2006.01.09 20:11
野良(--)
王宮を中心に美麗な建築物が整然と並ぶ、首都アクティオの中央地区。その一角、神殿のような建物の一室にラファルはいた。
神務省の執政院で、二人の男の前に立ち。
「それで、結局宝玉は奪還できなかったというわけだね」
「はい」
緑の法衣を纏(まと)った小男の言葉に対して、表情になんの感情も浮かべず返答する。その態度が気に障(さわ)ったのだろう、隣の大男が立ち上がりながら声を荒げてきた。
「貴っ様! 事の重大さがわかっているのかっ! 複製が容易でない今、アレがなければ……な、なんだ?」
持ち上げられたラファルの腕が、その言葉を遮った。手に握られた、鷹の飾像を備えた杖が。
差し出されるがまま、大男は思わずそれを受け取っていた。
「これ、は……」
「お返し致します。宝玉に関して、私たちは十分なお役に立てたと考えておりますが?」
「うぬ、むぅ……」
言外に、秘していたそれの役割、彼女達を囮として差し向けた事の含みごと。
沈黙し、大男は腰を下ろした。
間をおかず、柔和な顔の小男が話の主導を継ぎなおす。
「背信者どもが絡んでくるとは考えていなかったのだがね。ところで、連中はなにか言っていなかったかね?」
「なにか、と言われますと」
穏やかな声に対しても、ラファルは無表情を崩さなかった。細かった小男の眼が、少しだけ広くなる。
「……宝玉に関してなにかを、ね」
それでも、彼女の態度は変わらなかった。
「いえ。尋問される前に後発の方々が行動を始めてくださったので」
内容は挑発にも近いものだったが。その意を感じさせないのは、やはり静かな瞳ゆえか。
続くはずであったろう追求の言葉も、遂に形になることはなく。吐きだす小さな息とともに、小男は予定していた最後の科白(せりふ)を口にしていた。
「……君達の働きは報告で聞いている。期待には十分に応えてくれたようだ。半獣を匿(かくま)った事に関しては不問としよう」
「ありがとうございます」
「今後の処遇は追って報せる。同行した者たちにもその旨伝えてくれたまえ」
「はい。それでは、失礼します」
与えられた温情の言葉に一礼し、ラファルは優雅な動きで背を向けた。そのまま静かに扉を抜ける。最後まで粛々と。
ぱたん、と鳴ったドアの音に、残された二人は同時に息を吐いた。
「やけに大人しかったな。あのベゼリゼともあろうものが。なにか感ずいているのではないか?」
「かもしれませんね……。レン。彼女の言葉、本当に偽りはありませんか?」
後ろに向けた呼びかけの声に、三人目の男が部屋の奥から姿を現した。切れ長の眼をした黒い長髪の青年は、ただ淡々と言葉を返す。
「……ええ。問題はありません」
「そうですか……。まあ、今のところはよしとしましょう。後々役に立つかもしれません」
「いざとなれば方法はいくらでもある、か。しかし、宝玉はどうする」
「施(ほどこ)された<妨害>のせいで所在が攫(つか)めませんからな。相手の出方次第、ということに……」
法衣二人の交わす会話は、次第にラファル達から離れていく。青年の事などは、すでに頭にないようだ。
それは、彼にしても同じようで。眼差しを少女の消えた先へと向けたまま、レンはただその場に佇(たたず)んでいた。
一方、その扉の向こう側では、ラファルが盛大に溜息をついていた。
「……どうしろっていうのよ、これ」
ポケットから取り出した、赤い宝玉を見つめながら。
野良(--)
なんだかんだで一月近くかかったが、次で一応決着です。01/09 20:14
凩 時雨
おおぅ。宝玉がなんなのか気になります^^;01/10 21:17
しぐれもん
なして、ラファルが宝玉を持ってるのか気になりどころですねー。
ラファルの性格的に、ツレ連中全員に言われたか、立場が上で尚かつ信用できる奴に持ってるよう言われたか…が、俺の予想。01/12 16:50
最終更新:2010年03月17日 03:15