2008.05.10 00:50
abendrot
「そんなに、知りたい?」
ケータイの向こう側、彼の怯む様子が「聞こえた」。
どんな顔をしたのかも、「聞こえた」。
全く、最近の電波事情は相当良くなった。一昔前まで、雑音と格闘していたというのに。
「ねえ、本当に知りたいの?」
彼は、とっても盲目的。断っておくけれど、これは彼に対する最高の褒め言葉。
以前友人にそう言ったら、貴女らしいわ、と腹を抱えて笑われた。
おそらく、彼女は勘違いしたのだと思う。彼は「私に」盲目的なのだ、と。
私だって、そこまで自意識過剰にはなれない。なれといわれても、無理。
第一、私と彼の関係が、女王様と下僕に見えるの? 年中無精ひげ生やしていても違和感なさそうな彼を、私が顎で使っているとでも?
あ、でも………そうね、……今度やってみようかしら。意外と面白いかも。
「え? なぁに、それ。そんな曖昧な返事ではぐらかすの?」
マグカップに並々と注がれた、温めの紅茶。私の手には、角砂糖を乗せたティースプーン。
ほんの少し。ほんの少しだけ、ティースプーンを紅茶を沈める。
「そ。それを聞きたかったの。本当、焦らすのが上手いんだから」
一瞬で、純白の立方体が茶褐色に染まり、崩れた。
「それじゃあ、教えてあげる」
――次元の超え方を。
彼って、ホントに盲目的だわ。私が滅ぼしてしまった、あの世界に。
帰ったところで、あそこにはもう何もないのに。
ティースプーンの上にある、崩れた角砂糖は二度と純白には戻らない。
だったら、このまま冷めた紅茶の中で永遠に溶けてしまった方が――
トッ……プン
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彼女はきっと、この世に存在する「本物の悪女」の一人ですね(笑
野良(--)
これは上手いな。次元の超え方、という一言で世界観をガラリと変えている。
角砂糖の使い方もいいな。確かにあれがお湯に溶けていく様は、なんか感じるものがある。
名詞は比喩で使えば色々と広げられそうだ。05/10 01:16
水上 える
あ、おもしろい。ちゃんとファンタジーだ( ̄∀ ̄
こういうの読むと夕さんも悪女に思えてくるよーぽろりん。05/10 02:27
モモと
悪女が最初魔女に見えました・・・。ある意味魔女ですけど。
「彼」が次元を超えたら、どうなるのかが気になります。
え、消失……?05/10 21:44
ミカヅキX
彼は何を失って、何を得るのでしょうか。
文頭は現代物なんですが、読後感に広がる世界は永遠のチャンピオンみたいですね。05/11 02:12
最終更新:2009年10月23日 02:51