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ラファル=ベゼリゼの受難・9

2005.12.26 13:54

野良(--)

「なるほど。その猫を探しに来たわけか」
「そうなんだ。いやあ、わかってもらえてよかったよ」
 地面に座り焼いたキノコを食べながら、グオズロと名乗った熊男は陽気に言葉を交わしていた。彼は一度戦いの気が抜けてしまえば気さくなもので、敵意のないライとは妙に馬が合うようだった。互いの境遇を肴にしては、時折笑いあっている。
 彼の言によれば、この周辺の獣人は群れを成さずに暮らしているという。獣に近い生活をしている族なのだろう。稀に交流はあるものの、基本的に他者への関心は薄いようだ。追っている猫女(クレア)に関しても知ることはないという。
 得られた有意義な情報はそれぐらいであった。会話の九割は意味のない雑談であったから。もっとも、そのおかげでグオズロも気を許したのだろうから、あながち無意味ともいえないのだろう。
「くわっはっは。話のわかるアクティスもいるもんだな」
「いやー、おっさんこそ。気さくな奴でよかったぜ」
「言ってくれるな。まあ、もっとも」
 豪快に笑っていたグオズロが、首を巡らせながらその笑みを収めた。
「あっちが普通なんだろうがな」
 視線の先のラファルを見ながら。
 樹を背に腕組み二人を眺めていたアクティスの娘は、ふいとその視線を外した。感じさせる悪意を隠そうともしない。
 グオズロはゆっくりと立ち上がった。
「お、い。おっさ……」
 そしてラファルへと近づいていく。杖を構えられるのも気にせずに、ずかずかと手の届く距離へまで。
「……近寄らないでくれないかしら。獣の匂いは大嫌いなの」
「少しは自分の立場ってものを理解した方がいいぞ、生意気なアクティスが。ここはオレたちの地だということを忘れるな」
 低い唸(うな)るような声で迫る獣人の顔に、ラファルは嫌悪の視線を返す。彼の右腕に力がこめられていることには気づかずに。
「私たちの領土だわ。知性を持ち合わせていない獣風情には理解できないでしょうけ、どっ!?」

 ゴバキャッ!

 言葉の途中、持ち上げられた獣人の腕が、ラファルの頭上を振り薙いだ。背にしていた樹の、抉(えぐ)られた木片が宙を舞う。
「おいっ、おっさんっ!」
「ラフィ!?」
 思わず閉ざした目、闇を降ろした視界の中で、ラファルはその声を聞いた。
 聞いたのだ。薙ぎ飛ばされたはずの自らの耳で。
 ゆっくりと、瞼(まぶた)を上げる。
 見えたものは獣人の顔。それは徐々に離れていき、やがてはその全身が映る。振りきった手の中に、人の身ほどの蜥蜴(とかげ)を掴(つか)みあげた姿が。
 呆然としたラファルのその様に、グロズオは鼻で笑ってみせた。
「本当に生意気なアクティスの小娘だ」
 そして、向きを変えて歩きだす。右手に捉(とら)えた獲物を下げ、空いた手で左を示しながら。
「お前らの探してる猫かは知らんが、溜まり場には時折半獣の輩もやってくる。行くのは勧めんがな」
 止まることなく茂みへと。
「じゃあな。キノコ、うまかったぞ」
 ガサガサと鳴る草の音を残し、グオズロは現れた緑の奥へと消えていった。


凩 時雨
おわぁ、バイトから帰ったら続きが!
なんかすごい嬉しいー。12/26 22:14

野良(--)
書き終わったのは一月前なんだよな。
個人的にはフレッシュさがなくなりつつある。
つかあんまり覚えてねぇ(笑)12/27 18:15
最終更新:2010年03月17日 03:36
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