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野良投稿『ある朝の出来事』

2008.06.02 20:23

野良(--)


「む……ぅ……?」
 冷たい風に頬を撫でられ目を覚ました。
 布団を被り直そうとして、垣間見えたものに慌てて飛び起きる。
 1LDKの天井に、巨大な茶色い塊が張りついていた。
「な、なんだこりゃ?」
 壁に背をつけたまま呟いていた。見上げたソレは細い糸で支えられた枯葉色の繭。いや、さなぎだろうか。今までにじっくり見たことなどないので実物大ですらよくわからないが、雰囲気は間違っていないだろう。
 少し冷静になると、空気の肌寒さに気がついた。横を見れば窓が割れ砕けている。ここから入ってきたのか。泥酔していたとはいえよくぞ気づかなかったものだ。
 などと、妙なことに感心している場合ではない。
「……どうしたもんかね、これ」
 警察にでも連絡した方がいいのか、あるいは消防か、保健所か? 大家に報せた方がよいのかもしれない。まさか弁償しろなどとは言われないだろうな。冗談ではない。自分はどう考えても被害者だ。ガラスにまみれた室内は嵐の通り過ぎたような惨状に変わっている。テーブルやテレビにパソコン、スーツにステレオにDVDはおろか、ケータイまできれいに砕けている。保険は利くのだろうか? 火災や地震の契約は入居時にした覚えがあるが、さて、この場合は適用されるのか……。
 混乱し頭は意味のない思考を高速で回していたが、やがてそれどころではない異変が起こり始めていた。
 さなぎが、割れ始めたのだ。
「お、おい……?」
 驚いている暇もない。天井にぶらさがった巨大なさなぎは、その茶色い外殻を割り広げ、どろっとした粘液を吐き出していた。
 触れたら解けてしまいそうな錯覚に、すでに壁についていた背をめりこまんばかりに後ろに下げる。
 その間にも溢れる粘液は量を増していた。
 どろり、どろりと絶えることなく、次第に固まりのまま、さらに粘度を高めていく。
 やがて、どさりとなにかが落ちた。
「ひっ?」
 部屋の中央に落ちたソレは、ほとんど固形のぬめりの塊。
 恐る恐る見ている間に、ゆっくりと溶けるように崩れていった。
 粘液は床にどんどんと広がっていき、代わりに中央の塊は、その形を少しずつ明らかにしていった。
 大きさは一抱えほど。ぬめりの中から現れたのは、その輝きに負けない滑らかな肌。白とは別の漆黒の線は、色も鮮やかな黒い髪だ。

 狭い部屋の中央に、身を丸めた小さな少女が転がっていた。

「な、なんだ?」
 あまりといえばあまりな出来事に、混乱は極限にまで達していた。昨夜の飲みから小学校のテストの点数まで、まったくつながりのない記憶が頭の中を駆け巡る。
 ただ、一つ確かなことは、警察や大家には連絡できないということだ。裸の少女と一緒にいるようなところを余人に見られてもいいことなど一つもないだろう。
「ん……むぅ……」
 硬直し阿呆なことを考えている間に、その少女が身を起こしていた。濡れた体を気にするでもなく、猫のように顔をこすり、ひとつ大きな伸びをする。
 一瞬、そのあどけなさに意識を奪われていた。下心などではなく、単純にきれいだと感じたのだ。
 少し気を抜いた途端、こちらを向いた少女と目が合った。
 きょとんとした表情を前に、俺の心には焦りの想いが湧き上がっていた。この状況で悲鳴でも上げられたら、こちらは立派な性犯罪者だ。
 アルタの大画面に映しだされる自分の顔、育ってきた家庭環境を無理矢理にあげつらう評論家、そんな人には見えなかったのに、などとのたまう顔も知らない隣人達のコメント。

 瞬時にそんなことを思い浮かべながら、とにかくと動いていたがすでに遅い。
 少女の薄い桃色の口は、白く美しい歯を見せながら、
「おはよう、おにいちゃん」
「……へ?」
 予想外の一言で、俺の体を盛大に床とダイブさせてくれていた。

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 ネタが思いつかねぇな。書き始めればけっこう早いんだが。


ミカヅキX
おにいちゃんもきっと完全変態したんでしょうね。06/02 20:49

モモと
野良さんにも兄妹ブームが!
そして、これは甘くない共同生活の始まりですか?06/03 00:19

水上 える
そっか。おにいちゃんも完全変態なのか。06/04 01:46
最終更新:2009年10月05日 00:08
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