2008.05.11 02:25
ミカヅキX
トーマ・オーマ、若干12歳。
背は同年代よりも低めで、やや発育不足。
柔らかそうな桃色の頬は、まだまだ幼さを残している。
彼女の大きな濃い緑の瞳が見つめているのは、年代物の机の上に広げられた紙の上の砂糖粒であった。
野の花の花びらのような唇が軽く開いているため、傍から観ると呆けているようにしか見えないが、トーマは一生懸命目の前の小石のような砂糖粒に集中していた。
なんの間違いか、彼女は、ここアクティオのアジュラス神術院の院生である。
アクティオに数ある神術学校のなかでも、その敷居の高さから「選ばれしものの学び舎」と称されるこの学院に、田園地区出身のこの何の変哲もない少女が推薦されたのは、この学院の謎の一つである。故郷の知り合いも、同級生も、彼女が優秀な神術士になれると鼬の髭の先ほども考えている者はいなかった。
彼女自身も含めて。
「うう。無理かも・・・」
推薦されたからといって、盲目的に自分が立派な神術士になれるなどとは思っていないトーマであったが、授業に関しては真面目に向き合っていた。
この夜も、持ち前のひたむきさで目の前の課題に取り組んでいたトーマであったが、生来の集中力の無さで早くも諦めそうになっていた。
成人前のトーマにとって、己の信仰は不安定なもので、それに伴い神術も未熟であった。
ただ、アジュラス神術院の有能な教授や洗練された学習法のおかげで、入学してからのこの一ヶ月の間に、神術の真似事ぐらいはできるようになっていた。
なってはいたが、今回の課題、「砂糖粒を角砂糖」にすることは、かなり難問である。
しかも、具体的な手順などは一切説明されておらず、今現在トーマの持っている知識のみでこなさなくてはならないのだ。
「ちっちゃい粒々にするのはできそうなんだけどなぁ」
単純な破壊は、力の集中さえできれば難しい問題ではない。
それを再構築するには、技術が必要だ。
「ねぇ、どうしたらいいのかな」
トーマは、砂糖粒に向かって呟いた。
トーマの特技は、羊集めだった。
実家の牧場では、放牧している羊を、牧羊犬が集めるよりもスムーズに誘導する事ができた。
その秘訣は、羊に向かって話しかける事。
もちろん、実際に羊と会話をすることは出来ないが、話しかける事によって、羊達はトーマの言うとおりに動いてくれるのだ。
砂糖粒が羊のように言う事を聞いてくれると思っているわけではないが、トーマにとって、何かに話しかけるのは癖であった。
「お砂糖さん、角砂糖になってください、って無理か」
呟くトーマの瞼がゆっくりと下りていく。
トーマの集中力に限界が来たようだ。
窓の外は、もはや寝静まった町並みが続き、ただ夜空の星のみが見つめていた。
その夜の異変を。
「おい、トーマ!起きろよ!!」
声の主は、アルオン・ワルタス。
歳はトーマより二つほど上だが、成績はどっこいどっこいの少年であった。
「あう。はい、食べます」
「何寝ぼけてんだよ!早く校庭に来い!」
そういい残して小さくなる足音を聞きながら、トーマは涎をぬぐった。
昨夜は、そのまま机で寝てしまったようだ。
「なんだろねー」
一人ごち、胃袋の命ずるまま砂糖粒を口に放り込もうとして、トーマの動きが止まった。
「・・・無い。あたし、寝ぼけて食べちゃったのかな」
トーマは、首をかしげながら、アルオンの後を追って部屋を出た。
「うわぁ・・・」
思わず声を発したトーマが眼にしているのは、校庭のど真ん中に置かれた彼女の身長の二倍はゆうにある、巨大な半透明の塊であった。
「なに・・・、これ」
「砂糖ね」
声のした方に眼をやると、緩やかに腰まで伸びた金髪が朝日に輝いていた。
凛とした後姿だけでわかる。
ウレイ・マクザイム。
学院暮らしの長くないトーマですら知っている、超の付く優等生だ。
そんな有名人との初めて会話を気にする事も出来ずに、トーマは巨大な砂糖の結晶に眼を奪われていた。
(くっつくよー)
それは夢で聞いた声?
(くっついて、くっついて、おおきくなるよー)
おぼろげに残る、甘い夢の記憶。
「うーん?」
口を小さく開けて、眉間に小さく皺を寄せてもどかしげに唸るトーマは、自分に向けられた興味深げなウレイの薔薇色の瞳には気付かぬままであった。
野良(--)
なるほど。モノへの命令みたいな特殊能力かな。
内容的には理解できるが、話の構成自体がちと難ありだと思う。
まず、
「
窓の外は、もはや寝静まった町並みが続き、ただ夜空の星のみが見つめていた。
その夜の異変を。
」
だと、町の方で異変が起きたように思えてしまう。あるいは場所が特定できない。
実際は校庭での出来事なのだから、それは明かしておいた方が後半の理解が早くなるだろう。
あとは夢の声だな。これを最後ではなく、起こされる前までに少しだけでも内容を描写しておいた方が、唐突感がなくなってすっきりすると思う。
ともあれ冒頭の内容としては広げやすそうだ。他二人の設定とかも決めていくと、自然と流れができてきそうだな。05/11 20:42
ミカヅキX
うう。途中で力つきたのがバレバレって感じですね。次はがんばります!05/11 23:06
最終更新:2009年11月02日 03:53