2008.05.19 23:48
ミカヅキX
『続・ウレティスの受難』
「あー痛かった」
ネイドが、大したことの無かったような口調でいうので、俺はあきれてしまった。
「めっちゃ腫れてるやん。ここはひっかかれたんか?」
心配そうなタイウの言うとおり、ネイドの童顔は見事なまでに原型を止めていなかった。
大きな目も、こまっしゃくれた口元も、単なる肉の塊にしか見えない。
「お前、しまいにアイヒに殺されるぞ」
「いいーの。僕は根っからの
快楽主義者だから、やりたいことはやめられないの」
俺の忠告にも、まったく耳を貸さない。
「そんなに角砂糖が食べたかったのか?」
「なにが悲しくて、僕が角砂糖かじんなきゃなんないの?僕が馬に見えるわけ?」
「いや、だって…」
「大体前から思ってたんだけど、
ウレティスって鈍感っていうか、デリカシーがないよね」
「そうやな。確かにそれは言えるわ」
お前らにだけは、言われたくない!
叫びだしたいのをなんとかこらえ、震える拳を握り締め、俺は無理矢理笑みを浮かべた。
「ほほう、俺に、デリカシーが無いって?」
「だってさ、今日も僕がアイヒに追っかけられてるのにグースカ寝てるしさ、もうちょっと仲間の危機を感じ取るって言うかさ、そういう優しさがあってもいいんじゃない?」
「そうやなぁ。メシ作らせたら、焼いたら終わり、みたいなもんしか作らへんし、買出し行っても酒の一本も買うてきたことあらへんしなぁ。確かにもうちょっと、仲間のこと気にしたほうがええんとちゃうかな。」
勝手に着いてきたくせに、何が仲間だ。
嫌ならとっとと帰れ!
そんな俺の胸中を察するはずも無く、ネイドとタイウは俺がいかにデリカシーが無いかを嬉々として語り合っている。
「で、自称魔鏡使のネイド君、馬みたいにかじらないんだったら、何故アイヒの角砂糖を盗んだんだね?いくら仲間とはいえ、盗みは良くないんじゃないかな?」
「なにそれ?嫌味のつもり?アイヒのいう田舎騎士ってのも、案外的を得てるんだね。そんな野暮ったい嫌味、僕なら死んでも口にしたくないよ」
俺は、拳の震えがぶり返すのを感じた。
「それに、僕は盗んだわけじゃないよ。ちゃんとユーファに頼みにいったもん。そしたらユーファは駄目だって言わなかったんだ」
「それは詭弁だろ」
「詭弁?何それ。無理して難しい言葉を使いたいの?あの角砂糖は、アイヒのじゃなくて、本質的にはユーファのものなんだよ。そんなことにも気付かないの?アイヒが怒っていたのは、角砂糖を盗られたからじゃなくて、ユーファにてづから角砂糖を上げる機会がなくなったから怒ってたんだよ。それがとても悲しいことだっていうのが分かったから、僕は黙って彼女の気の済むようにさせたんじゃないか。それをなんだよ、盗んだって。そんなに人を悪者にしたいわけ?僕になんか恨みでもあるの?」
黙って聞いてりゃ、ペラペラと。
こんな痩せっぽっちに、ここまで言わせていいのか?
いや、よくない。
一度、田舎騎士の拳を味合わせてやるべきなのだ。
そこに絶妙なタイミングで、タイウが割って入ってきた。
「まあまあ、ええがな、ネイド。田舎騎士にデリカシーを求めたワシらが悪いんやって」
タイウの恐ろしいところは、これで本気でフォローしていると思い込んでるところだ。
しかしまあ、こいつの丸いふやけてにやけた顔を見て、怒っているのが馬鹿らしくなったから、効果はあったと思っていいかもしれない。
「でもネイド、ほんまに角砂糖で何するつもりやねん?」
「くくくく」
トレードマークでもある悪魔的な笑みを、ネイドは浮かべた。
まあ、腫れあがった顔では、悪魔的もなにもあったもんじゃなかったが。
「美味しくて、あまーいソースを作るんだ」
「ソースやて?」
「そうだよ。角砂糖を砕いて、水をちょっと入れて、焦げ過ぎないように煮詰めると、すっごく美味しいソースができるんだ」
「でも、甘いんやろ?」
「まあ、タイウはダメかもしれないね。甘いから」
「甘いんかー」
「甘いんだ」
馬鹿か、こいつらは。
何が、甘いソースだ。
そんなもん作る暇があったら、兎の一匹でも捕まえて来い。
俺は、こいつらと付き合う最善の策を選んだ。
即ち、その場を離れたのだ。
「ねぇねぇ、タイウ、
パンドラって知ってる?」
「なんや異国の神さんちゃうんか?」
「まあ、そんな感じかな」
「箱がどうこうっていうやつやろ?」
「さすが、伊達に元僧兵じゃないんだね」
そんな会話が、背後に聞こえる。
まあ、仲良き事はいい事だ。
そういうことにしとこう。
俺は、無理矢理そう思い込んで、森に分け入った。
当分はこの野営地を拠点にして行動しなくてはいけない。
もう少し、馬鹿どもの餌集めをしておく必要がある。
二人の会話が途切れ途切れになって、やがて聞こえなくなる。
ほっと一息ついた瞬間だった。
「ユーファ!駄目!」
俺に安息の地はないのか。
嘆きながら、アイヒの声がした方向に向かう。
茂みを掻き分けると、エメラルドグリーンの美しい妖獣、いや神獣と呼ぶべきか、麒麟のユーファライズがいた。
その首を、涙を浮かべながらさすっているのは、麒麟に負けない美しさと乙女のあどけなさを持った、アイヒだ。
反射的に声をかけようとしたが、数々の悪夢のような思い出が脳裏をよぎり、俺は思い直してその場に背を向けた。
「あ、ウレティス!」
遅かった。
「ウレティス!ちょっと助けて!ユーファが
カタツムリを食べちゃったの!」
俺は、大きく息を吸い込んだ。
そして、その場を一目散に逃げ出した。
無理です。
ごめんなさい。
「ちょっと、ウレティス、何で逃げるのよ!ウレティスの馬鹿!」
とにかく、俺をしばらく一人にさせてくれ!
モモと
かたつむりを食す……エスカルゴ?
いや、料理ならともかく本物の味は一体……。05/20 23:14
野良(--)
うわー、ネイドうぜぇ(笑
パンドラはなんとか入れたという感じだな。やはり固有名詞は難しいか。
かたつむりぐらいなら食っても問題なさそうだけどな。
雑食を美しくないと思っている感じなのかな。05/20 23:27
ミカヅキX
エスカルゴ・・・生涯にまだ一回しか食した事ないですね。味は、ガーリックバター味のゴムみたいな・・・。
雑食・・・そりゃあもう、アイヒにとっては。麒麟は何も食べないでも大丈夫なんですけどね(俺設定05/21 00:07
水上 える
かたつむりっておいしそくないですか?わくわく。麒麟が食べたくなる気持ちがわかります。
ていうか角砂糖を溶かして煮詰めても、砂糖水であってソースにはならないんじゃ…あ、カラメルになるのか。。05/21 01:01
最終更新:2009年10月17日 23:52