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ラファル=ベゼリゼの受難・11

2005.12.30 17:42

野良(--)


「宝玉? ああ、あれね。売っちゃった」
「売った……」
 あっけらかんとしたクレアの返事に、ラファルはよろりと体を傾けた。床につっぷし、長い髪を小刻みに揺らして。
 場所はクレアが寝床としている、朽ちた大木に穿(うが)たれた洞(うろ)。崖の上から落ちたにも関わらず、一行は無事にここまで辿りついていた。存外(ぞんがい)頑丈な連中である。
 声を失ったラファルに代わり、ライが会話の後を継ぐ。
「誰にだ? こんなところじゃ取引の相手もいないだろ」
「森にだって金持ってる奴はいるさ。多分<神を超えるもの>の連中じゃないかね」
 軽い調子を変えないクレアは、聞き手の異変に気づかない。アクティスにとっての禁忌(きんき)にも。
 <神を超えるもの>。自らをそう標榜する彼らは、アクティスでありながら六柱への信仰を捨て力に走った異端の者たちだ。己の欲望のままに動き、神の力を自身の才と驕(おご)り。獣人や半獣、異人混血と同様、いや、それ以上にアクティスの嫌悪を掻き立てる存在である。
 打ちのめされていたラファルにさえ、立ち上がる力を蘇らせるほどに。
「あ、貴女、連中の手先なの?」
「違うよ。たまに色々と世話になっちゃいるけどさ」
 憮然としながらクレアが語ったところによれば、彼らとの関係はあくまで対等ということらしい。アクティスの街や獣人たちの溜まり場に忍びこんでは、そこで得た情報や品を金に換えてもらう取引相手として。それがなにに使われるかは、彼女の意識するところではなく。
 聞き終えたラファルは、向ける視線に侮蔑(ぶべつ)の念を強くした。
「……所詮は半獣よね。善悪の見境もなしに生きてるだけなんだわ」
「生きるってのは大変なんだよ。大体、相手はあんたと同じアクティスじゃないか」
「あんな、背信者どもと一緒にしないでっ」
「同じだよ。あたいの知ったことか」
 さすがに気分を害したように、クレアはぷいと顔を背けた。
 受けた印象は互いに変わらなかったのだろう。ラファルは無言で彼女の手をとり、苛立ちを隠さず引き歩き出した。
 隣のライを押しのけて。
「おい、ラフィ。どこ行くんだよ」
「決まってるでしょ。連中を捕まえて宝玉を取り戻すのよっ」
「……無理じゃないかねえ」
 冷めたクレアの声を無視したまま、扉代わりの長布を撥ね飛ばし、開けた視界にラファルは声を失った。
 洞(うろ)からこぼれる灯りがなければ、伸ばした腕すら見えそうもない闇の世界に。
 入り口の脇で丸まったベインに埋もれながら、ナツメが空を眺めていた。
「いや~、綺麗な星空だよ~」
「あんたたちにゃ夜の森は通れないだろう?」
 立ち尽くすラファルに、間延びした声とからかうような言葉が追い打ちをかける。 
 膝から崩れ、腰を落とし、
「もういやよー、こんなところー!」
 彼女の心からの叫び声が、夜の闇に響き渡った。



しぐれもん
やっと悪の組織的なのが登場っすね。01/04 13:55

野良(--)
さぁ、それはどうかな01/04 16:13

凩 時雨
わー、すっごい意味深(笑01/04 18:04
最終更新:2010年03月17日 03:34
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