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える『パンドラごっこ』

2008.05.23 04:40

水上 える


かたつむり食ぁ~べたっ!」
その掛け声に、意味はあるような、ないような。
先週、田中君が校庭の花壇にいたかたつむりを冗談で口に入れてから、
その単語はこのクラスでなんとなく流行っていた。
やっているのは走り幅跳びのようなもので、遠くへ跳んだら勝ち、というだけのものだ。
「俺の勝ちーー!」
「えーいまのズルーー!線踏んでたよーー!」
「踏んでねーよ!」
一言一言、全力で叫ぶ同級生を、幼いな、と思いながら僕は鉄棒に寄りかかってぼんやりと眺めていた。
小学校の放課後の校庭。そろそろ帰宅しろとベルが鳴ってせかすだろう。
「審判!俺踏んでねーよな!?」
伊藤君が僕に向かって吠えてくる。
「ああ、ええと、ちょっと踏んでたかな」
あまり見てはいなかったのだが、そんな気がしたので僕は答えた。
「ほらーやっぱ踏んでるーー!伊藤の反則負けーー!やーい!!」
必要以上に近藤君がはやし立てる。田中君も負けじと大声で笑う。
「ちっくしょーー!!だったらお前ら!このあとパンドラごっこするぞ!」
「何ムキになってんのー!でもいいぜーー!」
パンドラごっこ?聞いたことのない単語だった。また伊藤君は新しい遊びを思いついたのか。
「パンドラごっこって何?」
僕が聞くと、伊藤君は偉そうに笑った。
「こないだ道徳の時間で、パンドラの箱の話聞いたろ。それだ!」
「それって言われても」
「暗くなった後の学校に忍び込んで、あけちゃいけなさそうな箱を開けるんだ!」
「ふーん」
「最初にいちばん『希望』っぽいもんを見つけたやつの勝ちな!」
「うーん、いまいちよくわかんないけど」
「やればわかる!な!」
要は、夜の学校に忍び込んで、宝探しごっこをすれば楽しそうなんじゃないかといったところか。
「よし!じゃあ校門がしまる前に校舎内に隠れるぜ!」
「いえーい!」
「おしゃー!」
無駄にテンションが高い3人に、僕は「おー」と適当な掛け声を乗せて、ついていった。
内心、複雑な思いを抱きながら。

この学校には、本当に、開けてはいけない箱が眠っている。

そして、それを守るために僕はここにいる。

まだ小学2年生の彼らに見つけられるとは思わないが、万が一ということもある。
まあ、でもシミュレーションをするとすれば、こうだろうか――
理科室に侵入し、人体模型が動くのを見てびびって逃走。
職員室前の鏡を見て、自分の首から上が映らないのを見てまた逃走。
屋上までのぼれればたいしたものだ。
少女がにやりとわらって、眼下のプールへと飛び込む。悲鳴。プールに広がる赤い色。
階段の数が1段変わるのなんかには気付かなさそうだが、
どこまで降りても2階がずっと続くことにはきっと恐怖を覚えるだろう。
いわゆる学校の7不思議というものが、ここでは人為的につくられていた。
その箱を守るためのトラップとして。
実際仕掛けられているのは7つきりではない。
開発者のロジャーが嬉々として設計している姿を思い出して僕は半笑いになった。
彼の快楽主義の産物ではないかと思えるほどのその数、108個。
どこでどんな風に驚いたふりをするのが自然か、と考えながら僕たちは校舎にもぐりこんだ。


水上 える
ためしに投票フォームつけてみたら感想が数値化されていいんじゃないかと思ったんですけど…
あれ、これ文末に持ってこれないのか。不自然だな。。05/23 04:44

野良(--)
内容としては面白そうだ。広げ方次第だな。
アンケートをつけるなら真面目にしたほうがよいと思うが。
そこでネタに走っても意味があるまい。05/23 22:44

水上 える
ネタに走らざるをえない性分で…05/24 01:25
最終更新:2009年10月19日 01:26
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