■木林の予測
前回、不審火を引き起こしたのは、何者かによる放火であった。
木林は、スルガさんへ何者かの噂を用いた攻撃を察知し、もう一度不審火を起こそうとする
動きがあるのではないかと予測していた。
■根拠ログ
「昔は日本も物騒だった」「なぐさめかい?」
「いや、その時代を生きていた人間の経験の話さ。すぐにでも見回りをした方がいい」ヌマヅさんが、ゆっくり木林の顔を見た。
「なんだって?」「攻撃を受けているかもしれない。不審火がまた出るかも」
ヌマヅさんがジョッキを取り落としそうになった。木林を二度見して、窓に顔を寄せた。
「騎士をやめて占い師にでもなったのかい」
「だから、経験だって。噂話が連発すると、次に実行役が実行を行う。社会不安のあおり方のセオリーだな」
「セオリー?」
「理論だ」
よくわからないという顔のヌマヅさん。木林の表情を見て、ため息。
「そっちも、大変だったんだね」
「今の平和に至るまで色々あったのは事実だ。火事は来る、と思った方がいい」
「あのチビっこい領主が火をつける?」
「こういう時には誰が一番得をするかと考えた方がいい。領主が自分のところに火をつけて得をすることはない」
「子供は癇癪を起すかもしれないよ?」
「確かに。だがそれなら、もっと分かりやすい大騒ぎを起こしているはずだ」
ヌマヅさんと木林は睨みあった。ヌマヅさんは少しだけ顔を赤くして横を見た。
「まあ、筋は通ってるね。分かった。あちこちに声かけて見回り隊を作ってみる」(スルガ編 第二十七話)