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アヌビス神-2 - (2007/09/07 (金) 17:39:52) のソース
真赤な鮮血が次々と眼前で広がる。 剣を振るい、肉を断ち骨を断ち命を絶つ感触が、快感を伴いゾクゾクと背筋を駆け上る。 泣き叫びながら逃げる子供を後ろから斬り伏せる。子供の次は泣き叫ぶ女を……。 そして次々と死体の山が出来上がり……。 「okirookiろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ」 そうそう、死体が次々と元気に起き上がって。 うん、朝になったら、死体でもちゃんと起きないと駄目よね。 『おはようございまーす』さっき倒れた子供も元気に起き上がる。 元気で宜しい……って? 「起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ。 朝だ起きろ起きろ起きろ起きろ。朝だ起きろ」 「っだーっうるさいうるさいうるさぁーいっ!!」 ルイズはあまりに耳障りな音に大声を上げて跳ね起きた。 「起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ……起きたか」 キッと音の元を睨み付ける。続けて窓の外を見る。 薄らと白んだ空、日が僅かに顔を覗かせんとしているまさに夜明けの瞬間だ。 「朝だ」 その声に再度、声の主の方を向く。 剣だ。剣が転がっている。 しかもその『朝だ』の瞬間に、なにやら偉そうに腕を組んだ犬面男の幻影が見えた気がする。 「だから朝だ起きろ」 「だから五月蝿いって言ってるでしょ!!」 ぶんっ その姿に腹が立ち、両手を上段に振り上げて叩き付けるように枕を投げ付ける。 「そもそも何で私の部屋に薄汚れた折れた剣が転がっててしかも偉そうに目覚まし……」 とまでぶつぶつ言ったところで気が付いた。 昨日の召喚の儀式を。 そう言えば帰って其の侭突っ伏したので服も其の侭、寝苦しくて少し脱いだらしく着崩れて物凄いだらしない格好。 面倒だなぁと思いながらよたよたと起き上がりベッドから降りてクローゼットへ向う。 ルイズが思い出したのは着替えないまま寝た事だった。 カツンッ 途中で枕ごと何かを蹴り飛ばした。 くるくるくるくるっ こつんっ アヌビス神は其の侭ベッドの脚にめり込んだ。 下手にでて目覚まし時計変わりまでしてやったのにこの扱い。まさに『何するだァー』である。 そう叫ぼうと思ったが目の前でお着替えが始まったので黙っておいた。 憶えておくべきだ、特に新しい体験は!未体験はよくない!”博物館への陳列”も”髭剃りの剃刀代わり”も体験済みだが少女の部屋でベッドの脚に刺さった状態で下から見上げる様に少女の着換えを閲覧するのは未体験だッ!!しかも着崩れ半脱ぎ状態からッ!! すとすとすとっ スカートがブラウスが乱雑に脱ぎ捨てられていく。 アヌビス神の名誉の為に記述しておけば、彼は少女の肉体への特別な性的興味は無い。 その肉を骨を斬り感触と血を味わう的な意味では興味津々だが、人間と同じ衝動的な性的欲求を持っていないのだ。 だが柔かい幼い肉と骨を断つコリコリとした感触は格別に思うし、それは興奮を伴う物と言っていいかも知れない。 その柔肌の感触をじっくりと刀身と刃で味わうのも悪くない。 強い敵をそれを上回る強さで斬り殺すのとは又違う格別な感覚だ。 つまりは何だ。 興味が有るのかと問われれば有る。 少女が好きかと問われれば、 大 好 き で す ! 胸が小さいのはどうかと問われれば、鎖骨から肋骨の骨を一気に断つ感覚を想像し易く、又その奥に脈打つ心の臓も意識し易く、 凄 い 好 み で す ! むちっとした肢体に斬り付けるのも当然好きだがそれは、 別 腹 で す ! ルイズは足元に転がる邪魔な脱いだ衣服を軽く蹴り飛ばし下着に手をかける。 するるるるっ パンティを少しおろし片足をそっと上げ……。 「憶えたぞ!!」(斜に構え両手でドォォ…ン!!と指差しているイメージで) 「は、はァ……?」 一糸纏わぬ姿となったルイズがゆっくりと振り返る。 「いやさっき飛ばした服がぶつかってついつい習慣で叫んだだけで特別に憶えた訳ではない!」 思わずアヌビス神は弁明と言う名の言い訳をしていた。 「こ…… このお下劣インテリジェンスソードぉぉぉぉぉっ!!!!!!」 朝っぱらからルイズの怒号が響き渡る。 ガツンッ 木製ハンガーが投げつけられる。 ここで三択……一つだけ選びなさい。 1、無敵に格好良い刀剣界のカリスマ、アヌビス神は誤解を解ける言い訳を思い付く。 2、突然の乱入者が助けてくれる。 3、現実は非情である。誤解は解けない。アヌビス神はロリコン確定!! 「よ、よし……1だッ!!500年を生きたこのアヌビス神ッ小娘の一人や二人あっさりと説き伏せてくれるわ!」 「誤解だ!別に貧乳少女が大好きという訳では無い、屈強な水夫も舌使いがレロレロ上手な優男もロリコン猿もマンモーニも好みだ!」 「尚の事悪いわーーーーっ!!」 ドガガガガガガガガガッ 怒りと共に次々とハンガーやら椅子やらが投げ付けられる。 「朝っぱらから五月蝿いわよルイズーッ!!」 突然扉が開かれ寝起きらしく、下着同然の格好の女がその長い赤髪を逆立てん勢いで怒鳴りこんでくる。 その目には全裸で壁に向って、半泣きで狂った様に次々と物を投げつけるルイズの姿が映る。 隣の部屋へ殺意を持って、攻撃を加える狂った姿にしか見えない。 昨日失敗しすぎて怒りで気が狂ったか、等と一瞬思考が過る。 使い魔召喚を常識の範囲を超え失敗して退学にならないかと、流石にそれは可哀想だと同情し心配したのが非情に莫迦らしくなる。 だが同時にこれもそれなりにやばくね?と気付き取りあえず押さえにかかる。 キュルケの思考は一瞬でぐるぐると駆け回った。 「落ち着いてルイズ、はしたないわよ!」 「な、何かってに入り込んでるのよキュルケ……て?」 ルイズは反論したところで気付いた。 全裸で大暴れしていた事を。しかもそれを1番見られたく無い者に見られ、あまつさえ止められた事に。 ここらへんでOP ふぁーすとKILLからはじまるーっ はじまらない 「で、何があったか話しなさい」 ベッドの上に転がっていた椅子を引っ張ってきてそこに座りキュルケが問う。 下品でスケベなインテリジェンスソードがグスグス、とベッドの上でシーツを纏い、涙目のルイズがぼそぼそ答える。 ベッドの脚にささったままのアヌビス神が、それは誤解だとかあそこで2番とかおかしくね?とかブツブツ言う。 キュルケが順を追って問いただし、説明を聞いていけば、この両者いまだにお互いが何者かも良く判ったいない様なのが判る。 ともあれ間に誰かが入らないと、直ぐに大騒動になりそうだったのでもう暫らく付き合う事にした。 正直壁をどっかんどっかんされるより、謎の剣の秘密を知ることが出来るほうがまだ良い。 ・名前はアヌビス神 ・手にした人を操る妖刀魔剣の類 ・人の血を好む妖刀魔剣の類 ・こことは違う世界から着た ・アヌビスとはその世界の神の一柱の名前でもある ・振るうものは何者にも勝る達人となる 昨日叫んでいた事を元に問いただし(ルイズが物をぶつけたり爆破を試みたので拷問かも知れない)聞けた話しを軽く纏めるとこんな感じ。 「ねえルイズ、処分した方がよくない?」 キュルケはいきなり廃棄案を出した。 「「えーっ!?」」 いくらなんでもいきなり過ぎる言葉にアヌビス神が驚く、ついでにルイズも。 「人を操れて人の血を好むって確実にヤバイわよ?あなた気がついたら犯罪者よ?」 「そ、それもそうね。それに自分で神を名乗るとか、何処かのサイコなカルト教祖と変わらないわよね。エジプト九栄神とかそんなトンチキな神様聞いた事無いし」 「そうよさっさと新しく契約しなおした方が良いわ。場合が場合だから学院側も判ってくれるんじゃないかしら?流石にあなたが犯罪者の仲間入りってのは私も気分が悪いわ」 「ま、待て!落ち着け実はだな」 身の危険を感じ、慌ててアヌビス神が口を挟む。 「実は昨日操ろうとして失敗したりしてそのーなんだ。操って人殺しとか無いから。 な?な?」 「そう言えば昨日ルイズがアヌビス持ってたけど平気だったわね」 「流石良く見てらっしゃる!!友達思いっ!!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ その言葉を言うなり、アヌビス神は何故か二人から盛大な暴力を受けた。 攻撃を憶えて同じ攻撃に対して無敵になる、とは言えそれは自由に動ける時の話しだ。無防備な状態で一方的に攻撃を受けて平気な訳ではない。 「ほーら平気平気」 アヌビス神は叩きつけようと己を手にしたルイズに触っても安全なのをアピールする。もう必死である。 「わざと操ってないだけじゃ無いの?」 訝しげに問うルイズにアヌビス神は答え語る、 「一瞬でも触れば操れる。そして操れるならこのまま操ってその女ぶった斬って逃げるに決まってるじゃないか」 と。 それもそうね~。とアヌビス神をぷらぷら振るルイズを見て寒気を覚えたキュルケは少し冷汗を垂らす。 「あっ」 ルイズが指を滑らせ、アヌビス神がすっぽ抜けキュルケに向って飛ぶ。 ざくっ 股ぎりぎりの所に突き立つアヌビス神。 「ちっ後少しの……」 「やっぱ処分した方が良いんじゃないの?」 アヌビス神の漏らした言葉に、ぴくっとこめかみに少し青筋を浮かべながら、キュルケはその剣を拾い上げる。 「え?」 ドクンッと何か脈打った気がした。 アヌビス神も力が通うのを感じる。 「ふふふふふ……」 がくっと力が抜け俯き加減になったキュルケが、不気味な笑いを浮かべる。 「ちょっと…… キュルケ?」 首をひょいっと伸ばして覗き込むルイズに向って、 「よくも今までコケにして、一方的に好き放題玩具にしてくれたなッ!!」 表情が一変したキュルケが、アヌビス神を振り上げる。 ザクッ 勢い良く振り下ろされた斬撃がベッドの角を斬り飛ばす。 「ひぃっ」 ルイズは反射的に後ろへと飛びのく。しかしそれは斬撃を避けたものの、自らの逃げ場を失わせる事となる。 ベッドの角へとじりじりと追い詰められる。 傍から見た目、ベッドの上でシーツ一枚で身を覆ったルイズにせまる下着同然の格好のキュルケだ。 「終わりだッ。ゼロの奇妙な使い魔-完-!!」 「や、止めなさーい!!この馬鹿犬ぅっ!!」 両腕で身を庇うようにして身体を丸めながらルイズが叫ぶ。 ドクンッ またキュルケの中で何か脈打つ。 アヌビス神の柄でルーンが輝き、それと共にキュルケに意識が戻ってくる。 ぽとりとアヌビス神を取り落とし。 「あ、あら?」 何時の間にかベッドの上でシーツ一枚で半泣きのルイズに迫っている自分に気付く。 一瞬意識が飛んだ気がしたが、それは置いといて気まずい、ひじょーに気まずい。その手の趣味は無いつもりながら、この体勢は不味い。 ここで三択……一つだけ選びなs 違うっ!こういう時は!逃げるんだよォォォーーー! 「お、お邪魔したわね。ほほほほほほほほほ」 キュルケはそそくさと逃げ出した。 じとぉー…… ベッドの上で転がるアヌビス神に向けられるルイズの涙目の視線が痛い。 「けっあの女油断も隙も無いって奴だ!まさかこんな子供な身体目当てだとは」 アヌビス神はドキドキしながら声をかけてみる。 「そうね……」 「だろ?」 「それはあんたでしょぉぉぉーーーーっ!!」 ルイズは手元に転がっていた木製ハンガーを拾い上げ……。 ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ 激しく殴りつけた。 ひたすら殴りつけた。 全身全霊全力を持って殴りつけた。 ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ はぁっはぁっ 肩で息をしながら、上等な樫(超カタイ)で出来たハンガーがボロボロになるまで殴るだけ殴って少し落ち着いたルイズは考えた。 ・やはりこいつは他人を乗っ取る事が出来る。 ・わたしを乗っ取る事は出来ない。 ・わたしが命令したら乗っ取りが解除された。 この三つ、この三つは確か。 理由は判らないけどわたしが持っている分には安全で、多分それは使い魔だからとかそんなところじゃないかなと思う。 つまりは処分するか、極力近くに置いておき、迷惑をかけ無いように躾るか。その2択なのだ。 処分は……手間が多そうだし学院側を説得できなければ無意味だ。それよりこの他人を操る能力はとても使えるんじゃないかしら?とも考えた。 はっきりいってここまで他人をローコストに一方的に操る事が術など聞いた事が無い。 「そしてわたしならばそれを制御できる……っと。 それに躾……、躾るって何か良いわよね、ふふふふふっ」 何時の間にか思考が口にで、ぶつぶつと言葉を繰り返している。 「あんたアヌビス神って言ったわよね」 「う、うむ」 「今後わたしに逆らわないで協力するっていうんだったら使い魔として仕える事を許すわ」 「……」 「さっきのでも判ったけどあんたはわたしに逆らえない。 でしょ?」 「……ぐ……む」 「あんたがわたし以外の人間を操れるからって幾ら操ってもわたしを斬ることはできない。 違うかしら?」 「……そ、それは」 ガンッ 半壊したハンガーを壁に叩きつける。 「わ、判った……」 渋々アヌビス神は承諾する。 「で、使い魔とは何をすればいいのだ?」 「そうね、使い魔のすべきことは三つ有るわ。 まずは一つ目。 主人の目となり耳となること」 「どういう事だ?」 「使い魔が見聞きした事は主人にも判るのよ」 「今の所その様な事が有った様では無いが……」 「じゃあ駄目ね、使えないわねやっぱ処ぶ」 「ちょ、ちょっと持って見てくれ」 処分という言葉に敏感に反応するアヌビス神、慌てて売り込みをする。 「何よ……」 そっと手を伸ばして柄を握る。 「軽く振って見てくれ」 ルイズは言われるままに軽く振る。 「あら?」 何だか視界以外の場所、つまり己の背後の様子等が判る気がする。 <やはりな……支配はできないが手にされた時主人とは本体同然に繋がる……か> スタンドの見た物は本体も知覚する、ただそれだけの事だがルイズは使い魔の役目の一つ、感覚の共有が完全ではないにしろ可能と思い満足する。 「ま……剣なんだしちょっと違った事もあるのかもね」 「ほっ」 アヌビス神は少し安心した。 「二つ目。 ご主人様が秘薬とか欲しいっ!探してきて頂戴と言ったら、ぱぱっと探して持って来ること。 これは流石に無理よね。期待もしてないし、勝手に誰かを操ってうろつかれても困るし」 「この世界の知識を持ってないのでどちらにしろ無理だ」 「んで三つ目。 ご主人を守ること。これが一番大事なんだけど」 「ふんっ、任せておけ。 この無敵のアヌビス神に敵う者などいないのだからな」 「へぇーどうやって?」 ぷらぷらとアヌビス神を目の前で揺らしながら、ルイズが冷たい視線を送る。 他人を乗っ取るのは無しと言われ、手にするのは操る事が出来ないルイズである以上お手上げである。 「そ、それはその時に考える!」 自身満々で言った手前引っ込みが付かずに勢い良く言葉を返すが、うっわー、なにこの屑とかそんな感じの冷たいゾクゾクする様な視線が突き刺さる。 「四つ目、 決してスケベしない事」 「三つじゃなかったのか……って、だからそれは誤解だッ!」 「五つ目」 「まだあるのか!」 「掃除洗濯とか出来る?」 「無理言うな!」 「期待はしてなかったわ、言ってみたかっただけよ」 「六つ目」 「え、えー!?」 「わたしの事はちゃんとご主人様と呼ぶ事、呼び捨てとかにしたら塩水に漬けるから」 「……使い魔の心得の時に言わないといけない事なのか?」 「五月蝿い馬鹿犬」 どうやらちびちびといたぶって、先ほどの復讐をしているらしい。 「あんたの事はアヌビスで良いわね?神とか付けるの面倒だし、何か偉そうで腹立つし」 アヌビス神はその1文字が大事なんだよォォォ。とも思ったが、抵抗は無意味そうなので従う事にした。 「で、何時までも抜き身なままなのも不味いと思うんだけど……鞘は?」 「エジプト」 意味不明な単語で答えられた上に、話しても長くなって面倒臭そうだったので、取敢えずは適当な布を巻いておく事にした。 ともあれアヌビス神はルイズの使い魔として認められた。 [[To Be Continued>アヌビス神-3]] ---- #center(){[[1<>アヌビス神-1]] [[戻る>アヌビス神・妖刀流舞]]}