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第一回五行リレー小説

2006.04.02 03:35
abendrot

新イベント、五行リレー小説です。

まずは、ルール説明。

1、小説は、この記事のスレッドに書く。
2、一人一回の投稿は、五行まで。(多少の誤差は容認しますが、あまりこの枠を外れすぎないように注意してください)
3、連続投稿は禁止。(※例外:一週間経っても他の人の投稿がない場合は、もう一度だけ投稿してもよい)
4、三人称で書く。
5、質問事項は、全て質問用記事に書く。

最後に重要事項。

6、10回目の投稿までに、誰でもいいからこのリレー小説を分岐させる。分岐の回数は一回だけ。早い者勝ちです。
 (分岐させた方は、新しいスレッドを作り、上の1~5までのルールとそれまでの投稿をそのスレッドに貼っていただけるとありがたいです。やり方がわからない場合は、質問板に質問してください)


ではみなさん、はりきって投稿してください。



野良(--)
 天が抜けたような豪雨、空を裂き鳴り響く稲光。世界を破壊するような雑音も、この場所では鼓動の音ほども気にならない。塔の地下十三階、死の静寂にも似た闇を封じた霊廟では。数百年もの間、足を踏み入れるものもない場では、大気までもが動くことを忘れたまま澱んでいる。
 もはや毒のようなその場所に、一人の男が立っていた。
04/08 01:31

水上 える
 体を覆う、黒く長いローブを揺らしもせず。彼が見つめる先の壁には、額縁に似た朽ちかけた木の枠がある。その中に絵画のように浮かぶのは、年端もゆかぬ少女の形をしたものだった。美しい銀の細工で飾られた、群青の杭で胸の中央を貫かれて、少女は無表情に目を閉じている。残酷だとは思わない。それはそういうものなのだから。04/08 02:08

野良(--)
 男は音も立てずに少女へと近づいていく。虚ろを思わせる細面に浮かべた表情は、我が子に向けるような笑み。伸ばされた長い指が群青の杭に絡みつくと、闇が怯えるように空気を震わせた。だが、男は気にする様子もない。その瞳に宿る感情は、恐怖が入りこむ余地もないほどの歓喜のみ。04/08 09:46

水上 える
 杭をつかんだ腕に力が入る――そのとき少女の唇が、唇だけがゆっくりと動いた。
 『 あ  な  た  じゃ 』
 男は興奮で充血した目をわずかに見開いた。
 『 い  や 』
 男の身体が吊り上げられるように宙に浮いた。警戒する暇もなかった。次の瞬間には、彼は天井に叩きつけられていた。04/08 23:07

幽水晶
少女はまた静かに唇を閉じた。
だが、少女の顔には先刻まではなかったものが表れていた。
笑みだ。
一方、男は呻きながらゆっくりと体を起こした。04/10 17:39

水上 える
「生意気な……」
 この場所で、初めて言葉を口にする。澱んだ空気に、明らかな呼気を混ぜる。
 額から血を流しながら、しかし彼の顔から歓喜は消えていなかった。
「それでこそ手に入れ甲斐があるってものだ」04/10 22:58

幽水晶
眠ったような少女に再度、男が近づく。
男の笑みはどんどん彼の性格そのままを映し出したような笑みに変わっていった。
しかし、少女は相変わらず眼を閉じ、穏やか、あるいは妖艶ともいえるような笑みを浮かべていた。04/12 18:22

水上 える
 二度目に男が少女へ向けて差し出した手には短剣が握られていた。刃に刻まれた、血のような赤い線は文字のようにも見える。
 振り下ろした切っ先を、男は、つややかな銀色の髪の流れる少女の白い眉間で寸止めた。04/13 01:32

野良(--)
 このまま刃を進めれば、抵抗すらなく埋まっていくであろう予感。流れる血の一筋もなく、そのまま自らの腕までとりこまれていく確信。だが、男が手を止めたのは恐怖からではない。浮かべた笑みはそのままに、邪な意思のみが膨らんでいく。
「そう、手に入れてやるぞ。その虚ろなる骸も、終わりなき悪夢の渦も、お前の全てを」
 偶像に捧げる誓いは、汚泥にも似た醜さで、極められたそれはある種の神聖さすら感じさせる。04/13 18:44

水上 える
 真逆の笑みを浮かべた二人の対峙。闇は濃度を増したようだった。静寂の中に、男の呼吸だけが響いている。
 ――すべて? ほんとうにすべてを、あなたはうけいれられる?――
 ふいに、男の意識を侵蝕する声があった。04/14 02:20

凩 時雨
「あぁ、受け入れてみせるとも。そのためだけに、闇に身を染め、汚泥をすすり生きてきたのだからな」  次の瞬間、男は刃をズブリと少女の眉間に埋め込んだ。刃は絵の後ろにあるはずの壁にあたることなく、ズルズルと埋まっていく。少女の白い肌に、流れる血のように刃に刻まれた文字が侵食していった。 そのとき初めて少女は笑みを消し、そして目を見開いた。04/14 09:44

幽水晶
『それなら、それなりの代償を支払ってもらう』
突然、口調の変わった少女に男は反応できなかった。
眼を開いた少女は短剣を何事もなかったようにゆっくりと引き抜いた。
血がゆっくりと少女の顔をつたった。04/14 18:20

野良(--)
 つう、と一筋流れた粘性の高い流体は、眉間から鼻梁を通り唇へと。鮮血は止まることなく、赤い水流は次第に幅を増していく。染み出でる清水は諾々と、その勢いは噴きあがるように。いつしか床を血溜りへと変えていた。壊れた蛇口のように止め処なく鮮血を浴びながら、男は哄笑を上げている。04/16 05:44

水上 える
「……なにを……なにをしているんですか!!」
 背後から悲鳴。若い男だ。雨の中、異変を感じて駆けつけたのだろう、ずぶ濡れだった。
「ふふ、墓守か。思ったより早く現れたな。しかし、もう遅い」
 真っ赤に染まった全身を見せ付けるように、男は両手を広げた。墓守は呻いた。
「愚かな……それは、貴方の身を滅ぼす行為だと、知らぬわけではないでしょうに」04/17 00:17

凩 時雨
「これ以上この身の、何が滅びるというのだ!」
 男は悲痛な色を滲ませ狂笑し、黒いローブの前を開く。露出した肌は、元の色が分からないくらいどす黒く変色していた。上半身にのたくった、気味の悪い文様のような傷が、ドクドクと脈打ちながら血を流し続けている。
「さぁ、見るがいい愚かな男の、最期の足掻きをな!!」
04/17 15:59

幽水晶
 変わっていく。そうとしか、言いようがなかった。
黒かった男の肌は、血で洗い流されたように白く変色していく。その中で、傷だけが赤黒く、つる草のように脈打ち、気味の悪さを増長させていった。
鮮血の雨は、止まない。04/17 18:10

水上 える
 めき、めき、と骨格の軋む音をあげるその身体を見て、墓守はもう言葉が無駄であることを悟る。体の各所から小さな羽のような突起が無数に飛び出して、もはや人間の形ではなくなった男に、憐れみとも怒りともつかない視線をくれた。
 目を見開いたまま、少女は虚空を見ている。何かを探すように。やがて口を開いた。
『さて、お前の≪かたち≫を決めよう』04/19 03:41

幽水晶
『お前が望むものに私はしてやれる。ただし、それは一度だけだ。お前は何を望む?お前にとって、一番正しい〈〈かたち〉〉は何だ?お前の選択がお前自身の最後の〈(かたち)〉だ。未来永劫、苦しむことになろうとも、嘆くことになろうとも、それがお前が定めたお前自身だ。さあ、お前は何を望む?』
男は呻くように声を上げた。それは、笑い声のように聞こえた。そして、最後の選択が始まる。04/19 20:22

水上 える
 この日まで、彼はずっと考えていた。それの存在を知ったそのときから。いや、きっとはるか昔からだ。生まれ落ちたときより、この美しい世界に拒絶されてしか生きられぬ己を知った瞬間から。
 自分の正しい≪かたち≫、それはこの世界を永遠に呪い続けることのできるかたちだ。命に限りある人間では決して到達することのできない、無限の悪意。それを実現するためのかたち――04/22 01:34

野良(--)
 憎悪、憤怒、殺意、失望、怨嗟、嘲笑、憐憫、羨望、死産、断首、去勢、排除、呵責、嗜虐、興奮、溜飲、没収、抹殺、凍結、私怨、私欲、過信、暴力、罪過、悪意……。
 男の内に渦巻いている、あまりにも濃い負の感情が、質量すら伴って心身から噴きあがる。その姿を目にするだけで、密度を増した大気の重みに押し潰されそうだ。
 言葉にならないイメージは、正しく少女に伝達される。
04/22 09:29

幽水晶
『叶えよう』
少女の体が爆発した、ように見えた。だが、実際には突風が少女の体から一斉に吹き出しただけであり、それは、男の周りをぐるり、と取り囲み、ざあ、という枯葉が吹き飛ばされる時に立てる音と似た音を上げた。鉄の匂いが部屋中に充満する。
男は初めて、満足そうに笑んだ。04/22 21:41

水上 える
 音がやんだとき、彼の身体は霧散していた。しいて言えばそのかたちは、風。どこへでも吹いて行き、人の心へ浸入し、悪夢を植えつける――
 役割を終えて、少女は再び目を閉じようとする。しかし、異変が起きた。
『……なぜ、私はこんなところに閉じ込められているの。私の自由を奪った人間を許さない。私は私の意志で力を揮う――』
 男は手に入れてやるといった。つまり、そういうことだったのだ。04/23 22:04

幽水晶
 少女は眼をかっと開いた。その瞳には、先程までなかった光と憎しみが渦巻いている。
『お前は私を受け入れるといったのに――』
悲しげな声とは裏腹に、彼女の表情は堅かった。少女はゆっくりと眼を伏せる。
『お前も私を裏切るのか――』
――お前なぞ、連れて行ってはやらないよ――そんな声が聞こえた気がした。04/24 18:46

水上 える
 けれど、と思う。あの頃とは違う。抗うすべを知らなかった、非力な子供でしかなかったあの頃とは違う。決定的に違う。
 いまや彼女は大きな力を持っていた。そして、狂おしいまでに自由を渇望する心も。
 男の残していった短剣を掲げる。自らの手の甲を切りつけ、流れ出す血に彼女は酔った。この血の力で、彼女はあらゆる≪かたち≫を支配することができる。04/27 03:10

野良(--)
 ゆるゆると、少女は木枠から足を踏み出した。血溜まりがぴちゃりと音を立てる。生まれた波紋は広がろうとして、その脚へと絡み登っていった。鮮血の膜は硝子細工のように細い少女の体を包みこみ、次の瞬間<<かたち>>を作る。真紅の薔薇を思わせる、豪奢華麗な礼装衣。場にそぐわぬ装いに、胸の杭だけが変わらず残っている。群青に指を這わせながら、少女はその口元に笑みを浮かべていた。
04/27 19:40

幽水晶
『おめおめと逃げられてたまるものか。お前の≪かたち≫を変えることはできなくとも、他の方法がある。見ていればいい。お前の欠片全て破壊しつくしてやる。私はもう、我慢などしない』
少女は艶やかに微笑んだ。その笑みは、眠っていたときに浮かべた笑みとは別人のようであり、しかし、少女そのものでもあった。
『手始めに、私を縛っていたここには消えてもらう』04/27 20:48

abendrot
「……で、これがその『聖地』から発掘された、女神様の嵌ってた木枠の破片?」
青空の下、怪しげな物ばかりが並ぶガラクタ市の中でも、群を抜いて怪しげな物を取り揃えた店。店主である老婆の長話が佳境を迎えた所で、彼は飽きた。ため息混じりに、「いらない」の一言を老婆の小さな露天に投げ返す。
「さてと……んじゃ、そろそろ行くか」立ち上がった彼は、背後に控えていた少女の手をとった。05/04 14:25

幽水晶
「……で?あれは本物だったのか?」
少女はきょとん、とした顔で男を見上げると、首をすくめた。
「本物だったら、それが何の意味だって言うんだ?あんなものまで覚えてなんかない」
実に子供らしい仕草で、少女は男にいたずらっぽく笑いかけた。
「ただ、あれを買おうとした者は、大きな損をするんだろうな」05/04 18:31

凩 時雨
「ということは、偽物って事か?」
「そんなことは言ってない。あれは、偽物でも本物でもないものだから、銅貨一枚ほどの価値もないんだよ」少し残念そうに聞いた男に、少女はため息をつきながらも説明した。
「なぜ、あんなものにこだわるのだ? あの老婆の話なぞ聞いてなかったではないか」
「あれ…少し懐かしい感じがしたんだ」そう笑う男の首筋から、気味の悪い文様の様な痣が見えた。05/05 21:16

水上 える
「欲しいのなら手に入れてやるぞ。あの老婆を、誰にも知られずに殺すくらい簡単なことだ」
 少女は、少女らしくない口調で、少女らしくない内容のことを、少女らしい声音で言った。
「いや、殺す必要ないだろ、別に」
 男は律儀に反論した。そして少女も真顔で素直に応えた。
「そうだな。あの老いぼれを殺るくらいなら、私はまずお前を殺したい」05/05 23:28

幽水晶
「本当にお前は物騒な相棒だよ」
男がにやりと笑って言うと、少女は馬鹿にしたような笑みをかえした。
「自分の怒りのせいで自分の『カケラ』を世界中に飛ばしちまった女神様には到底思えんな」
少女の笑みが一気に氷点下まで下がった。彼女は憮然として男に言葉をかえす。
「お前こそ、『風』になりきれなかった出来損ないじゃないか』05/07 18:14

凩 時雨
 少女は、男と初めて会った時のことを思い出す。男はあの時より若く、人間らしさを失ったようにみえた。後ろに結ぶ長い髪は、黒から雪が降りたように白くなり、瞳は血のように紅い。首筋にちらつく文様は昔より広がっているようだった。生きている人間の気が感じられない。まさに風のような
「俺は『風』になれなかったわけじゃない。お前に捕まっているだけだ」
自分の方が今では人間くさい…少女はそう思った。05/09 01:19

水上 える
「何度も言うようだが、それは私のせいではない」
 男から目をそらし、少女は空を仰いだ。実に何度も繰り返した言葉だった。
「お前の願い方が悪かったのだ」
 市の喧騒が届かなくなる辺りまで歩いて、二人は足を止めた。小高い丘の上だ。目的地が遠くに見えた。05/09 02:08

幽水晶
「これからどうする?」
男は少女を見下ろした。少女の目がつと、訝しげに細められた。
「いっちょ、ここで世界征服なんぞをやってみるか?」
男が冗談を言っていることに気づくと、少女は少し笑った。
「冗談じゃない。私はさっさと決着をつけたいんだ。世界征服はお前だけでやればいい」05/09 21:29

凩 時雨
じゃあさ、もし決着がついたら、世界を征服すんの手伝ってくれよ」
 男は冗談じみた声音に、真剣さをわずかに匂わせた。少女は考えるように少し押し黙り、男は静かに遠い目的地を見やっている。
「まぁ、考えてやらんこともない」 少女は、ふん…と鼻を鳴らしながら、さも仕方ないという風情で、憮然として言った。頬が少し、照れたように赤みを帯びていた。 05/11 01:37

水上 える
 しかし反射的に反論の言葉を探し、少女はかぶりを振った。
「だが、ある意味お前は既に征服したと言えるのではないか? お前のまいた悪意のおかげで世界的な戦争が2度も起きた。帝国は内部から崩壊して過去の栄華の見る影もない。それでもまだ、壊し足りないか」
 男は答えなかった。05/11 02:59

幽水晶
「それとも、自分のしたことに恐れをなしたか?フン、肝の小さいやつめ」
男が黙っているのをいいことに少女は言葉を続けた。このまま怒り出すか、それとも萎縮してちじこまってしまうか……。反応が見たかった。が、男の反応はそのどちらでもなかった。
「そうかも……しれないな……」
少女は想像もしなかったことに口をつぐんだ。05/11 20:33

水上 える
 そのとき、傍らの茂みから微かな音がした。男が少女を突き飛ばす。少女が文句を言うために口を開くのと、少女のいた場所に矢が突き刺さるのとが同時だった。逆側の茂みから少女に向かって何者かが飛び出した。不意打ちのつもりだっただろうが、2撃目を捉えらえられない少女ではない。回し蹴りで迎え撃つと、それは地面に叩きつけられて小さな悲鳴を上げた。
 けれど瞬時に立ち上がる。背丈は男の半分ほど。長い体毛に覆われた体と尖った耳を持っていた。05/11 22:38

幽水晶
「……何だ、これは」
少女が見るのも嫌そうに言った。少女が放った思い蹴りの痛みに震えたそれは、赤く血走った目で少女を睨みつけながら、苦しみの呻き声を上げた。
「グガ……ガ、コロ……スコロ……セ…グギ……」
その声の聞こえにくさに男は顔をしかめた。05/12 19:18

野良(--)
「珍しいモノがでてきたな。地念獣か」
「ジネンジュウ?」
 少女の上げる疑問の声を聞きながら、男はそれを掴み上げた。獣が暴れ振り回す四肢に腕を傷つけられるのも意に介さず、じっと血走った目を見やる。
 その瞳の奥に潜む、別の意思を射抜くように。
05/14 19:21

水上 える
 獣はやがて数度痙攣した。覗き込まれた瞳を真ん丸くなるまで開いて硬直する。
「それ以上は止めてくれないかな、白いお兄さん」
 聞こえてきたのは幼い子供のような声だった。最初に矢の放たれた側の茂みから、男に掴まれているのと同じ姿の獣がもう一匹現れた。けれど雰囲気はまるで反対である。もてあそぶような手つきで弓を持ち、その眼には知的な光が宿っていた。05/16 02:25

野良(--)
「誰だ、オマエ」
 問いかけながら、男は掴んでいた獣の首を、ごぎゅり、と嫌な音と共に握り潰した。聞こえてくる子供の声に、僅かばかり不快の念が籠る。
「止めてって言ったのに」
「聞いてやる理由がない。さっさと質問に答えろ」
05/21 18:59

幽水晶
「僕は僕だよ。それ以外に何の定義のしようもない。僕が僕を僕と決めたから僕は僕なんだ。分かるかな?」
少女が顔をしかめた。
「お前、気に入らない。地念獣を使うところといい、そのしゃべり方といい、覚えがある」
「わけの分からん子供の理屈をこねるような奴をお前が気に入ったとは思ってないが?」
男が茶化したように言うと、少女は男を睨みつけた。05/22 18:46

水上 える
 邪気のない声で獣は笑った。
「わけのわからん理屈だなんて、心外だな。だって、コレは貴女の信念のはずだ。女神サマの力は≪かたち≫を変えるだけ。自分でないモノにすることは決してできないんだからね」
 少女はその言葉を無視して、険悪に鼻を鳴らした。
「この町に『カケラ』を悪用している馬鹿がいるというのは本当のようだな」05/23 00:59

幽水晶
「それに、こいつの定義はそこまで甘いもんじゃない。背負う奴には重いんだよ。……潰れちまうくらいにな」
男の深刻そうな顔を見て、少年は怪訝そうな顔をした。
「うるさいなぁ。そんな簡単なモノ、重いわけないじゃないか。大人の理屈にはもううんざりしているんだ。それに、これは貴方の、いや、《風》のカケラだ。好きに使ったっていいじゃないか」05/23 18:46

野良(--)
「その理屈でいうなら、俺が好きにしてもいいワケだ」
 口調は微塵も変えぬまま、男は幼声の獣に掌を向け、
 メキ
 周囲の空間ごと圧縮した。光はレンズを通るように伸縮歪曲し、獣のいた場所を赤黒い点と化す。凍りついた一瞬は次の瞬間には元に戻り、爆ぜるように赤い色を撒き散らしていた。
05/23 19:06

水上 える
 赤い汚れを避けようと身を引いた少女が怪訝な顔をする。まるで獣の断末魔のように、煙が1本空へ上った。くすくすと笑い声が響き、煙は唇を模った。
「じゃあ、女神サマと白いお兄さん、次はご主人様の館で会おうね!」
 煙は再び不定形になり、少女たちの目的地の方角へと舞い上がって見えなくなった。
「厄介なかたちになったもんだな、ありゃ」 男が呻いた。05/26 02:26

幽水晶
「少なくとも、あれは私が定めた定義ではない。もっと他の……そう、別のものだ。別の」
少女が弁解するように言った。男は面白そうに少女を眺める。
「ほう、そうか。それなら、あれは一体何の定義を使ったんだ?」
「少なくとも、と言ったはずだ。それ以上は知らん。・・・・・・だが、あれは妙に覚えがある……。」
少女の眉が訝しげに細められた。何か考え込むようなポーズをとる。05/26 20:16

凩 時雨
「まぁ、あいつのご主人だとかいう奴に会えば、なんか分かんだろ」
男は少し浮かれた声音で、遠くを眺めやる。
「幸い、俺たちの目的地とあいつの主人の館は同じようだ。あいつの《風》が、微かにあの館から吹いてくる」
少女は考えることを丸投げした男を、責めるように睨め付けた。05/26 21:20

幽水晶
「別にあいつにかまけるのは構わんがな」
少女は仕方なさそうにため息をついた。
「地念獣と戦わねばならんのはごめんだ。あいつは……臭い」
男が意外なものを見るような眼で少女を見つめた。少女はジロリ、と男を見返す。やがて男は、クツクツという押し殺した笑いを浮かべて歩き出した。05/27 17:40

水上 える
 こっそりと、しかし懸命に、蹴ったときに付着した獣毛を払い落としながら後を付いてくる少女を盗み見ながら、男は地図を広げた。地図には手書きで奇妙な印がいくつも記されている。色の変わり始めた空を数度、地図と比べるように眺めた。
「だいぶ日も傾いてきたな。今日はもうそろそろねぐらを決めて、明日に備えるとするか。お前も早くシャワーを浴びたそうだし」05/28 04:41

野良(--)
 こくん、と頷き、少女は率先して歩き始めた。無表情は変わらないが、足取りはどこか弾んでいる。
「熱いお湯に広い湯船。薔薇の部屋で湯上りには冷たいワイン。寝巻きはシルクでふかふかベッド」
「とれるか、そんな宿。金ねえのは知ってるだろう。二人分でいくらかかると……」
「お前は馬小屋」
 おいっ、と裏手で飛ばしたツッコミは、先行く少女には届かなかった。05/28 19:34

水上 える
 少女の選んだ宿には実際に馬小屋があったので男は心底不安になったのだが、ちゃんと二人分の部屋を頼んでくれたようでひとまず安心する。普段泊まるのと似たような安宿だった。ただし、少しだけ風呂場が豪華だ。
 着くなり浴室に飛び込んだ少女に苦笑しながら、男は部屋のくすんだ内装を眺めた。壁に背丈ほどもある鏡が掛けられている。そこだけが曇りひとつなく磨かれていて、なぜか胸が騒いだ。05/31 03:41

水上 える
「鏡は、あまり見たくないんだがな」
 呟きながら、男は自分が鏡に映らなくなる位置を探した。白い髪に紅い眼、あの頃とは全く変わってしまった姿に、いまだに慣れないでいる。
 結局、鏡の真横に落ち着き、壁にもたれた。目をそらし続けていたせいで、彼は鏡の中を横切った銀色の髪の少女の影に気がつかなかった。06/11 00:59

野良(--)
「まだ反転する世界を直視できないの。小心者」
 だから、聞こえてきた声に反応するのも遅れた。元から希薄な少女の気配は、ただでさえ感じにくいのだからしかたない。男は自身にそう言い訳しながら、溜息混じりに声を返した。
「鏡を見たらそこに見知らぬ奴がいるんだ。落ち着けるわけがないだろう」
「自業自得。自ら招いた結果なのだから受け入れなさい」
06/11 19:51

水上 える
「言われてすぐにできるものなら、とっくにしてるさ」
 顔を上げ、改めて男は正面を見据えた。だが、そこには誰もいなかった。投げられた言葉は確かに少女の声音だったが、口調が違っていたことに気付いて訝しむ。
 はっとして鏡を振り向くと、少女の虚像だけがにやりと笑い、そして消えた。
「……なんなんだ?」06/12 01:11

幽水晶
「あのぅ……?」
不意に後ろから少女の声が聞こえた。男がギョッとして振り返ると客寄せか何かなのか、かわいらしい少女がちんまりと立って心配そうに男を見上げていた。
「ああ、よかった。人違いじゃなかった。さっきはお兄ちゃんがお世話になりました」
少女は驚愕した男を見ながらニッコリと無邪気に笑った。06/14 18:05

野良(--)
「さっきの奴の手先か」
「手先じゃありません、妹です」
 向けられた殺意を気にもせず、少女は頬を膨らませる。その仕草は保護欲を掻きたてられるような愛らしさだが、男はまるで気にする様子もない。青い血管の浮き出た細腕を、容赦なく少女の首へと伸ばす。見た目にそぐわぬ万力めいた力で、その細首を締めて吊り上げた。
06/16 17:30

水上 える
 きょとんとした顔のままで、床から離れた少女の足が力なく揺れた。次の瞬間、少女は床に落ちていた。何か濡れた音を立てて。
 男は握ったままの拳を不思議そうに見た。離してはいない。ただ少女がすり抜けたのだ。液体をつかんだような感触だけが手のひらに残っている。
「はじめまして。スピラルといいます。」 少女は何事もなかったかのように自己紹介をした。06/17 03:37

幽水晶
「お前、何者だ?」
男は警戒を強めながら聞いた。少女の笑みには尋常ではないものがある。さっきの感触がまだ男の手に残っていた。
「だから言ったじゃないですか。妹ですよぉ。い・も・う・と。……今回は招待状を届けに来ました!」
少女が怪しく笑った。その幼い顔に似合わない奇妙な笑みを。06/18 19:20

野良(--)
 持ち上げた手が宙に消えている。暗く歪んだ宙の穴に。引き抜かれたその手の中には、真新しい白の封筒が二通。蜜蝋の封も瑞々しいそれを、少女は男に差し出した。
「もう少し紳士的な方かと思っておりましたけど。アーク様」
 目を見開く男――アークの姿を面白げに眺め、スピラルはくすくすと可愛らしく笑う。
「今日はこれで失礼しますわ。殺されてしまいそうですから。スフィア様にもお伝えくださいませ」06/20 22:50

幽水晶
 スピラルは溶けるようにその場から消えた。アークは呆然として立ちつくした。
「おい、どうした?それから何だ?そのけったいな代物は」
風呂から上がったスフィアが不機嫌な顔をしてアークを睨みつけていた。大方、ここに立っていること自体が気にくわないのであろう。アークはむっつりと答えを返した。
「招待状、だそうだ。さっきのあのガキの妹だとか言うやつからもらった」06/21 18:14

水上 える
「なんだと?」
 湿ったままの髪をうっとおしげに払って、スフィアは男の手から封筒を取り上げた。まだ開けずに、裏表と数度ひっくりかえしながらしげしげと見る。流麗な手書きの文字で宛名だけが書いてあり、蝋に押された印は、人を小馬鹿にしたような笑顔でハートマークを飛ばすピエロだった。
「ふん、なかなか洒落てるじゃないか」06/22 23:03

幽水晶
「そうか?俺にはそれを書いた奴の悪趣味さが完璧に映し出されていると思うがな」
アークは皮肉った。スフィアくらいの少女ならば喜んでも無理はないが、男、それもいい歳こいたようなアークともなれば気に入らないのも致し方ないことだった。
「……勝手に開けるぞ。なになに、『親愛なるスフィア、アーク様・・・・・・・』」
それを読むスフィアの顔が眼に見えて怒気を孕んだ。06/23 17:57

野良(--)
 怒りに声を震わせながらも、さらに続きを読み上げていく。
「『今回貴殿等を特別に、我が屋敷にて執り行われる舞踏会に参加する事を許可してさしあげます。剣舞う死の舞踏を、どうぞ血吐き肉撒き散らしてお楽しみ下さい。まさか僕からの誘いを断るとは思いませんが、ご都合が悪ければ自刃して果てる事は許します。
                        シュプル=J=ナイブス』」
06/23 21:25

幽水晶
「いい根性じゃないか……握りつぶしてくれるわぁぁ!」
「いや、握りつぶすのはどうかと思うが」
アークの冷静な突っ込みも、スフィアは耳を貸さず、叫び続ける。
「この舞踏会、行ってやろうじゃないか。こんな口をきいた馬鹿者の面を拝んでくれる!」
「金を出すのは、俺なんだがな……」06/28 20:36

野良(--)
 絶叫響く部屋の外には、店主を始め逗留した人々が集まっていた。が、聞くに堪えない罵詈雑言と、それに似合わぬ少女の声が、なにか不吉な予感を喚起したのだろう。誰一人としてパンドラの箱を開こうとはしなかった。
 懸命な判断である。
 かくして、舞踏の前夜は宿の安眠を貪るように過ぎていったのだった。
06/29 19:52

水上 える
「…あのさ」
 少女は鼻歌まじりで服を選んでいる。街に一軒の服飾品店は、泊まった宿のすぐ隣だった。金は無いぞと言い疲れてしまったが、アークは彼女にもうひとつ言いそびれていたことがある。
「あのさ。昨晩はお前が興奮しちまったから、封筒の2通目をまだ開けてないんだが」
 スフィアはなぜかアークに着ぐるみを差し出しながら、首をかしげた。07/03 02:37

野良(--)
 目測で採寸し、頭の中で重ね合わせた結果、お気に召さなかったのだろう。スフィアは使えないヤツ、などと呟きながら、カエルのきぐるみを投げ捨て代わりにパンダを持ってきた。
 ようするに、アークの言う事などまったく聞いていない。
 ぴらぴらと封筒を弄びながら、アークはスフィアの動きを眺めている。
07/04 18:27

水上 える
 パンダとシマウマをまじめな顔で少女は見比べ、
「馬の方がまだ、紳士的に見えるな。しかし……」
 虹色のカメレオンに目をとめ、「ややっ!」とうめいた。
「難儀だな……まあ、いいか。じゃあ、とりあえず勝手に開けてるぞ」
 アークが、宙を舞わせていた封筒をつかみ直した時。その白い紙がもぞもぞと不自然に蠢いた。07/05 23:31

幽水晶
「なんだ?」
アークは不審に思い、封へと伸ばしていた手を止めた。スフィアは気づかぬまま、まだ何かブツブツと呟いていた。
『みーつけた!』
楽しげな子供の声が封筒から響いたかと思うと、封が破れた。07/07 18:06

野良(--)
「なっ!?」
 噴き出す煙が周囲を覆う。瞬く間に広がる混乱の中、かつてない緊張を持ってスフィアが叫んだ。
「なにをするっ! これでは、きぐるみが見れないではないかっ!」
「そっちかよっ!」
 アークのツッコミなど気にもせず、子供の笑い声が響いていた。
07/09 20:01

水上 える
「もしや、この私を出し抜いてレインボー・カメレオンを手に入れようと? させるか!」
「いいからお前は黙れ!」
 視界が悪い。スフィアを見失うことを恐れて、アークは少女へと駆け寄った。後ろへかばおうとして伸ばした手が、しかし空を切る。
「な……おい、スフィア、どこだ?」07/16 06:34

野良(--)
『あはははははははは』
 問いかけに答えるように響いたのは子供の笑い声。思わず開いたアークの手からその源たる封筒が煙の中へと消えていく。同時に、声も白い闇の中へ。
『スフィアさんは一足お先にご招待させていただきますよ。ああ、なんだかこういうのって悪役っぽくていいですよね。癖になりそうだなあ……』
 徐々に遠のいていく声は、最後まで妙に楽しげだった。
07/16 18:41

水上 える
 アークは舌打ちをひとつした。煙が晴れる前に、ともかく手探りで店を出ようとする。このまま店主に見つかりでもして、妙な騒ぎを起こした張本人扱いされてはかなわない。
 ベルのついた重いドアを押し開けた瞬間、彼の体は宙に舞った。背後からの激しい爆風。轟音に耳をやられ、一瞬上下の感覚さえもわからなくなる。
 勘で受身をとろうとしたアークは、自分が地面でない何か柔らかいものの上に落ちたことを感じた。07/24 03:49

野良(--)
 もふもふとした手ごたえから飛び退くように立ち上がる。毛の塊を思わせたそれは離れて見ると、
「……」
 まごう事なき、巨大なパンダのきぐるみだった。体長は優にアークの倍はある。モンスターだと思わなかったのは、顔が明らかにぬいぐるみだったからだ。人の顔ほどもあるボタンの目は、なにかの冗談だとでも思わねば現実として受け入れられない。08/04 15:04

水上 える
「……だ」
 誰だ、と聞こうとして止まる。聞いたところでどうなるものか。もしくは自分はいま、パンダの「ダ」を発音しただけだったのかもしれない。どちらにしろ意味はない。
 きぐるみの片手がゆっくりと上がり、そしていましがたアークが突っ込んだ部分を撫でて毛並みを整えた。手はその後、挨拶をするようにこちらに振られ、「ふにゃん」と女の声がした。08/05 04:38
最終更新:2009年08月19日 22:23
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