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奇妙なルイズ-4 - (2007/06/21 (木) 00:23:36) の最新版との変更点

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 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内にある、いわゆる中庭である。 建物の日陰になる静かな場所であり、決闘にはうってつけの場所だが、今日ばかりは噂を聞きつけた生徒たちが沢山集まっていた。 「決闘だ!」 誰かが叫ぶ。すると、待ってましたと言わんばかりの歓声が起こる。 「ギーシュが決闘するぞ! ルイズ、ゼロのルイズが相手だとさ!」 ギーシュは周囲の歓声に答えるかのように腕を振る。そして、ルイズの方を向いた。 人垣の中から現れたルイズは、ギーシュから離れた位置で制止し、無言のままギーシュを見ている。 「ふん、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか。しかし僕も女性に乱暴な真似をしたくはないんだがね」 ルイズは黙ったままだ。 「…本当にやる気かい?やれやれ…謝るのは今のうちだよ」 ギーシュが言ったのに合わせて、ルイズは杖の先端をギーシュに向けた。 『戦いの準備は整っている』 そんなルイズの雰囲気がしゃくに障った。 ギーシュは、薔薇の花を振り、一枚の花びらを宙に舞わせる。 瞬く間に甲冑を着た女戦士、いや、女戦士の形をしたゴーレムが現れた。 「今更謝るまいね。この青銅のギーシュ、青銅のゴーレム『ワルキューレ』でお相手しよう!」 言うが早いか女戦士の形をしたゴーレムが、ルイズに殴りかかろうと突進し始めたその瞬間、ルイズは小声で呪文を唱え終わっていた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司《つかさど》るペンタゴン。我の運命《さだめ》に従いし、〝使い魔〟を召喚せよ」 ズドン! 爆発音と共に宙に浮かぶワルキューレ。爆風に押されて転がるギーシュ。そして、手から離れ落ちた薔薇… 薔薇はギーシュの杖だった。 貴族同士の決闘は命がけのもの。しかし、そんなのは既に過去の話。 もっともエレガントな勝ち方は相手を傷つけず、杖を手から落とさせる勝ち方。 爆発によって巻き起こった煙が晴れ、後にはバラバラになったワルキューレと、何が起こったか分からないとでも言いそうな表情で目をぱちくりさせているギーシュだけが残っていた。 「…あ、な、なんだ、また失敗魔法じゃないか!」 そう言って杖に手を伸ばそうとするギーシュに、今度はファイヤーボールの呪文を唱える。 ポン! 今度は小さな爆発が起こり、ギーシュの杖を更に遠くに吹き飛ばした。 ギーシュはルイズに対する認識を改めていた。 観客の中にいるキュルケも、タバサも、今更になってルイズの変化に気付いていた。 「ギーシュ、あなたは杖を落としたわ。それでもまだやるの?」 杖をギーシュに向けたまま構えを解かないルイズ。彼女から発せられる言葉からは、何か得体の知れない”スゴ味”が伝わってくる。 ギーシュはルイズの雰囲気に飲まれ、その場から動くことが出来なかった。 決闘が始まる前は騒がしいほどだった歓声も、今はなく、風の音だけが耳に入る。 ルイズはおもむろに杖をしまうとギーシュに歩み寄り、観衆には聞こえない程度の声で、言った。 「…この”ゼロのルイズ”は…いわゆる落ちこぼれのレッテルをはられているわ。 何度魔法を試しても爆発するばかり。家庭教師だって何人も替わった。 イバルだけの家庭教師に、わざと魔法を爆発させたこともあったわ。 だけど、こんな私にも、貴族としての誇りはあるわ! 自分のために弱者を利用しふみつける人は、けっして貴族じゃない! ましてや平民の女の子を!貴方がやったのはそれよ! 魔法は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねえ・・・だから!」 そこまで言ってルイズは言葉を止めた。 魔法は見えないはずはない。見えない魔法もあれば、見える魔法もある。 自分の言葉がおかしい。 何か別の人の言葉が口から出ているみたいだ。 これ以上言うとボロが出るかもしれない。そう考えてルイズは 「二股かけていた二人と、あのメイドに謝りなさいよ」 とだけ言って、ヴェストリの広場を立ち去った。 その姿はいつになく堂々としていた。 ギーシュも、モンモランシーも、キュルケも、タバサも、ルイズの後ろ姿を見ながら同じ事を考えていた。 ルイズの”スゴ味”の正体は、絶対の自信。 彼女はゼロのルイズ。魔法成功確率ゼロのルイズ。 逆に考えれば ”爆破成功率100%のルイズ”だ。
 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内にある、いわゆる中庭である。 建物の日陰になる静かな場所であり、決闘にはうってつけの場所だが、今日ばかりは噂を聞きつけた生徒たちが沢山集まっていた。 「決闘だ!」 誰かが叫ぶ。すると、待ってましたと言わんばかりの歓声が起こる。 「ギーシュが決闘するぞ! ルイズ、ゼロのルイズが相手だとさ!」 ギーシュは周囲の歓声に答えるかのように腕を振る。そして、ルイズの方を向いた。 人垣の中から現れたルイズは、ギーシュから離れた位置で制止し、無言のままギーシュを見ている。 「ふん、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか。しかし僕も女性に乱暴な真似をしたくはないんだがね」 ルイズは黙ったままだ。 「…本当にやる気かい?やれやれ…謝るのは今のうちだよ」 ギーシュが言ったのに合わせて、ルイズは杖の先端をギーシュに向けた。 『戦いの準備は整っている』 そんなルイズの雰囲気がしゃくに障った。 ギーシュは、薔薇の花を振り、一枚の花びらを宙に舞わせる。 瞬く間に甲冑を着た女戦士、いや、女戦士の形をしたゴーレムが現れた。 「今更謝るまいね。この青銅のギーシュ、青銅のゴーレム『ワルキューレ』でお相手しよう!」 言うが早いか女戦士の形をしたゴーレムが、ルイズに殴りかかろうと突進し始めたその瞬間、ルイズは小声で呪文を唱え終わっていた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司《つかさど》るペンタゴン。我の運命《さだめ》に従いし、〝使い魔〟を召喚せよ」 ズドン! 爆発音と共に宙に浮かぶワルキューレ。爆風に押されて転がるギーシュ。そして、手から離れ落ちた薔薇… 薔薇はギーシュの杖だった。 貴族同士の決闘は命がけのもの。しかし、そんなのは既に過去の話。 もっともエレガントな勝ち方は相手を傷つけず、杖を手から落とさせる勝ち方。 爆発によって巻き起こった煙が晴れ、後にはバラバラになったワルキューレと、何が起こったか分からないとでも言いそうな表情で目をぱちくりさせているギーシュだけが残っていた。 「…あ、な、なんだ、また失敗魔法じゃないか!」 そう言って杖に手を伸ばそうとするギーシュに、今度はファイヤーボールの呪文を唱える。 ポン! 今度は小さな爆発が起こり、ギーシュの杖を更に遠くに吹き飛ばした。 ギーシュはルイズに対する認識を改めていた。 観客の中にいるキュルケも、タバサも、今更になってルイズの変化に気付いていた。 「ギーシュ、あなたは杖を落としたわ。それでもまだやるの?」 杖をギーシュに向けたまま構えを解かないルイズ。彼女から発せられる言葉からは、何か得体の知れない”スゴ味”が伝わってくる。 ギーシュはルイズの雰囲気に飲まれ、その場から動くことが出来なかった。 決闘が始まる前は騒がしいほどだった歓声も、今はなく、風の音だけが耳に入る。 ルイズはおもむろに杖をしまうとギーシュに歩み寄り、観衆には聞こえない程度の声で、言った。 「…この”ゼロのルイズ”は…いわゆる落ちこぼれのレッテルをはられているわ。 何度魔法を試しても爆発するばかり。家庭教師だって何人も替わった。 イバルだけの家庭教師に、わざと魔法を爆発させたこともあったわ。 だけど、こんな私にも、貴族としての誇りはあるわ! 自分のために弱者を利用しふみつける人は、けっして貴族じゃない! ましてや平民の女の子を!貴方がやったのはそれよ! 魔法は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねえ・・・だから!」 そこまで言ってルイズは言葉を止めた。 魔法は見えないはずはない。見えない魔法もあれば、見える魔法もある。 自分の言葉がおかしい。 何か別の人の言葉が口から出ているみたいだ。 これ以上言うとボロが出るかもしれない。そう考えてルイズは 「二股かけていた二人と、あのメイドに謝りなさいよ」 とだけ言って、ヴェストリの広場を立ち去った。 その姿はいつになく堂々としていた。 ギーシュも、モンモランシーも、キュルケも、タバサも、ルイズの後ろ姿を見ながら同じ事を考えていた。 ルイズの”スゴ味”の正体は、絶対の自信。 彼女はゼロのルイズ。魔法成功確率ゼロのルイズ。 逆に考えれば ”爆破成功率100%のルイズ”だ。 ---- //第六部,スタープラチナ #center{[[前へ>奇妙なルイズ-3]]       [[目次>奇妙なルイズ]]       [[次へ>奇妙なルイズ-5]]}

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