2008.07.06 03:13
水上 える
「だめ……だめです。それはできません、マスター」
「できるだろう? 君は十分強くなった。ミハエルを殺せ」
「マスターは、ミハエルにも同じことを言ったのですね? 私を殺せと」
「気づいていたか。そうだ。聖戦士には1人しかなれない」
「しかし、そのために殺し合うことなど無意味です」
「意味はある。私は1人しか必要としていないのだ」
「しかし……」
「そう思うのなら君がミハエルに殺されるだけだ。これ以上言うことはない」
マスターと呼ばれた背の高い男は、振り返りもせず去っていった。
暗がりに少女だけが残された。
「こんばんは、マドモアゼル。殺しに来た」
「ミハエル……!」
「ただし、お前をじゃない」
淡々とした声の後ろで、血の滴る音がした。
「マスター!」
ミハエルの剣が男の腹部を貫いていた。
「お前を殺すくらいなら、俺はマスターを殺す方を選ぶ」
致命傷に見える傷を負いながら、しかし男は三日月の形に口を吊り上げて、笑っていた。
「ミハエル、そうか。君もか。くくく……」
「マスター、なぜ笑う?」
「聖戦士は誕生しなかった……君たちの選択は実に滑稽だ」
「なんだと」
「君たち2人の命のために、全世界の人間が滅ぶのだから」
「マスター、それはどういうことですか!?」
「やがて知るだろう……誰もいない世界で、君たち2人だけで生きるといい」
男は自分の血のつくった海に倒れると、それきり動かなくなった。
野良(--)
冒頭として面白そうだな。形を整えれば短編になりそうだ。07/06 21:04
最終更新:2009年09月30日 01:33