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ラファル=ベゼリゼの受難・6

2005.12.10 09:17

野良(--)


 心に不安を抱えていても、時の流れが緩やかになることはない。安らかならざる一夜を越えれば、ラファルには今日も学事が待っていた。
 もっとも、とても耳に通すところではなく、
「ようしっ、今日はここまでだっ。皆、体を鍛えておくようにっ」
 気がつけば授業が終わっていた。はっ、と慌ててももう遅い。講堂から出て行く人の流れに、ますます気落ちして溜息をつく。
「終わった終わった~。さ~、マヨにしよ~」
「相変わらずだな、ナツメは。ん、どうしたラフィ」
「……なんで貴方達がそんなに気にせずいられるのかが理解できないわ」
 同じ問題を抱えているはずなのに、という視線に気づきもせず、ナツメとライは普段の通りに昼食への期待を高めていた。引かれるままに足を進めながらラファルが心の内で捧げるラグリーズへの祈りにも、思わず恨めしさがこもってしまう。
「ま~ま~。お昼食べたら一緒に落ち込んであげるから~」
「別に落ち込んで欲しいわけじゃないわ……」
「あら、ベゼリゼさん。ナツメさんたちも。ちょうどよかったわ」
 講堂を出たところで声をかけられた。教師のミルドレッドが、にこやかな微笑を浮かべている。いつもと変わらないのだが、なぜか不吉な予感がラファルの脳裏を過ぎった。ラグリーズ信者(リーズ)にあるまじき無責任な予断だ。頭を振って笑みを返した。
「な、なにか御用でしょうか、ミルドレッド先生」
「神務省の方がお見えになっているの。貴方達三人にお話があるそうよ」
「げっ」
「あら~」
「……ほら、みなさい。どうするのよ……」
 小声でぼやいてみてもどうにもなりはしない。
 そんな彼女達を見ても、ミルドレッドはなにを訊(たず)ねることもなく、ただにこやかに笑っているだけだった。
「第三会議室でお待ちよ。失礼のないようにね」
 告げられやってきた第三会議室で彼女達を待っていたのは、椅子に掛けた二人の中年男だった。柔和な小男と厳(いか)つい大男、両者の纏(まと)う緑の法衣は司祭を示す章印が入っている。神殿の政治面を司る神務局の使いというのは間違いがなさそうだ。
 直立不動で彼らの前に立ちながら、ラファルはますます陰鬱(いんうつ)な気分になる。
 話の口火を切ったのは、柔和な小男の言葉だった。
「なぜ君達を呼び出したのか、理由はわかっているだろうね」
「……はい」
「ベインたちを飼うのは~、ちゃんと許可をもらってるよ~」
「いやー、心当たりがありすぎてどれのことやら」
「貴方たちは黙ってなさいっ」
 ラグリーズ信者(リーズ)にあるまじき衝動を抑え、ラファルは小声で二人を叱りつけた。それでも聞こえてしまったらしい。厳(いか)つい大男の方が、声を荒げて椅子から立ち上がった。
「ふざけているのかっ。お前達があの盗人半獣を匿(かくま)い逃したことはわかっているのだぞっ」
 こちらもラグリーズ信者(リーズ)に相応しくない激昂(げっこう)が、室内の空気をビリビリと揺らす。音量と権威にライとラファルは大人しくなったが、ナツメだけはきょとんとした表情で指を噛んでいた。
「盗人~? クレア、なに盗んだの~?」
「ぬ、あ、いや……」
「ボルドくん……。対話は私に任せてもらえませんか」
 途端に消沈した大男は失った勢いのまま椅子に座り、話の主導を譲り渡した。小男は柔和な態度を変えぬまま、ラファル達に視線を戻す。
「本来なら半獣隠匿(いんとく)は重罪なのだが、前途有望な諸君に対し私達は特赦(とくしゃ)の機会を与えることにした。聞く気はあるかな?」
 語られたその内容に、三人は顔を見合わせた。いかにも不審に満ちた話だが、当人達を前に声にするのも憚(はばか)られる。そもそも、言葉を交わすまでも無く選択の余地はないのだった。断れば今度こそ犯罪者だ。
 目線だけが交わされた無言の時を、肯定と受け取ったのだろう。小男は小さく一つ頷(うなず)いて、その機会を説明し始めた。
「少し話が出た通り、半獣は我らが神務局からある宝玉を盗み出したのだ。君達にはその奪還を任せたい」



凩 時雨
な…なにやら面白そうな展開に!12/12 21:45

野良(--)
そりゃまぁなにか面白そうなことが起こらんとお話にならないわけで(笑)
これでなにも起こらずに終わったら、それはそれで斬新かもしれんな(--)12/13 16:56

しぐれもん
三人の関係がたまりませんなぁ~(ぇ?12/17 20:47
最終更新:2010年03月17日 03:43
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