2008.05.24 03:04
ミカヅキX
『the Flower Maidens in Mojya-Villege』
「パンドラの箱?なんだそれは?」
狩人のファルラックが、赤くなりかけた顔で尋ねた。
「ふふふ、知りたいか?それはな、この世の全てが入っているといわれる・・・」
問われたゴードンが、にやりと口を開く。
「おーい、親父!もう一杯」
「おいクレス、俺の話を聞けよ」
「聞いたってわかんねぇよ」
椅子を傾けながら杯を重ねているのは、筋肉質の農夫、クレッセンであった。
「いや、だからさ、何か分からないところがいいんじゃないのかな」
とりなすように言ったのは、モンタスター。モジャ村一のマッチョである。
「パンドラ・・・パンドラ。んー聞いたことがあるなぁ」
ゴードンの弟、つまり村長の次男であるイーサンが言う。今夜はまだそれほど飲んでないようだ。
「だろ、さすがわが弟。モジャ村一の物知りだ」
「ばーか、モジャ村一はバアさんに決まってんだろ。めったな事言うと呪われるぜ」
嬉しそうなゴードンを、クレッセンが混ぜっ返す。
「呪いなんて・・・。まあ、敬老の意を表して訂正するのにやぶかさではないがな。ごほん。モジャ村二番の智恵者の、わが弟よ。で、パンドラって何なんだ?」
「何か知らないで、高い金を払うなよ」
ファルラックが、しごく冷静に言う。
「うるさいファル!今イーサンが喋ってるだろ」
「んー確か、パンドラの箱には一つの宝と・・・」
「ほうほう宝と」
「千の闇が入っているっていう民話があったような」
「くくく」
唖然とするゴードンの顔に思わず笑い声を上げたのは、菓子作りが趣味のムーシュであった。
「あ、ムーシュさん、いたんだ」
「いたのかはひどいな、スター。あ、親父さん、こっちにも一杯、自慢のエールをおくれよ」
今宵のモジャ村唯一の酒場は大盛況だ。
何とはなしに、村を担う青年達が集まったのだ。
まるでモジャ村青年団の寄り合いであった。
狭いカウンターで、馬鹿話に花を咲かせている父たちを、どこか大人びた視線で見ているのはクレッセンの娘、ルティアであった。
程よく酔いがまわり、上気した肌と潤んだ碧い瞳が、彼女をいつも以上に美しく見せていた。
彼女の前には二つの杯が置かれている。
アラックからもらった、精緻な木彫りの大振りなジョッキと、鍛冶屋からもらった、美しい文様の浮き出た金属製のゴブレットである。
どっしりしたエールをジョッキで、甘めのエールをゴブレットで、交互に飲むのが、彼女の流儀であった。
ドアにつけた大きなベルが派手な音を立てる。
店内の視線が集中した先には、注視を浴びてすくみあがったマルコルがいた。
「おお、マルコル、お前もきたのか!こっち来いよ!」
マルコルの怯えた風情を気にする風もなく、クレッセンがドラ声で怒鳴る。
「あ、あの・・・」
「おーい、親父さん、マルコルさんのジョッキを!あとカタツムリの香草焼きも!」
モンタスターが、マルコルの返事を待たず注文を叫ぶ。
諦め顔のマルコルが、悄然と座に加わるのを、ルティアは楽しげに見ている。
モンタスターとクレッセンは、意外といいコンビかもしれない、とルティアは思った。
背は低いが筋肉の塊である父と、長身でこれまた筋肉質のモンテスター。
筋肉以外に共通項のない二人だが、不思議と馬が合うらしい。
いや、筋肉さえあれば、男同士は分かり合えるのかもしれない。
モンテスターが村に帰って来た頃、モンテスターとクレッセンは何度か衝突していた。
実際は父クレッセンが勝手に突っかかっていっただけであったが。
きっと、腕相撲で負けたことが悔しかったのだろう。
それがいつの間にか、仲良く杯を傾ける間柄になっている。
男って、なんて単純なんだろう。
羨ましくもあるが、馬鹿らしくもある。
馬鹿な男達の卓は、さらに盛り上がりつつある。
哀れなのはマルコルだ。
声をかけたクレッセンにはすっかり無視され、両脇をイーサンとムーシュに挟まれ、右からは新しいキノコ菓子のレシピを、左からは意味の分からない民話学なるものを延々と聞かされている。
ただ、うなづくしかないマルコルの表情は、不思議と嫌そうには見えない。
いつもは冷静なファルラックの顔がかなり赤くなっている。
酔いだけではなさそうだ。
こちらも顔の赤いゴードンが、自分の父親の批判を声高に語っている。
今はまだモンテスターが上手くとりなしているが、このままだと、村一番の村長派であるファルラックが黙ってはいないだろう。
クレッセンと眼があう。
眉をあげる微かなサインに、ルティアは立ち上がった。
「おう、ファルラック、一曲やれよ」
クレッセンが、やや強引にファルラックの腕を引く。
「え?ああ」
ファルラックは、軽く柔軟をするルティアをみてクレッセンの意図に気付いた。
「確かに、おしゃべりもいいですが、娘さんの踊りも捨てがたいですね」
ファルラックは言いながら、壁に立てかけてあった細長い包みを開いた。
布の中から現れたのは、弓とよく似た形をしている。
昔からこの近辺に伝わる、狩人の持つ弦楽器、弓琴であった。
弓琴には、一弦のものと五弦のものがあり、ファルラックの持つそれは五弦であった。
ルティアは、すっと酒場の中心に歩み出た。
ファルラックは、彼女の少し後ろに椅子を置き座った。
「姫。今宵は何を奏でましょうか?」
「なんでもいいわよ」
「では、ルティアの美しさに敬意を込めて、モジャ村の花乙女、を」
ルティアは軽くうなづいて、両手をまっすぐ上に向かって掲げた。
両掌は外に向け、顔は心なし斜め下に向ける。
空に向かいまっすぐに咲く、春の花のポーズであった。
「モジャ村の花乙女」とはこの村に伝わる伝承歌と、それにあわせた民族舞踊であった。
「いいぞー」
「ルティアー!」
周囲の掛け声に負けない大きさで、弦がかき鳴らされた。
ルティアの肢体も激しく動く。
長い金髪がランプの明かりで扇情的に輝き、ルティアの美貌は歓喜の表情を浮かべる。
この歌は、春に芽吹く強い生命の力を称えた、豊饒への祈りの歌であった。
旋律は激しく、また陽気に響き、ルティアの四肢は、咲き誇る花と沸き返る生き物達を表す。
旋律と踊りに合わせて、テーブルやジョッキが打ち鳴らされ、だみ声の掛け声が乱れ飛ぶ。
本当は、祈りと祝福を込めた美しい歌詞を村の女達が歌うのだが、今夜は原始的な旋律と快楽主義的な踊りが、男達の純真な魂を揺さぶっている。
ルティアの天才的な踊りと、ファルラックの素晴らしい演奏が、酒場を一つにした。
こうして、モジャ村の夜は、平和に更けていくのであった。
酒場の外では、月夜の散歩を楽しんでいたロードライが、騒音に顔をしかめ、自分の体毛と同じように暗い闇の中へと消えていった。こんな騒がしい夜は、さっさとアラックの髭に潜り込みいくのであろう。
でつでつでつでつでつでつでつでつでつでうでつでつでつでつでつでつでつでつでつでつでつ
一気書きしたので、間違いはかんべんな!
髭の事もまったくノータッチだぜ!
書いてておもしろかったけど、イベント起こすのは大変そうだぜ!
野良(--)
さすがにこんだけ登場人物がでてくると理解しきれんな。
一度に出して把握できる人数は五人ぐらいかもしれん。05/24 20:33
水上 える
そう、筋肉。男は筋肉でわかりあうものなのです…!05/25 01:00
最終更新:2009年10月19日 01:56