2006.01.08 11:50
野良(--)
牢が破られたというのに人が来る気配もなく、飛び出した通路の四方からは争いの音が響いていた。侵入者はあの一人だけではないようだ。ラファル達は破壊の痕跡を辿って走りだした。
石造りの建物は、どうやら廃棄された砦のようだ。古いながらも堅牢な石壁であるが、剣を振るった主は刃が触れることをまったく気にしなかったのか、真新しい斬戟(ざんげき)の跡が縦横無尽に残されている。
真っ直ぐ、右に、左へと曲がり。近づき遠ざかる騒ぎの音。時折垣間見える戦いの光景では、黒と灰色の者達が刃を交(まじ)えていた。
大剣の痕跡を追い、逃げるように進路を変える。
「なんかえらいことになってるぜ」
「人数からみて計画的よね。どうやってこの場所つきとめたのかしら」
「これよ」
ライとマッチが交わした言葉に、伸ばした杖でラファルが答えた。
「この杖を目標にして探し当てたんだわ」
「それって、神務省のおっさんに貰ったやつだろ。……おい、それじゃ」
「近いわ。警戒なさい」
辿りついた階段の先、砕かれた扉の向こうに空が見えた。閃光と重い音が、断続的に届いてくる。
躊躇(ためら)い、そして飛び出したラファル達の目の前に、黒い人影が勢いよく叩きつけられ、
ゴバァ!
「うおわっ!」
丸鍋のようなクレーターを生み、その中心を落ちていった。後を追いかけるように、陥没部分が降り注ぐ。僅(わず)かな間でおさまったその場には、屋上に穿(うが)たれた大穴だけが残された。
人影の軌道を辿った先から、緑の法衣がゆっくりと宙を降り、屋蓋の縁近くへと足をつけた。全身に朱を滲(にじ)ませながらも、その動きに澱(よど)みはまったく見られない。
「剣士としてはなかなかの腕だが、神に縛られた身では私には勝てんよ」
「ど、どういう戦いだ」
「<力の反射>ってとこでしょう。あの速度に合わせるなんて……」
遠くから注がれる視線に応えるように、フォルドはラファル達に向き直った。冷静さはそのままだが、溜息交じりの沈んだ表情で。
「目論見が甘かったようだ。私は今からここを離れることにする。君達の事も見逃そう。……私の邪魔さえしなければ、だが」
言葉は淡々としたものだったが、そこに含まれているのは絶対の自信。事実、発する威圧感にラファル達の誰一人とて勝機の欠片も見出せずにいた。
「……どうするよ。せっかくああ言ってくれてるんだし、今日のところはこれぐらいで勘弁してやるってのは……」
「逃がすわけがないでしょう。大人しく宝玉を返して投降しなさいっ」
「……融通きかない人ねえ」
呆れた風を装いつつも、マッチは鋼鉄製の盆を両手に構える。どこか楽しげにすら見える様子で。
合わせ、クレアも攻撃姿勢をつくる。両の指を鈎爪のように固め、猫そのものに前傾し。
ライもしかたなさそうに、ナツメは気合を入れてベインにおぶさりなおした。
退く様子のない一行に、フォルドは両手に光を宿す。視線をかつての門弟に向け。
「君はラグリーズ信者(リーズ)失格だな。理性的になることを忘れてしまっては」
「背信者に言われたくはないわ」
掲げた杖に緑の光を高めながら、ラファルは小さな声を周囲に送る。
「力の差は歴然だわ。一発勝負よ」
「ようし、わかりやすくていいや」
「なにか策は?」
「……同時につっこんで。奴の攻撃は、私がなんとかする」
その応えに、マッチは眼だけをラファルに向けた。毅然(きぜん)とした表情を崩さない、傲慢(ごうまん)で純粋(じゅんすい)なアクティスの娘に。
ほんの一瞬のことだった。
「信用してあげる。いくわよっ!」
「ようしっ!」
掛け声と共に気勢を上げて、マッチとクレアが跳びだした。それぞれが、右と左に進路をとり、瞬く間に標的へと迫る。
まったく同時に襲ってきた鋼の盆と鋭い爪に、それでもフォルドは動じなかった。ゆっくりと動いた両腕は、二人を完全に迎え撃つ。
「遅いな。<神の鉄槌>(ハルマード)っ」
手の赤光を膨らませて。
その瞬間を、ラファルは待っていた。理により力を制する存在、ラグリーズを信じる娘は。
「<零への回帰>(リストール)!」
声が届くより速く、緑の波動が辺り一帯に広がり通り抜けた。それは、触れた力を霧散させる光。
赤光が二人に届く前に、宙へと散り、消えていく。
「くっ!?」
それでも完全には消滅しない。間を外れた各々の攻撃は、全てが重なり敵を打ちつけた。
「くあっ」
「つぅ」
「がっ!」
赤い力に弾かれながらも、爪はフォルドの胸を裂き、盆は彼の側頭を捉(とら)えていた。
いかな使い手であろうとも、次の衝撃は避けられない。
「うりゃあ!」
「く、おお!?」
ただ真っ直ぐに飛びこんできた、ライ渾身(こんしん)の体当たりは。
体勢を崩した敵の身ごと、砦の上から宙を舞わせていた。
「ちょっ!?」
「ライっ!」
「なっ」
制止していたのは、一瞬。
「おわああああぁぁぁぁぁぁ……」
間延びしながら落ちていく悲鳴。
それを、
シャーーーーー!
伸びる影が追いかける。
ナツメの手から放たれた蛇の頭が、
かぷ
「って~~~!」
地に着く前に、ライの尻に咬みついた。
止まる体と、止まらぬ体。
重力に従った片割れは、
ズ、ドン
勢いのままに叩きつけられた。
凩 時雨
痛い痛い(笑)01/08 16:27
野良(--)
もう少し衝撃の度合いを強くした方がよかったかな01/08 23:54
しぐれもん
ハリポタチックな戦い方。 いや、ハリポタがラファルチック?01/12 16:45
野良(--)
戦闘中はスピード感を重視するのが俺のスタイルなのだが、
今回はちょっと省略しすぎたな。伏線とかもさっぱり張れなかったし。
短編で意味のある戦闘シーンを書くのは難しいや。
01/12 22:52
最終更新:2010年03月17日 03:19