2008.05.09 20:15
野良(--)
――11――
「……標的の現状は以上の通りです。ご指示の通り、遠距離からの
監視以外は行っておりません」
「そうか。ご苦労……」
もた
広く殺風景な部屋の中、硬い椅子に背を凭れたまま、シェリルは
ガード
衛兵士の報告を聞いていた。
ラディール=クリシラに関する報告を。
ヨールドラックからの逃走を許した直後より、シェリルはラディ
ウィザード
に魔術師による監視をつけていた。魔導の探知では悟られぬよう、
あくまで強化した視覚のみで。想定外の存在が介入してきたことも
あり、余計な刺激は与えぬようにとあえて手は出さずにいたのだが、
あまりよい方向には向かっていないらしい。
アーム
竜すら滅する強大な魔人。
ゾーン
異形の群れを生み出す魔王。
きわみ ボーダー
そして、歪みの極たる境界獣。
ユージス
それら、人が対するには身に余る、世を砕くほどの破壊の力に、
なお あらが
尚も抗う強い意思。
スレッド
その代行者こそが『殲滅士』と呼ばれる者たちだ。
ことわり
忘れられた古き理。細く伝わるその契りにより密かな援助を受け
ながら、彼等は隠密裏に世の脅威を除いてきた。
シェリル=オスカーは、その名を継いだ一人である。
「あの、それで、以降の指示は」
ガード
報告の衛兵士が向けてきた恐る恐るの問いかけに、シェリルは最
善の道を模索していた思考を、少しだけ浮かび上げた。
「あぁ、そうだな……。今まで通り、遠距離からの監視だけ行って
くれ。決して手は出すな。出来ることなら周辺の無法どもも排除し
たいところだが、しかし……」
「……監視だけというのは、指示のあった二人の女に対してのみで
しょうか」
「ん?」
向けられたその言葉には、従順の中にも反発と誇り、そして切欠
が含まれていた。それはシェリルが深めた思考の中で、ぽっかりと
抜けていた情報の端。
「どういうことだ?」
「はっ。もう一人の男に対しては指示を受けておりませんでしたの
で。あの程度の者ならば、我々でも対処が可能かと」
「男……」
「はい。恐らく、標的の恋人だと思われますが」
「……あぁ、そういえばいたな、そのような者が」
思いだす、刃を交えた男の顔。青い眼をした目立たぬ容姿の、し
マイト
かし鮮烈な想いを抱いた戦士。明らかな力の差にも関わらず、自分
に向かってきたあの意志ならば、あるいは……。
「なるほど……。これもレディオスの導きか……。協力してもらう
とするか。あまり、気は進まないが、な……」
思い至った最善の策が、真に神の意志なのか、シェリルには判断
することが出来ず。
ゆううつ
吐き出す息の憂鬱を、少しだけ深めていた。
最終更新:2010年03月17日 02:54