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白銀と亀な使い魔-7 - (2007/06/15 (金) 22:57:30) の編集履歴(バックアップ)


ポルナレフはワルキューレに吹っ飛ばされた時、
スタンド無しでナイフだけだとやはりこれが限界か、と思った。

しかし、飛ばされた瞬間、亀の中で矢がまるで『そうなると決まっていたかのように』床の上に落ちた。
そして…その矢はポルナレフの右手に刺さった。

ポルナレフは『これ』を運命が自分にもう一度闘えと命令したのだと受け取った。
そして誓った。この『二度蘇った魂』がまた死ぬまで、運命に導かれるまま、闘い続けると。


「『運命に選ばれた』だって?
な、何を言い出すんだい?さっぱり分からないな。」
ギーシュは嘲笑した。
しかし、顔は明らかに強張っている。
ポルナレフから感じる、先程とは全く違う新たな威圧感に、これまた異質の恐怖を感じていたのだ。
「た、ただ、君はまだやるみたいだね。それだけは理解したよ。」
そういうと震えながら、薔薇をポルナレフの方に向け
「い、いいだろう。もう眠っておけ。この平民がッ!」
恐怖を振り払う様に言い放った。
するとワルキューレ達の足元から槍が出現した。
それぞれがそれを手に取ると、再度六体のワルキューレがポルナレフに向かって突進した。
(素手ですら勝てなかったのに、今度は槍!ナイフと槍じゃリーチが違いすぎる!
ますます勝ち目は無いッ!)
ポルナレフとワルキューレが衝突する瞬間、ルイズは思わず目を背けた。

…しかし槍が刺さる音もナイフと当たる音も聞こえてこなかった。
不思議に思い、恐る恐る目を開けようとした瞬間!
「ルイズー!上、上!」
誰かが叫んだのが聞こえた。
「は!?」
思わず上を見た瞬間!

ボギャアッ!

上から何か金属のような物が降って来た。
「タコスッ!」
「おっぱァアアーッ」
「デッ」
ルイズとその他ギャラリーはそれぞれ顔面に何かが直撃し、思い思いの意味不明な叫びを揚げつつ気絶していった。

一方ギーシュは前方の光景に自分の目を疑った。
ポルナレフを中心とし、その周りに空から降り注ぐ鈍い光沢を持つ物体。
それは自分のワルキューレが『あるはずの無い何か鋭利な物』にスライスされたものだった。
「ぼ、僕のワルキューレが…!?」
ギーシュは完全に恐怖に飲み込まれていた。
(青銅は確かに柔らかいが、あんなチャチなナイフじゃ…
い、いや、違う!あいつは微動だにしちゃいないッ!杖も持っていない!
ま、まさか先住魔法を使えるのか!?)
有り得ない事だが、そう思わざるをえなかった。


「さて、もう六体目まで斬ったが…そろそろ死ぬか?」
ポルナレフは六体目のワルキューレを斬り倒すと言った。

「降伏してもいいんだぞ?
まあ、貴様の美学や家柄がどうだか知らんが…
俺から言わせてもらうと自殺したり降伏するより、
相手の力で死ぬ方がずっと気高い死に方だと思うな…」
「な…何を言いたいんだい?」
「貴様には選ぶべき『二つの道』があるということだ。
名を憂いこのまま闘うか。それとも、命を惜しみ降伏するか、だ。」
ギーシュは悩んだ。
このまま戦えば間違いなく勝ち目は無い。
命を失うかもしれない。
しかし、この男の言っている事は正にグラモン家の家訓である。
名か、命か。二者択一。
ギーシュは考えた。
……………
ギーシュは覚悟を決めると、ポルナレフを見た。
「メイジは杖を失う時、初めて負ける!
僕はそれまで降伏しない!」
ギーシュはポルナレフに対してそう叫んだ。
「それが『答え』か…それでいい…
貴様が選んだ道が『正しい道』かどうかはこれから分かる。」
ポルナレフは微笑んだ。
ギーシュは残ったワルキューレを全力で突っ込ませ、自身は「レビテーション」で空に舞い上がった。
ポルナレフは『誰にも見えない騎士』が左腕に持つレイピアを振るい、最後のワルキューレを先程と同様バラバラにした。
空を見るとギーシュは何かを唱え、杖をこちらに向けると大量の石が突っ込んできた。
ギーシュが唱えたもの、それは石礫だった。
だが当然全て弾き飛ばされた。

(ワルキューレはもう作れない…
だがあいつの攻撃は近くにまで来ないと使えないらしい。
なら、石礫で闘えばいい!当たらないのなら当たるまでやり続ける…!)
ギーシュはまた石礫を唱えた。

ポルナレフには呪文が何を指すのか分からない。
だが、先程から石ばかり飛ばしてくるのをみるともうあのゴーレムは作れないらしい、と理解した。
ならば、とポルナレフは『狙う』ことにした。
(近寄れないなら…『近寄らずに』攻撃すればいい。)
ポルナレフは少し前に移動した。

ギーシュはポルナレフが移動したので、それに照準を合わせようとした、正にその時である。


ぺキィ!


「え?」
ギーシュは何かが折れる音と同時に落下するのを感じた。
まさか、と薔薇を見ると真っ二つに折れている。
「い、いつの間にィィイィ!?」
ポルナレフが最後の一つだけを打ち返し、移動によって相手に一瞬の隙を作らせたのだ。
(あいつが打ち返したのか?まさかそんなことがッ!
それより死ぬ死ぬッ!)
レビテーションが仇となってしまった。
地面に向かって落下するギーシュ。
(さよならヴェルダンデ…僕の愛しい巨大モグラ…)
ギーシュは目をつぶった。

「はッ!?」
ギーシュは目を覚ました。
まだ視界はぼんやりしているが、どうやらここは医務室らしいことが分かった。ベッドの脇にはモンモランシーやマリコルヌがいた。
「あ…えっと…ど、どうしたんだい?」
とりあえずギーシュは彼等に話しかけた。
「どうしたんだ、て…負けたんじゃないか。君が。」
「負けた?何の事?」
「『ゼロ』のルイズの使い魔と決闘したんじゃない!忘れたの!?右腕怪我したっていうのに!」
ギーシュは右腕に巻かれている包帯を見てようやく思い出した。ああ、自分の杖が折られて、それで墜落して…
「あの後ギリギリの所で私が『レビテーション』を唱えたの。」
「君が助けてくれたのか。ありがとうモンモ…「御礼より二股したことを謝って欲しいわ。」
そう言うと部屋から出て行った。
「待ってくれよ!愛しのモンモランシー!」
ギーシュがベッドの上で悲痛な悲鳴をあげた。
「相変わらずだな。」
マリコルヌは笑った。

ガチャリ
「ギーシュ!」
「やっと目が覚めたか、小僧。」
ドアが開き、ルイズとポルナレフ(と亀)が入って来た。
「お蔭様でね。」
ギーシュは皮肉っぽく答えたが、ポルナレフは気にする事なく後ろを向き、亀の中から『一輪の花』を取り出した。
「何だい?その花は?」
「これは月桂樹の花だ。俺のいた国では昔、誇り高い男にそれの冠を送る習慣があってな、それに乗っ取ってみた。そういう礼儀もまた趣深いと思ってな。」
そういうと月桂樹の花をギーシュに差し出した。
「薔薇よりこっちの方が今のお前にはずっと似合うと思うぞ。」
「…ありがとう。」ギーシュは少し笑ってそれを受け取った。


To Be Continued...

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