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える『なかのひと』

2008.05.27 04:08

水上 える

ふざけるな!と誰かが叫んだ
私たちは長い間この箱に閉じ込められたままでいる
外に出られる日は来るかもしれないし来ないかもしれない
天使がラッパを吹くまで待ち続けるしかないのだ

時間が進むのがまるでかたつむりのようだと
誰かがぽつりとつぶやいたけれど
かたつむりだって確実に前に進んでいる分だけ
箱の中の私たちとは違うのだ

幼い私は幼いままの姿でずっと箱の中にいた
暗く冷たく黒く澱んで水の底のようでいて土に埋められているようで
動けないままうずくまっていたその日々が
やがて終わりを迎えるときが来たのだ

箱は開けられた!
箱は開けられた!
快楽主義の兄は真っ先に飛び出てあっという間に見えなくなった
きっと腐敗と堕落を振りまいて踊り狂うのだろう

少し遅れて私も飛び出した
箱を開けた女性が慌てて閉めようとする手をすり抜けて
見たこともない明るい世界へ自由を求めて
その女性の名がパンドラだということを知ったのはずっと後のこと

人間は面白かったそしてやさしかった
私が泣いていると一緒に泣いてくれた
私が虚無を抱くと一緒に虚脱してくれた
私が死を想うと死んでくれた――そのとき私は自分が災厄だと知ったのだけれど

もう箱の中には戻れない


野良(--)
箱の中からの視点というのは新しいな。
これは形を変えれば広げられるかもしれん。05/27 22:09

ミカヅキX
 ・・・などいない!
っていうのは、置いといて、陰のある悪役の設定として使えそうですね。05/27 23:48

モモと
こーいうのがすきでふ。
戻れない。っていうと戻りたくなるのが人間の性。ああいけないわ…05/28 01:24

水上 える
さりげなく兄妹だということにだれかつっこんでください(笑05/28 01:32

ミカヅキX
あ、兄妹か。05/28 01:59

モモと
本当だ、兄妹ですね。全然気づかなかった・・・05/28 20:50
最終更新:2009年10月19日 02:47
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