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小説「ランドールの日々」―2―

2005.09.03 00:45

野良(--)

 軋む床。色あせた壁。普段から人気の少ない待合室は、昼食前には大抵無人になる。ここは警備隊舎の隣にある、実質上の緊急施療院。その古びたソファーにもたれかかり、警備兵ベインは愛猫フルネスと戯(たわむ)れていた。爆発の痕跡を顔や衣服に残したまま。
「またドジったよ。俺ってこの仕事、向いてないのかなあ」
 気落ちした声をかけられながら、腹の上の癒し猫は撫でられるがまま、幸せそうに喉を鳴らす。見ているだけで心和むその仕草に、ベインの気持ちも少しは晴れたようだ。
 フルネスは満足げに立ち上がると、ソファーを降りて裏へと向かう。ベインが首を巡らせたとき、施療室へと続く扉がゆっくりと開いた。出てきたのは、白衣の女性と灰色がかった髪の少女。
「だいぶよくなってきたわね、プラムちゃん。この調子でがんばりましょう」
「はい、マーシャさん。ありがとうございました」
 頭の上でまとめていた長い銀髪を下ろしながら話しかける白衣の女性に、プラムと呼ばれた少女は丁寧(ていねい)にお辞儀を返す。うっすら射し込む光に包まれたその光景は、神聖画から抜きだしたようだ。そう思いながら眺めているベインに、天使が声をかけてくる。
「ベインさん? どうしたんですか、ぼーっとして」
「は、あ、マーシャさん……いえ、な、なんでもありませんっ」
 反射的に敬礼を返すベインに、マーシャとプラムは視線を合わせ、控えめに笑いをこぼす。そんなことですら妙に嬉しく、ベインも自然と笑みを返していた。
 幸いなことに、鼻の下が伸びきる前に引かれる袖に気がついたらしい。
「ベインさん。お兄様がどこにいらっしゃるかご存知でしょうか?」
 線が細く令嬢然としたプラムは、それに相応しい丁寧な言葉で話しかけてくる。衣服の質素さなど意識させない品の良さだ。お兄様が横に並んでも、とても実の兄妹だとは思うまい。
「ブローム? いや、テトラさんと一緒に船の解体処理してたはずだけど……隊舎にはいるだろう。送っていくよ」
「はい、ありがとうございます」
 少女はきちんと礼を言うと、足元にすりよるフルネスを楽しそうに撫でだした。重い病を患(わずら)いながら、それを周囲に感じさせない朗(ほが)らかさがある。ベインは隣に立つマーシャに、知らず言葉を漏らしていた。
「強い子ですよね……」
「ベインさんも強いですよ。さ、行きましょうか」
 誘いの言葉が、二の腕を掴(つか)む力とともにベインの体を引いていく。常なら喜ぶところだが、向かう先が施術室であるとわかっているだけに、どうしても顔のひきつりを止められない。そのために来たのではあるのだが。
「あ、あの、マーシャ、さん」
「打撲傷に擦過傷に軽い火傷、この程度なら一撃必殺ですね。なんですか?」
 問いかけに返ってくるのは天使の微笑み。相手を思いやる気持ちに加え、心の底からの楽しみが十二分にわかる笑顔。これを前にして、ベインに異論を挟もうなどという気力は欠片も湧いてはこなくなる。
「……お手柔らかに」
「おまかせください。新薬を開発したんです。今度こそは大丈夫ですよ」
 自らの自信が示す通り、マーシャは腕のいい治療師だ。容貌も美しく性格も優しい。なのになぜその施療院が寂(さび)れているのか。
 ベインの恐れがその理由だ。

 ぱたん

 施療室の扉が閉まってから数刻も経たず、ベインの悲鳴が木霊(こだま)した。

 プラムは一度だけびっくりし、そして何事もなかったかのようにフルネスと遊び続ける。あくびの表情に笑いながら。
 健気でいい子なのである。本当に。


しぐれもん
ん?そのままコピペ?(運動能力の件が書かれてる辺り)
まあいいや(笑

おぉ~、フルネス&マーシャ&プラム出てきたぁ!(ニヤリ
一撃必殺…(笑09/03 11:00

野良(--)
あぁ、消し損ねた。
消しとこう。09/03 18:47
最終更新:2010年03月17日 04:10
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