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える『月光』

2008.08.12 00:24

水上 える

丸い月が浮かぶ空の下で、男は目を覚ました。
「おや、もう夜か。ちょっと寝すぎたかな」
目を覚ましたのは人の気配がしたからだ。つまり、獲物のにおいというやつだ。
男は盗賊だった。
主にこの丘の一本道を通る旅人から略奪行為をおこなって生活していた。
道からは死角になっているねぐらから、双眼鏡で覗き見る。
「おうおう、女がひとりじゃねえか。襲ってくれって言ってるようなもんだ」
剣を手にして木陰へ移動する。
時を見計らって飛び出そうとした瞬間、女の方が声を上げた。
「盗賊?どこにでも馬鹿は生息するものね」
出鼻をくじかれた形になった男だが、女ひとり相手にひるむことはない。
剣を構えて木陰から歩み出る。
「ああ、見ての通りの盗賊だ。命が惜しかったら……」
いつも通りの口上を述べようとしたところで、女がこちらを少し哀れむような目で見たのを感じた。
ムーンライト。行け」
女が頭上からこちらを指差した。
すると。
いままで男が月だと思っていた、空に浮かぶ丸い光が、
するするとまるでほどけるように、紐状になって降りてきた。
男はやっと気づいた。そうだ、今日は新月のはずだ。
紐の先端が蛇のように口をあけた。
その瞬間に男の意識はもうなかった。
ずたずたに食い荒らされ、そして跡形も残さず消えた。
紐の先端が、名残惜しそうに地面に付いた血を突付いている。
「だめ?まだはらぺこは収まらないの?」
女が尋ねると紐はうんうんとうなづく仕草をした。
「だからってお前を満腹にさせるにはねえ。どうしよっかなあ、軍隊でも襲う?」
女は紐と会話しながら下り坂を降りていった。


野良(--)
ムーンライトが意外に使いどころが難しいんだよな。
名詞だから自由度が高い分、どう使ったものか。08/12 22:40
最終更新:2009年09月28日 01:57
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