■小久保 (スルガ編 第六話)
川崎管制センターに務めている技術部員のうちの一人
本来、別部門のしかも偉い方の研究職であり、専門は希望世界の建築である。
ところが面白がって、こっちに席を用意してもらって日々管制センターで
希望世界の様子を眺めている異色の人物である。
こういう人物はえてして煙たがられるが、彼の場合は決裁権を持っていることを最大限活用して
その場で欲しい支援を決めてしまえる他、フレンドリーで専門家の意見をきちんと尊重するので
大変評判が良い。 技術部からは管制リーダーは出ないことになっているが、彼は
実質上のリーダーという立場を確保していた。
架装(車の装備)にあたっての設計手伝いをしているらしい。
意見出しだけ、どんなセンサーがいるとかは、こっちで指定しないと作れないという。
大学時代から希望世界の研究をしていたという。 研究室に残ったものの就職先がなくて困っていたらしい。
大学教授は希望世界に懐疑的で、そんなものはないという立場で研究していたという。
■偽小久保
第三十三話で、フロアに足がついてない様子で現れた。
頬に艶があり、血色が良く、ツヤツヤしている。
どうやら彼女が出来たらしい。しかしその彼女はイトウと名乗っているようだ。
細かいことだが、折畳式携帯電話からスマホに変えたようである。
第四十六話で小久保と女が現れるが、それは戦闘騎の化けた姿だった。
▼異世界の研究
そもそも異世界だと発表したルグヴェール先生が、日本では有名な山師だったので
大幅な工期の遅れをあの先生の珍説のせいだったということにしようとした。
研究職にも人間の好き嫌いはある。 そして小久保の在籍していた研究室は嫌いな方だったという事である。
国内の学者が異世界があるとか言っても、当時の政府は受け入れたかどうか微妙な様子。
結局外国人の意見だから受け入れたんじゃないかという。そういう感じだったそうである。
元々、希望世界の異世界研究は海外で始まったようで、よく外国人留学生が来ているという。
■関連黒目
■根拠ログ
ー「これ、宣伝に使えないかな」
数名、管制センターに詰めている技術部員のうちの一人、小久保が、そう言いながら頭を掻いた。(スルガ編 第六話)
ー小久保は川崎管制センターにいるが、本来はもっと別部門のしかも偉い方の研究職である。
専門は希望世界の建築であった。
ところが面白がって、こっちに席を用意してもらって日々管制センターで
希望世界 の様子を眺めているという異色の人物である。
こういう人物はえてして煙たがられるのだが、彼の場合は決裁権を持っていることを最大限活用して
その場で欲しい支援を決めてしまえるほか、フレンドリーで専門家の意見をきちんと尊重するので
大変評判が良かった。
技術部からは管制リーダーは出ないことになっているが、彼は実質上のリーダーという立場を確保していた。(スルガ編 第六話)
「何してるんですか、小久保さん」
小久保はマニュアルを取り出して顔を近づけて眺めている。
「いや、架装にあたって設計手伝いはしたんですけど、実際どうなってるのか気になって」
「え。そんなことまでされていたんですか」
「意見だしだけですよ。どんなセンサーがいるとか、こればかりはこっちが指定しないと作れんでしょうから」
「なるほど。小久保さんは大学時代から 希望世界 の研究をされてたんでしたっけ」
「ええ。研究室に残ったものの、就職先がなくて困ってたんですわ」
そりゃまあ、今でこそ少しの脚光を浴びているが、元は数十年間、ほとんど忘れ去られていた怪奇現象である。
「大学の教授は希望世界に懐疑的で、そんなものはないという立場で研究してましたわ」
(スルガ編 第十三話)
「それじゃあ、批判的に最初研究してたんですよね」
「ええ。そもそも異世界だと発表したルグウェール先生がこっちじゃ有名な山師だったんで」
「なるほど」
「大幅な工期の遅れをあの先生の珍説のせいだったいうことにしようとしたのかなってね。
まあ、研究職にも人間の好き嫌いはあるってことですわ」
「ははぁ。小久保さんが在籍されていた研究室は、嫌いなほうだったと」
「そうですね。まあ、国内の学者が同じこと言っても、つまりは異世界があるとか言っても、当時の政府が受け入れたかどうか。結局外国人の意見だから受け入れたんじゃないかとか、そういう感じだったと聞いてます」
「国内では小久保さんのところが研究してたんですけど、元は外国人が研究して異世界だとか言ったんですよね。海外の研究はどうなんですか。今も外国では研究とかしておられるので?」
「海外のほうが研究してますよ。よく外国人留学生とか来てましたもん」
(スルガ編 第十三話)
小久保がフロアに足がついてない様子で歩いてきた。
頬に艶があって血色が良く、酒でも飲んでるのかとびっくりした。
しかし、酒臭くはないし、そういう様子でもない。しかし、ツヤツヤしている。
なんだこの人。出社前に猫カフェにでも行ってきたのだろうか。
「失礼な! いや、実はですね、僕彼女できたんですよ」
聞いてもない事を言い出して、艦橋はさらに気分をささくれさせた。
いけないいけない。状況はさておき、他人の慶事くらいは喜んでやらねば僕の社会性が死ぬ。
はぁ、それはおめでとうございますと言いかけて、艦橋は新調した眼鏡が下がるのを感じた。
小久保は優秀な研究職がだいたいそうであるように非モテの要素を満載、いや過積載している。
それにしたって結婚もすれば子供だっていつかはできるかもしれないが、その場合なんというか
もつれた試合のあげくのオウンゴールみたいな結婚になるはずだ。こ
ういう喜色満面という状況になった人を知らない。いや、知ってる。
これはあれだ、夜のお店でカモになっているのに気付いてない顔だ。
笑顔でバックドロップしてやりたいが仕事時間前だ仕事しろと言いかけたところで、小久保がスマホを取り出した。
「この人です!」「いや、そろそろ仕事……」
思わずスマホを凝視した。この顔には覚えがある。
「イトウって名乗ってませんでした?」
「ええ。知り合いなんですか!?」「いえ。勘です。そろそろ仕事時間ですよ。交代前に張り付かないと」
(スルガ編 第三十三話)
小久保と女を見る。張り付いたような笑みを浮かべている。何か歌を口ずさんでいるよう。
「さすが、騎士は優秀だね」「それに比べると石清水君はあまり優秀ではない」
どっちがどう喋ってるか分からぬうちに、二人が溶け出し、二匹に変容した。
四本足の黒い獣の顔に、人間の顔が張り付いている。
「バカだねえ」「バカだねえ」
二匹の戦闘騎が交互に言って笑った。嘲りの笑い。だがすぐに終わる。
一匹の顔、小久保の顔が驚愕で歪んで壊れて、崩れ去っていた。
(スルガ編第四十六話)