに、自らの右手を強く握り締めていた。 自分の祖父ジョナサンは、吸血鬼となったDIOと戦いその身を打ち滅ぼした……と思った。しかしッ! DIOは首だけとなっても生きていたばかりか、なおもジョナサンへ襲い掛かり、ジョナサンの肉体を奪い取って復活したッッッ! DIOの血は果たしてどのような効果を及ぼすのか。これで吸血鬼化するとかDIOに乗っ取られるとかしようものなら、本当に今までの冒険が台無しとなる。 しかしジョセフには吸血鬼に対する必殺の切り札、波紋がある。 (じゃがなァ~~~~吸血鬼の血が身体に流れてる人間が波紋使ったら一体どうなるんじゃ? 呼吸が出来なくなって死んだりしたらヤじゃのう) ちょっと波紋を練ってみる。 「おおっ……ふ」 少し痛みが走るが、大体大丈夫。死ぬ危険はない。 だが波紋の効果が自分に及んでいるという事は、少なからずDIOの残滓が自分の中に眠っているということでもある。しばらく血を浄化するためにも、痛みがなくなるまでは波紋呼吸を続けなければなるまい。 「じじい……何してやがる」 承太郎が訝しげな目でジョセフを睨む。 「うむ。DIOの血が流れておるんでの、念を入れて波紋を自分の体に流そうとな……」 先程までの文字通りの死闘を潜り抜けた安堵感が、祖父と孫の間に流れたその瞬間ッッ!! 「ッッッ!!!」 「な……なんじゃあこれはァ~~~~!!?」 突然救急車の中に現れる、眩く光る“鏡”ッ!! 新手のスタンド使い!? 祖父と孫に流れ始めていた安堵感は即座に吹き飛び、二人の男が戦士の表情へと変わるッッ!! スタープラチナ、ハーミットパープル、二体のスタンドが発動する……が、鏡は承太郎とジョセフではなく、DIOへ向かって動き出していたッッ!! 「!!! スタープラチナッ……」 「いかんッッ!」 承太郎は自らのスタンドの能力を発動させようとした。しかしジョセフは…… (あの“鏡”が一体“何”なのかはちっともわからんッッ!! じゃが…あの鏡にDIOを触れさせてはいかんッッ それこそ! 本当に! わしらの旅が台無しになってしまうッッッッ それだけはッッッッ させてはならんのじゃあああああ!!!!) 根拠があったわけではない。 しかし、ジョセフには奇妙なまでに強い『“鏡”をDIOに触れさせてはいけない』という確信があった。 DIOが祖父の死体を冒涜した怒りで高まり、時を止めるまでに至った承太郎の精神は……DIOを再起不能にしジョセフを蘇生させたという気の緩みからか……時を止めることは出来なかった! だがジョセフの試みは成功したッ! DIOの身体をベッドから全て蹴り落とし、代わりに自らが鏡へタックルするように飛び込んだッッ!! 「じじいーーーーーッッッッ」 時間停止を即座に諦め、鏡に引きずり込まれようとするジョセフを無理矢理に引きずり出そうとするスタープラチナッ!! 高い精密な動きと俊敏な速度を持つ白金の腕は、凄まじい勢いで引き込まれていくジョセフの腕を掴んだ……が、スタープラチナの力を持ってしても、ジョセフを引き戻すどころか! 引き込まれていく動きを留めるだけで引き込まれていくことには変わりがない! 「手を離せ承太郎ッ! お前まで引きずり込まれたらDIOの後始末を誰がやるんじゃ!」 「ふざけんなじじいッッッ 俺が生き返らせたってのにここでリタイアなんかこの俺が認めねェェーーーッッッ」 「心配するな承太郎! 何があってもわしは必ず帰ってくる! わしが帰らんかったらスージーにはわしは死んだと伝えておけ!」 「帰ってくるとか言ってるのに遺言残してんじゃねェじじいーーーーッッッ」 「落ち着け承太郎! ホリィから父と息子を同時に奪う気かッ」 その瞬間、スタープラチナの力が思わず緩む! 鏡はジョセフの綱引きに勝利し、一気に彼を引きずり込んだッ! 「ハーミットパープルッッッ!!」 ジョセフが鏡に飲み込まれようとする瞬間、ジョセフの左腕から伸びた紫の茨が彼の上着と帽子へと伸び、持ち主と共に鏡へと引き込まれる! 「いいか承太郎ッ! DIOの後始末はお前に任せるッ! あ……それともう一つッ!」 もはや今のスタープラチナでは鏡からジョセフを引きずり出せない。それを察した承太郎は、歯を食いしばりながら、鏡から僅かに覗いたジョセフの顔を睨みつけていた。 「なんだじじいッッッ!!」 「楽しい旅じゃった! 孫と旅が出来て、わしゃ本望じゃったぞ承太郎!!」 その言葉を最後に、ジョセフの身体は全て鏡に飲み込まれ……そして、鏡も、消えた。 「じじいーーーーーーーーーーーーッッッッ」 承太郎の絶叫が、轟いた。 [[To Be Contined →>ゼロと奇妙な隠者-2]] ---- #center{[[戻る>ゼロと奇妙な隠者]]} //第三部 ,ジョセフ