2008.06.07 05:05
ミカヅキX
『17』
「なにをしているの?さあ」
彼が両手を差し出して、私を誘う。
「生まれ変わるんだろう?」
低く、優しい声で。
冷たい風のような教室の中で凍えていた私には、そこから逃げ出す以外に方法はなかった。
逃げることを、恥ずかしいとは思わない。
真面目に悩むだけ無駄というものだ。
ただ、逃げ場所が無いのは、考え物だった。
群れからはぐれた小鹿のように、陽の高い街を彷徨ってみても、制服のままで落ち着けるところなんてどこにもなかった。
学校が終わる時間まで隠れていようと辿り着いたのは、高速道路の下にある、小さな公園だった。
こんなところに公園があったなんて、知らなかった。
公園と言っても、すべり台やブランコも無く、ただ手入れされた花壇とベンチがあるだけだ。
その寂しい風景が、なんとなく気に入って、私はベンチに座った。
学校指定のネイビーブルーの手提げから、MP3を取りだし、イヤホンを耳に、スイッチを入れた。
17
大好きな曲だった。
自分だけは特別な存在だと思えてしまう曲だけど、それくらいの妄想は許して欲しい。
そんな風に誰かに言い訳する、寂しい昼下がり。
私、何をしてるんだろう。
その時、頭の中で、彼が囁いた。
「さあ、行こう」
淡い茶色の巻き毛に、子供のような童顔の彼は、私の妄想の産物だ。
「なぜ、さなぎのままでいるの?」
誘惑でもなんでもなく、ただの疑問。
<何故、私は、私でいなくちゃならないの>
それは、裏を返せば、私でいたくないということだ。
私には、私でいる理由が無い。
だったら、どうすればいいというのだろう。
「だったら、行こうよ」
彼が両手を差し出す。
どうすればいいというのだろう。
馬鹿な私でもわかるのは、無理にさなぎの殻を破ってみても、中にはぐちゃぐちゃの何かが入っているだけだ。
青虫でも、蝶でもない、ぐちゃぐちゃの何かが。
でも、それは、何かであって私ではない。
そう。
それが何であれ、少なくとも、私じゃないのだ。
「さあ」
彼の手は大きくて頼もしそうに見える。
私は、その手を・・・
※米※米※米※米※米※米※米※米※米※米
好きな曲から作文してみました
野良(--)
本当に特別な人間はそんなことすら意識しないのだろうがな。06/08 19:11
水上 える
でも青虫も蝶も「私」なら、そのぐちゃぐちゃも「私」なんじゃないだろうか。06/29 02:50
最終更新:2009年10月07日 19:27