2008.06.05 01:10
ミカヅキX
『あるいは正直に』
「え?かまきりってさなぎにならないの?」
織絵が、チョコレートを口の端に付けたまま言った。
「ああ」
僕は端的に答える。
「だって、あたし見たことあるよ。クリーム色のやつ。昔弟が田舎で取ってきて、中から小さいかまきりが、うじゃーって出てきたもん」
「それは卵だろ」
織絵の言葉に、僕は蟷螂の孵化を思い出した。
薄い黄色の卵鞘から、零れ落ちるように生まれ出でる、透明に近い儚い色の小さな命の群れ。
「そうなんだ。でもさ、ちゃんとかまきりの姿してたよ、こんな鎌もあったし」
言いながら、彼女は両手首を蟷螂拳のように折り曲げてみせる。
スプーンに付いた溶けたアイスクリームが、ぽたぽたと喫茶店のガラスのテーブルを白く汚す。
「蟷螂は不完全変態だから、幼虫期も成虫と同じ姿をしてるんだよ」
僕はおしぼりで、たれたアイスをふき取りながら答える。
「ふーん。不完全変態って、なんかエロくない?」
「お前のパフェの食い方の方がエロいよ」
「むふ。セクシーってこと?」
「変態的だって事。なんでそんなにぐちゃぐちゃにして食うんだよ」
「だーって混ぜた方が、美味しいじゃん」
織絵の前に置かれた、細長い朝顔のようなグラスの中身は、チョコとアイスが交じり合って不可解なマーブル模様を描いている。
「でも、カレーは混ぜちゃダメ」
「知るか」
俺にはどうもこいつの思考が理解できない。
まあ、外は冷たい風が吹いているのにアイスを食べたいと思うこと自体、俺には不可解だ。
女って奴はそういうもんだ。
悪友の隆ならばそう言うかもしれない。
これもいわゆる社会勉強なのだろう。
そう思わなきゃ、パフェ代780円を払う気にはなれない。
「ねえ、新しくアウトレットできたの知ってる?」
「は?」
「高速乗って、すぐだって。恵理子が言ってた」
「ふーん」
なぜか上目遣いの織絵を、俺はいぶかしげに見つめる。
「あたしも行きたいな」
「お前車持ってたっけ?」
「で、それで終わり」
「そりゃお前が悪いわ」
その夜、隆からの電話である。
「連れてってやるって、なんで言わねぇんだよ」
「は?なんで?嫌だよ」
「ばーか。ホントに行く必要は無いんだよ。とりあえず期待だけさせといてだな」
続く隆の「女の子いる明るく楽しい学生生活・ステップ1」を、俺は聞き流しながらベッドに寝転んだ。
「な、わかったか?」
「もう、めんどくせぇ」
「かー!お前若さがねぇよ、若さが。ん~。ま、次はもうちょっとお前好みの子、選んどくよ」
「もう、いいよ」
「よくねぇよ。お前に彼女が出来るのは、おれの嬉し恥ずかしグループ交際計画には重要なんだよ!」
「意味わかんね」
隆の意味不明の情熱を、理解はできないが、うらやましくも思う。
だから、もう少しこいつの馬鹿な計画につきあってやろうとも思う。
「で、どんなのが好みなんだ?巨乳か?萌え~か?お姉さま?意外とヤンデレ?」
やっぱり、やめとくほうがいいか。
漠然とした不安が、俺の心をよぎった。
ミカヅキX
まったくファンタジーじゃないねぇ。そこが逆にファンタジー。06/05 01:11
水上 える
で、どんなのが好みなんですか?06/05 02:27
モモと
セェクスィー!!
なんかこう、青春チックな感じがいいですね。兄妹のあとは青春ブーム?06/05 20:50
野良(--)
青春かぁ。難しいブームだな。06/05 22:22
ミカヅキX
難しいですね。06/06 00:21
最終更新:2009年10月05日 00:36