2008.04.19 19:04
水上 える
「ま、まさか完成品なのか……?」
カウンターの上には1体の人形が置かれていた。薄暗いアンティークショップ、ここは彼の行きつけの店だった。
彼の名前は半田風架。
若いくせに祖父の影響で骨董品などの趣味を持つ、それ以外は普通の大学生に見える。
人形はきれいな碧色の瞳を半開きにして、豪奢なベロアのドレスを身にまとい、静かに座っている。
知る人ぞ知る人形だった。
人形師スレイブレインが生涯に作った数千体の人形のうち、ほんの十数体、「完璧な人形」があったという。
その人形は、まるで人間と同じように、会話し、思考し、感情を持ち、歌い踊った。
しかしスレイブレインは、その人形たちを数百個のパーツに分解し、世界中に散らせた。
数百年の時がたち、マニアたちは再度人形を完成させようと、そのパーツを探し求めた。
「いいや。1パーツだけ足りない」
「どのパーツが?」
「≪引き裂かれた記憶≫だ。だからこいつは、喋れるし踊れるが、一切何も記憶ができない」
「そうか。それでも……すごいじゃないか。10万……いや100万でもきかないか。俺にはとても……」
「金額じゃない。私は無償で君にこれを渡してもいいと思っているんだ。そのかわり、なにがあっても≪引き裂かれた記憶≫を手に入れ、完成品を私に見せてくれると約束してさえくれれば」
「そんな……そんな約束……?」
「もちろん何年かかっても構わない。これはそういう代物だ、私が一番よくわかっている」
彼はつばを飲み、再度人形をまじまじと見た。
「いや、正直に言おう。私ははやいところこれを手放したい。これは、相当やばいルートから、たまたま、偶然、ここにたどり着いたものだ。所有していれば、この先どんな危険が身に降りかかってくるか、わからない。それでも、私は、君になら託せると、信じているんだよ」
「そういうこと、か」
「この先君に起きる事柄に、私は一切責任を持たない。そう、そういうこと、だ」
「わかった。こんな機会二度と巡ってくるもんじゃない。俺はこいつをもらうよ」
「そうか。成立だな」
店主はそっとぜんまいを手にとり、人形の背に差し、ゆっくりと巻いた。
人形は目を開き、立ち上がった。
まるで生きているかのように、じっとこちらを見てくる。
「自分の名前も覚えていないよ。好きな名前で呼んでやってくれ」
「何も記憶できないんじゃ、名前をつけても意味がないんじゃ?」
「それでも、呼んでやるときには必要さ」
「じゃあ、そうだな……覚えられない、忘れる、忘レモノ……レモノ。レモノでどうだ?」
「いいじゃないか。じゃあ、レモノ。今日からお前のご主人様は、こいつだよ」
「よろしく、レモノ」
風架はそっと人形のちいさな手をとり、握った。
『ご主人様のために、私は歌います。踊ります。それが私の仕事』
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ローゼンメイデンの影響など受けて、人形の話にしてみました。
主人公の名前はぱんだふかふかからきています。「はんだふか」とでも読んでください。
レモノは、せっかくカタカナだったので、なんか使えないかなっと、です。
幽水晶
はんふーくん(略しました)の名前いいですね。好きです、こういうの
胡散臭げなアンティークショップの店長が気になります。
・・・スレイブレインも略していいですか04/19 19:21
水上 える
略すと何になるんでしょうか…スイブン?スン??
通称スン人形。まあ、ありかもしれない…04/19 20:10
野良(--)
面白そうじゃないか。
でもレモノは名前にしても呼びにくいな。
忘れ物から派生させていった方がよい名がついたかも。
でも、人形ネタはなにかに使えそうだなぁ。04/20 00:21
水上 える
忘れな草…とかも考えたんですけどね。なんかいい感じにならなくて。
レモノでぐぐると、もしかしてレモンって言われます。ああ、たしかに。04/21 00:40
幽水晶
ここはなんかかわいらしく、スッちーなんてどうですか?04/21 19:07
水上 える
スッちー…空を飛びそうだぜ…04/23 00:33
最終更新:2009年10月25日 01:15