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小説「ランドールの日々」―1―

2005.09.01 23:54

野良(--)

 『高貴な路(ノーブルウェイ)』に程近い、運河を目の前に据えた位置に、警備隊舎は置かれている。一区画を丸ごと占有した三階建ての建物は、威圧感と同時に親しみやすさを与えていた。木造で、あちこち修繕の跡が残っているせいだろうか。最上階の総長室には、雨が降れば鉄鍋の小気味よいリズムが響くという。
 それはさておき。
 警備兵の朝は早い。まだ星の瞬(またた)き残る時間から、隊舎には間をおかず人が出入していた。
 動いていない者もいるが。
「平和だねえ」
「ええ」
 船着場に座って運河へと釣り糸をたらしている年配の男に、壊れた船の後片付けを黙々と行っていた大柄な若者が応えた。二人とも、警備兵であることを示すくすんだ茜色の制服姿だが、雰囲気が実に似つかわしくない。
 後ろに控(ひか)える道向こう、隊舎から聞こえる騒ぎにも関せず、黙々と己が領分をまっとうしている。
 その騒音の中心では、二人の若い警備兵と赤ら顔の中年がもみあっていた。
「こんの、暴れんなっ」
「うるせえ、俺を、誰だと思ってやがるんだっ」
「タダの酔っぱらいだっ」
「んだと、この野郎っ」
「をがっ!?」
「おわ、ベイン、なに殴られてんだ。こら、大人しくしろっ」
 一行は賑(にぎ)やかに殴打の音を響かせながら、隊舎の中へと消えていく。

 川辺では、伸びた釣り糸が水の流れに揺れていた。
「平和だねえ」
「まったく」

 時が経ち、薄い朝霧が晴れるころ、隊舎から出てくる者がいた。先の若い警備兵のひとりが大量の荷を背負い、腰の曲がった老婆を従えて。
「だからな婆ちゃん、ここは勝手にモノ売れないんだよ。この道の先に行ったところなら自由に売り買いできるからさ、そこまで行って……」
「そうかね。じゃ、そうするかね」
「そうしてちょうだい。……って婆ちゃん、この荷物はっ。お、おーい!」
 若者は自身の倍ほどもある荷を背負ったまま、先を歩いていく老婆に呼びかけるが、止まる気配は微塵もない。背中の品はよほど重いものらしく、両者の歩みはほぼ同じ。彼は老婆に呼びかけながら、けっきょく付いて行ってしまった。

 川辺では、浮きがぴくんと上下した。
「平和だねえ」
「そうですね」

 往来もそろそろ人が増えてくる。流れる人に混じって、先の若者が隊舎に戻ってきた。
 騒ぎはその直後に起きる。野太い怒鳴り声は薄い壁ごしにもはっきりと外まで聞こえてきた。
「バカ、ベイン! そりゃおまえ、押収した不発爆剤だ!」
「そ、そんなもん、なんで休憩室に置いてあんだよ!」
「いいから動くな! 落としたりしたら……」

 ばたん!

「よう! なに盛り上がってんだ」
「あっ」
「あ……」
「あ?」

 小さな爆発は幸いなことに、隊舎の壁を壊すこともなくすんだ。

 煙をたなびかせる窓。そこから聞こえてくる怒声をせせらぎと共に聞き流しながら、川辺では竿が緩やかにしなっていた。
「平和だねえ」
「はい」


凩 時雨
へ…平和だ(笑)09/02 00:25

しぐれもん
ダメだー…
忙しくて(他の人の方が忙しいですけど)サークル見れないー…
小説も書けないー…09/02 16:46
最終更新:2010年03月17日 04:12
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