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える『瘴風』

2008.06.30 22:51

水上 える

「あら、もうこんな時間!わたくしお茶会に行かなければ」
「はあ!?」
「ではごめんあそばせー。おほほほほほほ」
「ちょ、待て姉貴!……畜生、いつかぱんつ盗んだる」
疾風のごとく消えた姉の祥子に舌打ちをしつつ、俊は現場を見渡した。
「面倒なことはいつも全部俺に押し付けやがって」
死体の山。ばら撒かれた血肉。“回天さま”の通り過ぎた跡。
死んでしまったものはもう元に戻しようがないが、
その場に残った怨念は誰かが浄化しなければならない。
でなければ草木の一本も生えない病んだ土地になってしまう。

  清めたまえ清めたまえ
  光と風 陽と命の雫
  黒き心を薔薇の蕾に
  疼く傷跡を蓮の花弁に
  清めたまえ清めたまえ
  我は虹色の筆で闇に描く者
  汝らが眠るまで祈りの歌をうたう者

錫杖を構えて俊は文言を唱えた。
ドンっと大気から衝撃を受ける。
腕を見ると、丸と三角が組み合わさったような形の傷が刻まれていた。
体に疲労感が押し寄せ、少し立ち眩む。
これで1回。
立ち込めていたどす黒さが、いくらか和らいだように見える。
場が完全に清められるまで、これを数度繰り返さなければならない。
全力使い果たして倒れたら姉貴のせいだからな」

それにしても今年は“回天さま”の出現回数が多い。
それは本来台風のような自然現象で、年に1度か2度、陸地を通り過ぎて
海の上で消滅し、その傷跡も自然治癒力で清められる程度のものだった。
ただし普通の人間には見えず、また人間以外のものには何も作用しない。
それが今年はこれでもう7度目。
そして、ただ通り過ぎるだけならば少しのカマイタチのような風を起こすだけなのだが、
それが同じ場所に長期にわたって留まると、周囲の瘴気を集める磁石のような役割をする。
その上、そこにいる人間たちを切り刻んで殺してしまう。
わけのわからないものに少しずつ体を切られて死んでいくのだ。
その人間たちの強い恐怖が集まった瘴気に重なり、その場に怨念となって残る。
それを清められるのは、先天的にその力を授かった少数の人間だけ。

「だってお清めすると体に傷が残るんだもの。乙女にやらせることじゃないわ」
祥子は一人で座椅子に座り、緑茶をすすっていた。
脇にたくさんの大きなぬいぐるみが並んでいる。
ぬいぐるみの前にも湯飲みがひとつずつ置かれていて、確かにお茶会の体ではある。
他に、畳の上には何冊もの古びた書物が開かれていた。
”回天さま”について書かれた昔の文献だった。
「ちゃんと他にやることはやってるんだからね――あったわよ、“回天さま”を人為的に起こす方法が」


野良(--)
お、また似た系統の流れを。
黒幕ってのがけっこう難しいんだよな、設定が。06/30 23:48

水上 える
次は退魔ブームにしましょうか( ̄∀ ̄07/01 21:29
最終更新:2009年10月04日 23:23
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