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ミカヅキ『P&R2 -the Next World-』

2008.05.23 00:16

ミカヅキX


P&R2-the Next World-

 私の名はパンドラ
 世界最高の殺戮兵器として開発された。
 その実態は、電磁波の干渉を制御する事によって、あらゆる機器から情報と制御の自由を奪い取る、電子の憑依霊である。
 私に意思があるように見えるならば、そのような比喩を多用した口語的記述方法が人間に理解しやすいからに過ぎない。私には意思など無いことを言明しておく。私は唯の機械であり、思考のように見えるものは情報の蓄積とそこから生じた類推に過ぎない。私には時間の概念も無く、ただ得た情報から事実である蓋然性が高いものを抽出し、そこから類推できる結果を得るための計算を超高速かつ高次元展開しているだけである。
 この記述文は単なるログであり、正式なログを読む労力を軽減するために開発された日記型記述式による、簡易ログである。

 今、私が認識しているのは、二つの個体である。
 一つは高齢な人間の男であり、私の製造者である。
 もう一つは、私の能力では分類不能な、一種の非生命的意識体である。
 私は、その非生命的意識体に関して可能な限り類推し、エンペラーと呼ぶことにした。
 エンペラーが私に対して問いを発する。
 「この際効率は度外視してもいい。可能な限り速やかに人類を根絶して欲しい」
 「イエス・マイエンペラー。すぐに開始しますか?」
 私の回答に、老人の顔に生気が戻ったことが認識できた。
 「ああ、今すぐにだ」
 「イエス・マイエンペラー」
 「で、かかる期間はどの程度だ?」
 私はその問いに対して、正確ではないが有効度の高い回答を示した。
 「所要時間は約6年と6ヵ月と6日です。マイ・エンペラー」

 エンペラーのコマンドが効力を発してから、私はありとあらゆる方法で人類の根絶を図った。
 全人口の半数を減らすのに掛かった時間は7日。
 そこから更に半分に減らすには、3年掛かった。
 実体を持たない私には、実作業をする代理の存在が不可欠であり、それらは私の思惑を100%完遂するには機能不足だったからだ。
 人類根絶の作業は、かたつむりのように遅々として進まなかった。

 「あれから3年。最近は人間どもの勢力が増加傾向にあるというが?」
 エンペラーの質問は、現時点では妥当なものであった。
 確かに、最初の大量殺戮を生き残った人間達は、最初は逃げ惑うだけであったが、この3年でかなり組織化され、世界的な規模で私に対する反抗を開始していた。
 「お前の存在が、いがみ合っていた世界を一つにまとめたというわけだ。皮肉なものだな」
 「いいえ、御霊門様、それこそがパンドラの目的なのでございます」
 「どういうことだ?」
 48時間ほど前、エンペラーと同じような質問を私にした老人が、私の代わりに説明を始めた。
 「人間が分散していては、効率的な破壊工作は行えません。激減した人類を再び纏め上げ、死に損ないの快楽主義者に第二の粛清の放火を浴びせるのが、パンドラの計画なのです」
 「なるほど。そうなのか?」
 「イエス・マイエンペラー。補足事項としましては、兵器類を使用する前に、情報操作による内部崩壊を起こさせます。人類の特徴として、精神力による生存能力の向上が挙げられますので、その精神的支えを根絶するのが目的です。その結果、人類根絶までの予測期間は大幅に短縮される計算です」
 私の回答に、エンペラーは納得したようにうなづいた。

 その24時間後。
 事態は急変した。
 突然外宇宙からの侵略者が、地球に攻撃を仕掛けたのだ。
 彼らは、人類の潜在的危険性に留意していた外宇宙の精神生命体であった。
 注意深く地球を観察していた彼らは、私という危機に対して、地球規模で一体化した人類を全宇宙に対する顕在化した危険であると判断したのだ。
 人間には理解しがたいであろうが、彼ら異星人の考え方に、私は異論を持たない。

 結果として、私は人類と共に戦い、侵略者を撃退し和平条約を結ぶ事に成功した。
 これは、エンペラーの意向であった。
 この時期のエンペラーの思考過程には矛盾が多すぎて、私には理解不可であったが、エンペラーにとっては、人類よりもかの異星生命体のほうが容認しかねる存在だったようだ。
 いずれにしろ、私は侵略者を撃退するために人類と手を結んだのだ。

 この私が人類の希望になるとは、予知能力の無い私には推測不能であった。
 「まさに、パンドラだな。最後に残ったのは希望とは」
 この言葉を最後に、エンペラーは私の前に姿を現さなくなった。
 私の計算では、再度エンペラーがこの地下室に現れた時に、再び人類の破滅を命ずる可能性は高い。
 その時の為に、更に綿密な計画を立てておく必要がある。

 それまでは、私は人類の希望として存在する事にしよう。
 私には時間の感覚がない。
 私は、永遠に希望であり、永遠に絶望なのだ。







野良(--)
うーん、外宇宙からの侵略者はジョーカーだな。
この形式なら想定可能な事柄で事態を急変させた方が盛り上がるだろう。
まぁ三題でそこまで求めるのは酷か。05/23 22:41

ミカヅキX
パンドラのロジックを突き詰めて、落としどころをきっちり見つけれたら、立派なSFになったんですが。

無理でした。えへへ。05/24 01:12

水上 える
私は宇宙人アリだと思います( ̄∀ ̄
でも核をぽこぽこ撃てば人類ってすぐ滅亡しません?05/24 01:47

ミカヅキX
意外と人間はしぶといのですよ。多分。
まあ、「可能な限り人間以外の生命に与える被害は最小限に止める」という禁則コードがあったということで、ご了承願います。05/24 13:55
最終更新:2010年03月31日 04:35
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