2008.05.16 02:59
水上 える
「う、裏切ったのか、お前……」
男は椅子から崩れ落ち、床に転がったままかろうじて視線を上げた。
「角砂糖に毒を仕込んでおいた。あんたはいつも2つ入れる、俺は入れない」
冷静に彼は残りの角砂糖を処分し、新しいものと入れ替える。
「俺を殺したところで組織は揺るがない……ああ、組織はお前を許さないさ……」
「あんたみたいな盲目的な信者ばかりだと思うなよ」
男は一度痙攣し、そして動かなくなった。
「死因は服毒自殺。組織についていけなくなったが逃げられないと知って、ってところだな」
彼は自分の証拠を丁寧に落とし、遺書の偽装をして、そして部屋を出た。
「しかし、実際のところ、自分のやったてきたことの重さを知らないまま死んだのは、幸せだったのかもな」
男は組織を清廉潔白だと信じたまま逝けた。組織の冷酷非常さを知らないまま。
「知らないで幸せだろ、お前を殺したのが組織の指示だなんてね」
彼はしばらく町を歩いた。人を殺すのははじめてじゃない。
といって、罪悪感のかけらもないほど慣れているわけでもなかった。
いつもの教会の前で立ち止まる。
「じゃ、懺悔でもしてくるかな」
扉をあけると、中央の通路に立つ人影があった。逆光が照らす。
黒いコートにシルクハット。片手に杖を持ち、片手は伸ばしたあごひげをなでている。
「まだ、この仕事を続けているのですか」
野良(--)
角砂糖を使ったトリックというのは古典的だがよいな。
これはこのまま後の展開を考えられそうだ。05/16 19:22
最終更新:2009年10月23日 03:40