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ミカヅキ『Conference on Five Chairs』

2008.06.17 00:12

ミカヅキX

die Konferenz über fünf Stühle



 それは、お茶会と言う名の御前会議であった。
 精緻な花束の刺繍の美しい絹のクロスに飾られた丸いテーブルの周りには、五脚の椅子が並べられている。どれも形は違うが、一目見てアンティークと分かる代物だ。
 五脚の中でも一段と大きく、素晴らしい細工の彫刻に飾られた背もたれの高い椅子に座るのは、緑がかった長い黒髪の目鼻立ちのくっきりとした若い女性であった。
 そのテーブルを照らす豪奢なシャンデリアも、花の様に美しいティーカップも、全てが彼女を引き立てるためにあるかのように思える。
 彼女は、生まれながらにしてある種の支配力を持った、純然たるエリートであった。
 髪と同じ色の瞳と肌理細やかな肌の美しさは、明らかに黄色人種のものである。
 彼女の名は、五十嵐龍子。
 このお茶会の主催者であり五十嵐財団の正統なる後継者にして、シュトルム・フォン・フユンフ・クロイツェンの若き総帥であった。
 その首にかかるのは、西洋と東洋、どちらの特徴も持った黄金の龍であった。
 蛇のように長い体をまっすぐ伸ばし、蝙蝠のような羽を左右に広げたその姿は、遠めに見ると金色の十字架にしか見えなかった。
 残る四脚の椅子は、一つを除いて、全て埋まっていた。
 席に着いているのは、龍子を除いて全て男であった。
 しかし、共通点はその性別だけで、見事なまでに三人に共通点はなかった。
 左右から押しつぶされたような怪異な印象を受ける、細身で禿頭の老人。
 灰色の上等そうなスーツの上からでも、発達した筋肉がうかがえる軍人のような壮年。
 手入れもされてなさそうなボサボサの黒髪の下から鋭く光る青い瞳が覗く、革ジャン姿の白い肌の青年。
 彼らもそれぞれ、十字架を意匠にしたと思われるアイテムを身に着けていた。
 老人の傍らにある大理石で出来た杖の頭は十字架に蛇が絡みついたものだし、軍人風の男のスーツの襟元には剣で形作られた十字架型のバッチが鈍い光を放っている。青年の革ジャンの背には、それぞれ四方を向いた四つの狼の首が十字架を描いていた。
 残る一つの椅子に座るべき荊十字の少女は、今は遠い異国の地、極東の島国にいる。

「さすがに、百戦百勝とはいきませんな」
 老人が、ひび割れた唇を震わせるようにして言った。
「当たり前よ。天才的な頭脳を持つとはいえ、あの子は神ではないのですから」
 菫色の唇で、龍子が答える。
「だからこそ、ですな」
 意味深に言う老人は、どうやら盲目のようであった。
「で、どうするんだ」
 革ジャンの若者の、薄い薔薇色をした唇がぶっきらぼうに言葉を放つ。
 若者の風貌とは不似合いに艶かしい唇の奥に、鋭い犬歯が覗いている。
「どうもしないわ。あの子はれっきとした荊十字師団の師団長よ。誰があの子の誇りを奪う権利があって?」
 龍子の言葉に、軍人風の男は深くうなづく。
 岩の切れ目のような唇は、無言のままだ。
「じゃあ、今日は何の集まりなんだ?てっきりマイの尻拭いをさせられるのかと思ったんだがな。まさか、本当に茶を飲むだけじゃないんだろうな」
 青年が、不満そうに龍子に噛み付く。
「新しい標的が見つかったのよ」
「へー。今度はどこの博物館だ?それとも金持ちの隠し金庫か?はたまたヒマラヤの山頂か?」
 何が不満なのか、まぜっかえす青年に、龍子は不思議な笑みを向ける。
「相変わらずいい勘してるわね。ヒマヤラじゃなくて、エルブルスよ」
 そう言って、龍子はスーツの男に視線を向けた。
「今回は剣十字師団にまかせるわ」
 壮年の男は、短く刈り上げられた頭を軽く動かし、拝命の意を表した。
全力をもって」
 その声は、太い鉄の塊のようであった。
「ふーん。で、総帥、俺は?」
「そうね・・・」
 龍子は、美しく手入れされた爪を光らせながら、人差し指を形の良い顎に当てた。
「君、最近働きすぎだから、休暇でもとりなさい」
「は?休暇なんざ・・・」
 言いかけた青年は、何かに気付いたように言葉を止めた。
「どこか旅行にでもいってらっしゃいな。今の季節、私の国なんかお勧めよ」
 その言葉に、青年はにやりと犬歯を覗かせると、軽快な動作で立ち上がった。
「その休暇、ありがたく頂戴するぜ」
 青年はそう言うと、扉に向かって歩き出した。
「偶然あの子に会ったら、よろしく言っておいてね」
 龍子は、去り行く狼十字の紋章に声をかけた。
 青年は振り返りもせずに片手を振ると、華麗な部屋を後にした。
「お供は置いていくように言った方が良かったかしら・・・」
 龍子の呟きは、もう青年には届かない。










野良(--)
この長さで一時に五人はやっぱり人数的に多いな。何回か読み直さないと各人の特徴が掴みにくくなる。
内容的には龍子と青年だけにした方が強調できたのではないかな。06/17 20:17

水上 える
別に5人くらいはいてもいいんじゃないかなあ。。
でも性格とかはちょっとつかみづらいかんじはありますね。
ていうか怪しい集団だなあ、って( ̄∀ ̄)06/27 02:06
最終更新:2009年10月03日 01:07
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