2005.09.08 23:29
野良(--)
一方その頃。
『ランドテル』では、イージャが真剣な眼差しをレポートの束に向けていた。ここの方が自身の部屋よりも集中できるのだという。
いつもそんな表情でいてくれればいいのに。思いながら、レニスは注文された紅茶を彼女の前に恭(うやうや)しく置き供える。
「あら、ありがと」
「い、いえ、仕事ですから」
なぜか妖艶(ようえん)さを孕(はら)んでみえるイージャの仕草に、知らず頬が熱くなる。そんな変化をごまかすように、レニスは会話を続けていた。
「あ、の、兄さんに、なにを頼んだんですか?」
「ん? ああ、魔法の材料よ。ミズマダラオオサンショウウオの干物」
「ミズ、マダラ……? 変な名前の生き物ですね。珍しいんですか」
「見つけるのは簡単なんだけどね、干物にするのに手間がかかるのよ。そういう意味では珍しいわ」
「手間……?」
「そう。干物にするとこれぐらいなんだけど」
イージャは紅茶のカップを卓に置き、親指と人差し指を広げてみせる。
「元は馬車並みの大きさだから。それに生命力が強くてね。わずかな水でもあるとすぐに蘇生するし」
「へえ。もしかして、干物でも?」
「ええ、水分を取った分だけ大きくなるわ。だから決して水に触れさせちゃダメなの」
「なるほど」
レニスは新たな知識に素直に関心し、しばし宙に視線を彷徨(さまよ)わせる。次第に不安を募(つの)らせて。
「あの、万が一川になんか落としたら……」
「それはもう、大変なことになるでしょうね」
さらっと出てきたその答えに、言ったイージャまでもがそれ以上の言葉を発しなくなった。
奇妙な沈黙が場に落ちる。まだ他に客のない店内には、厨房からの匂いと音だけがかすかな刺激。
カップから昇る湯気が消えた頃、二人はようやく空想の世界から帰ってきた。
「……兄さん、大丈夫かな」
「まさかあ、いくらベインでも、そんなドジは……」
小声で交わされる会話は、表からの喧騒(けんそう)にすら掻き消される。いつの間にか、駆け抜けて行くいくつもの足音が聞こえるようになっていた。
不意にその音が鮮明になる。店の扉を開け、一人の客が入ってきた。
「いらっしゃい。表が騒がしいね、なにかあったのかい?」
厨房から顔をだしたバプルの呼びかけに、新たな客は近づきながら答える。
「セルディオにトカゲのバケモノが出たんだってさ。まったく、落ち着かない街だね、ここは。ところで、一晩泊まれるかな……」
後に続く宿泊のやりとりは、レニスの耳には届いていない。窓越しに見える、川へと向かっていく人々を、ただただ呆然と眺めている。
イージャはすっかり冷めたカップを持ち上げ、くいっとそれを飲み干した。
「……お代わり、もらえる?」
「……はい、少々お待ちください」
ティータイムはもう少し続くようだ。
しぐれもん
ベイン君、死ぬだろうな(コラ
ミズマダラオオサンショウウオ…でっかいウーパールーパーみたいな?09/09 00:43
野良(--)
そんな感じ。身体が黒っぽいマダラ模様で、さらに大きさが小型トラック程度と想像していただければ。09/10 00:39
しぐれもん
りょーかいです。09/10 12:10
最終更新:2010年03月17日 03:59