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ゼロの兄貴-16 - (2007/08/21 (火) 09:21:55) のソース

「今の魔法は何だ?答えろ」 
そう質問した瞬間ルイズが凄まじい目でプロシュートを睨み付ける 
だが生憎プロシュートにとっては相手が貴族だろうと平民だろうと、例え王女であろうと対応は変わらない。 
「ディティクト(探知)マジック…どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね。驚かせてしまったようで申し訳ありませんでした」 
「姫殿下、いけません。姫殿下に乱暴を働いた者に頭を下げるなどと…」 
アンリエッタがプロシュートに頭を下げるがそれを見たルイズは必死だ。 
もっとも当のプロシュートは涼しい顔でそれを受け流す。 

「ああ!ルイズ!ルイズ・フランソワーズ!そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはお友達!お友達じゃないの!」 
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」 
ルイズが珍しく緊張した声で言ったが、プロシュートはスデに興味なさそーに椅子に座っている。 
「やめて!ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をしてよってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!ああ、もう、わたくしには心を許せる 
   おともだちはいないのかしら。昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、あなたにまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」 
「姫殿下…」 
ルイズが顔を上げ心底嬉しそうな笑顔でアンリエッタを見付めた。 

以下、延々と昔話に華が咲く 
「クリーム菓子を取り合ってケンカしてルイズが常に勝っていた」だの「ドレスの奪い合いでアンリエッタのボディブローがルイズに決まって気絶した」だの 
プロシュートにとってはどうでもいい事なので適当に聞き流していた。 
「…知り合いか?」 
「姫様がご幼少のみぎり、恐れ多くも遊び相手を務めさせていただいたのよ」 
また話がアンリエッタの言葉尻に影が含まれている事に気付いた。 

「どうかされたのですか姫様…?」 
「…結婚するのよ。わたくし」 
「……おめでとうございます」 
普通なら祝うであろう王女の結婚報告だがその沈んだ声を察っするに政略結婚という事がルイズにも理解できた。 
そこにアンリエッタが宇宙最強の台詞である「それがどうした」が頭に浮かんで暇そーに椅子に座ってるプロシュートに気付く。

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」 
「お邪魔?どうして?」 
「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?身を挺してあなたを守ってくれたんですもの」 
「はい?恋人?あの生き物が?」 
その言葉にプロシュートが一瞬反応する。 
もしルイズがプロシュート精神の色を知ることができたなら黒に少しだけ赤が混じった事に気付いたであろうが当然それに気付くよしもない。 
「姫さま!あれはただの使い魔です!恋人だなんて冗談じゃありません!」 
ルイズが首が捩れんばかりにそれを否定する。 
「使い魔…?人にしか見えませんが…」 
「人です。姫様」 
「そうよね。はぁ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」 
「好きであれを使い魔にしたわけじゃありません」 
憮然としてルイズが返すが、アンリエッタが何回目かのため息を吐いた。 
ルイズがその原因を問いただそうとするが思い直したかのようにアンリエッタが話を打ち切ろうとした。 
だが、ルイズはそれを振り切るようにしてさらに迫る。 
「いけません!昔はなんでも話し合ったじゃございませんか!わたしをお友達と呼んでくださったのは姫様です。そのお友達に、悩みを話せないのですか…?」 
その言葉にアンリエッタが決心したかのように頷いき口を開いた。 

「今から話すことは、誰にも話してはなりません」 
アンリエッタがプロシュートの方をちらっと見てきた。 
「オレの任務は護衛だからな…どんな事であれ話は聞かせてもらう」 
「メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由などありません」

そのまま沈んだ調子で語りだす。 
「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」 
「あんな野蛮な成り上がりどもの国に!?」 
ハルケギニアの地理に全く詳しくないプロシュートがルイズに問う。 
「ゲルマニアってのは何だ?」 
「トリステインの北東にある国でお金さえ積めば平民でも貴族になる事ができる野蛮な国よ!」 
「そうよ。でも仕方がないの。成り上がりの国とはいえ同盟を結ぶためなのですから…」 
アンリエッタがルイズにハルケギニアの政治情勢を説明する。 
アルビオンで反乱が起き王室が倒れそうであり、このまま行けば侵攻されるのはトリステインであり 
それに対抗するための同盟をアルビオンの貴族派が望んでおらずそれを妨げる材料を探している事を 
だがその説明を聞いているプロシュートの精神はさらに朱に染まっていっている。 

大体の事情が飲み込めたのかルイズが顔を蒼白にして問う。 
「で、もしかして、姫さまの婚姻をさまたげるような材料が…?」 
「おお、始祖ブリミルよ……、この不幸な姫をお許しください……」 
アンリエッタが顔を両手で覆い床に崩れ落ちた。ルイズは半分混乱しているようだがプロシュートは冷めた目でそれを見ている。 
ルイズもそれにつられたのか興奮したようすでそれを問いただす。 
「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」 
要は、アンリエッタが王家のウェールズ皇太子とやらいに宛てた手紙をその皇太子が持っており 
皇太子が捕らえられ、その手紙が『ヤバイゲルマニアにIN!』すれば同盟の話が消し飛びトリステイン一国でアルビオンとドンパチやらねばならないという事だ。 

「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは……」 
「つまり奪還任務ってわけか…?」 
心の奥底に沸き立つ赤い物を隠しながらプロシュートがアンリエッタにそう問いかける。

「無理よ!無理よルイズ!わたくしったら、なんてことでしょう!混乱しているんだわ! 
    考えてみれば、貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて 危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 
「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば、 
    何処なりと向かいますわ!姫さまとトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけには参りません!」 
ルイズは膝を突き恭しく頭を下げる。 
「このわたくしの力になってくれるというの?ルイズ・フランソワーズ!懐かしいお友達!」 
熱血少年漫画の如く友情を確認しあう二人だが、プロシュートの方は冷静だ。 

「アルビオンに赴きウェールズ皇太子を捜し、手紙を取り戻してくればよいのですね?姫様」 
「ええ、そのとおりです。ですが礼儀知らずのあの人たちはかわいそうな王様を捕まえて縛り首にしようとしています! 
   わたくしは思います。この世の全ての人々が、あの愚かな反乱行為を赦してもわたくしと始祖ブリミルは赦しませんわ。ええ、赦しませんとも!」 
プロシュート達自身が組織を裏切った。いわば組織に対しての『反乱』である。 
国と組織の違いとは言え、やっている事は同じだ。 
その事をこの世間知らずもいいとこな姫様に『愚かな行為』と言われ『赦さない』と言われた。 
それが致命だった。アンリエッタがそういい終えた瞬間プロシュートの精神が全て真紅に染まった。 

だが、いい具合に二人の世界に突入しているルイズとアンリエッタは気付いていない。 

「一命にかけても。急ぎなのですか?」 
「アルビオンの貴族たちは王党派を国の端にまで追いつめています。敗戦も時間の問題でしょう」 
「早速明朝にでも出立いたします!」 
そうルイズが返し明朝アルビオンに向かう事になったがアンリエッタがプロシュートの方を見つめた。 
「頼もしい使い魔さん。私の大事なお友達をこれからもよろしくお願いしますね」 
そう言いながら左手を差し出してきた。 
だがプロシュートは射抜くような視線をそれに向けただけだ。 
「いけません!姫様!そんな、使い魔にお手をを許すなんて!」 
「いいのですよ。この方はわたくしのために働いてくださるのです。忠誠には、報いるところがなければなりません」 
プロシュートが無言で近付く。 
だが二人は気付いていない。プロシュートがそのような事をする為に近付いたのではないという事にッ!! 

そのままアンリエッタが差し出した左手の前に立ち… 

思いっきりッ!その左手をッ!!『踏みつけたッ!!!』 

ルイズはその瞬間何が起きたのか理解できなかった。 
いや、理解したくなかった。 
大切なお友達と言ったばかりのアンリエッタの手を己の使い魔が踏みつけているのだからッ! 
「な、なななな何をするだぁーーーーーーーッ!!」 
どこぞの英国紳士が憑依したかのようにルイズが叫んだ。 
「…ッあ…!」 
左手を思いっきり踏まれているアンリエッタだが叫んでは誰かに気付かれるという事もあり声を出さずなんとか耐えていた。 
「あんた…!姫様になんて事を…!こここ、この、この生ハ…」 
それを言い終える前にプロシュートと目が合ったがそれを見たルイズの声が出なくなる。 
目があった瞬間プロシュートの冷徹かつ明確な殺意を持った視線がルイズを刺し貫いていた。

ほぼ同時刻キュルケの部屋 
「……なななな何をするだぁーーーーーーッ!!」 
「五月蝿いわね…なに騒いでるのかしら…まさかルイズがダーリンを無理矢理…!?」 
勘違いもいいとこだが恋は盲目らしく即座に着替えを済ませ隣のルイズの部屋に飛び込んだキュルケが見たものは―― 

床にへたり込んだまま動けないでいるルイズと冷徹な目で立ち尽くすプロシュート、そして…手を思いっきり踏まれているアンリエッタがいた。 
「ちょっと…これは一体どういう事…?」 
一瞬(SMプレイッ!?)と思ったらしいがプロシュートの目を見たキュルケが後日こう語った。 
「あ…あの時のダーリンの目…看守が処刑囚でも見るかのように冷たい残酷な目だったわ…『かわいそうだが明日の朝には首だけになってる運命なんだな』って感じの!」 

ルイズがそれに押され黙ったのを見るとアンリエッタに向き直り静かに絶対零度まで冷え切った口調で話し始めた。 
「テメーに何が分かる…?分かるのか?ええ?おい… 
     平民が金を積んで貴族に成り上がるのがそんなに野蛮か…?」 

「テメーらみてーに生まれ付いての貴族ってのはいいだろうが… 
    その貴族に雑草みてーに踏み付けられてる平民がなりふり構わず成り上がろうとして何が悪い? 
       成り上がるためにはそれ相応の事をしている…テメーらみたいに生まれた時から平民を支配して当然と思っている貴族共より余程マシってもんだ…」 
「ここに召喚されてから感じた事だがテメーら貴族の中に平民と対等に付き合ったヤツがいんのか…? 
 いねーだろうな…オレ自身、あのマンモーニを殺すまで平民の使い魔と呼ばれ貴族共から人間以下の扱いしか受けてなかったからな…オメーもそうだぜ?ルイズよォ~~」 
「言うに事欠いて『反乱』が『愚かな行為』で『赦せない』だと?

   分かるのか?テメーに…今まで組織に冷遇され『反乱』せざるをえなかったオレ達チームの心がッ! 
       命がけで任務を成しても何一つ信頼されず『シマ』すら与えられなかったオレ達の『栄光』を求めた『反乱』の何が赦せないだと?」 
「アルビオンの貴族連中がどんな理由で反乱を起こしたのかは知らねぇ… 
   だがテメーが言ってる事は踏みつけられた平民が貴族に対して反乱を起こしてもそれを『愚かな行為』だと言ってるのと同じなんだぜ…?」 

自分達が命を賭けて起こした組織への反乱。それをこんな何も知らないようなヤツに否定されたと受け取った。 

「テメー自身が撒いた種が原因で『不幸な姫』って言ってるのも気に入らねぇ…奪還任務を依頼するってのはいい… 
     上に立つものが直接やるわけにもいかねーしな…だがオメーはその任務で人が死ぬかもしれないって事を『覚悟』してんのか?」 
「その責任を理解せずルイズやオレが死ぬって事を覚悟してねーんならテメー1人で行くんだな… 
        少なくともオレ達チームのリーダーはその『覚悟』を持って組織を離反したんだぜ…」 

そう言い放ちアンリエッタの左手から足を離し部屋の外に出る前にルイズに言う。 
「オメー自身が納得できたんならこの任務を受けろ。オレの任務はオメーの護衛だからな… 
        だがそいつがその『覚悟』と『責任』をまだ理解できてねーなら受けるな」 

プロシュートが部屋を出てからしばらくすると放心状態だったルイズとキュルケが手を押さえながら蹲っているアンリエッタに気付いた。 
「……はッ!姫様!今すぐ治癒魔法!!」 
「…構いません」 
「ですが…!」 
さっきまでとは違い、毅然とした態度でルイズの目をアンリエッタが見据え改めて奪還を依頼した。 
「使い魔…いえ、彼の言うとおりです。わたくしはあなたの同情を買うかのようにこの事を頼んでしまいました。 
      ですが、今は違います。『覚悟』と『責任』を持ってルイズ…貴方に手紙の奪還を依頼します。」 
「もちろんですわ…!姫様!」 
「この傷は…あなたが無事に戻ってくるまで治さずにおきます」 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&プロシュート兄貴―ザ・ニュー任務! 

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//第五部,プロシュート
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