疲れた顔に足を引きずって。
照り返す夕日に顔をしかめて。
行こうか。
戻ろうか。
悩みはするけど、しばらくすれば歩き出す背中。
そうだ行かねばならぬ。
何はなくとも生きて行くのだ。
僕らはどうせ、拾った命だ。
ここに置いてくよ、なけなしの──
◆
そう遠くない内に地獄の如き様相を呈する未来が確定している場──それが、見滝原という街である。
其処彼処で殺人事件が発生し、彼方此方にサーヴァントという名の魔人が跋扈しているのだ。
そんな、魔戦の舞台と化しつつある恐るべき場であっても、千翼にとっては心安らぐべき所であった。
何せ、この世界には『アマゾン』という存在がいない。
己が狩っていた怪物も、己を狩ろうとしていた組織もいないのだ。
だからこそ千翼は、記憶を封印されている間、NPCとしての生活を送る事が出来たのである。
彼が、ただの人間として生きる──それは何と幸福な、夢みたいな事であろうか。
だが夢はいつか醒めるもの。
記憶は封じる事が出来ても、アマゾンの特性である食人衝動を封じる事は出来ない。
見滝原に呼ばれてから一日も経たない内にその衝動を自覚した途端、彼の記憶にかけられた封印は解かれ、マスターとして聖杯戦争に参加するに至ったのである──夜。
月明かりが見滝原を照らす夜。
都心から離れた郊外に位置する廃屋にて。
「聖杯戦争が始まるまで、あともう少し。闘いはすぐそこだ。──いや、もう既に始まっているのかもしれないね」
現在見滝原を騒がせている数々の怪事件──ウワサを思い出しながらそう語るのは、千翼が召喚したサーヴァント、バーサーカーであった。
狂戦士のクラスであるとは思えないほどに、彼の話し方は理知的なそれである。
「準備は出来ているかな? マスター」
「…………」
バーサーカーの問いに対し、千翼はズズズッと音を鳴らしながらチューブ型の栄養食品を一気に吸っただけだった。
聖杯戦争のマスターに選ばれたという事実にまだ困惑しているというのに、戦う準備など完了しているわけがない。
確かな願いを持つ他のマスター達を斃し、彼らの願いを踏み躙る覚悟など、まだ決まっているはずがないのだ。
それでも。
「……俺は戦う」
未だ迷いがありながらも、彼の根本的な方針は定まっていた。
マスターとして覚醒した今、元の世界の記憶ははっきりと思い出せる。
千翼がいた世界は、彼が生きるにはあまりにも向いていない世界だった──いや。
人喰いの怪物であるどころか、人を怪物(アマゾン)へと変える特殊な細胞を持つ千翼の生存が受け入れられる世界など、平行世界中を見回しても存在しないだろう。
それこそ聖杯にでも願わない限り、彼の存在が祝福と共に受け入れられる現実など絶対にありえないのだ──いや、もしかすれば聖杯に願ったって叶わないかもしれない。
それでも、千翼が戦う意思を持っているのは──
「元の世界に戻るために──イユと共に生きる為に」
大切な彼女にまた会いたい。
共に生きたい。
そんなささやかな、しかし切実な願いを胸に、前に進もうとする。
「…………」
──もうトーカにあえないのか
──退かない 前に進む 百足みたいに
そんなマスターの姿に、バーサーカーはかつての自分を重ねた。
腕と脚を失い、絶体絶命の窮地に陥ってなお、大切な彼女の為に前に進まんとした、かつての自分を。
「……わかった」
千翼の言葉を受け、バーサーカーは頷く。
「君の思いはわかったよ、マスター。その思いに応えて、僕は誓おう。君を、元の世界に必ず返すと」
君を、生かすと──と。
絶対の意志をもって、そう告げた。
ああ──だが、バーサーカーよ。
金木研よ。
悲劇の舞台で踊る事を宿命付けられし演者よ。
お前は気づいているだろうか。
──何処かから、百足が這う音が聞こえたことに。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
金木研@東京喰種
【属性】
混沌・中庸
【ステータス】
筋力C 耐久A 敏捷B+ 魔力D 幸運E 宝具D
【クラススキル】
狂化:E++++
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
金木研は通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。
ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗すると魔力と幸運を除くステータスが上昇する代わりに、理性が消失し暴走する。
【保有スキル】
喰種:EX
種を喰らう種。人類の天敵。霊長の捕食者。
人肉を喰らう事で魔力が回復し、ステータスが上昇する。
ランクはバーサーカーが希少な隻眼の喰種である事から特異性のEXを意味する。
このスキルは『人を喰らう』という点を見れば、『対人類』と言い換えられるかもしれない──あるいは『獣の権能』とも。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
このランクにまでなると、霊核を完全に破壊されても判定次第では戦闘が続行可能になる。
いかなる負傷を受けたとしても、護るべきものがある限りバーサーカーは退かない。百足みたいに前に進む。
単独行動:C+++
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
バーサーカーは生前から多くの仲間に支えられて行動していたが、それと同じくらい単独での行動にも慣れていたため、下記の宝具の機能低下に伴い獲得した。
通常時だとCランク相当だが、下記のスキルで姿が変化した後はプラス値分上昇する。プラス値発揮後の数値を見るならば、単独行動のウルトラ上位互換のスキルにも匹敵する効果を有する。
喰竜変生:EX
変化スキルの最高位。あるいは赫者の究極体。もしくは『こうりゅうぎ』とも。
発動する事で己を竜へと変じさせ、多重のバフを獲得する。
肉体ステータスも全てが最大まで上昇するが、それに伴い狂化スキルも一気に上昇し理性を失う。
竜と化し、圧倒的な力を備えたバーサーカーの姿は大災害としか形容できない。
このように、実に強力なスキルだが、その分発動に必要な魔力量は凄まじく、令呪によるバックアップ、あるいは複数のサーヴァントを短時間で一気に喰らう必要がある。
【宝具】
『黒山羊(ゴート)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
隻眼の王が率いる喰種と人間の集団組織を召喚する宝具──だったが、金木研のバーサーカーとしての召喚に伴い、隻眼の王の側面よりも、東京を脅かした竜としての側面が強調された状態となった為、召喚は現在発動不可能となっている。
【weapon】
【サーヴァントとしての願い】
マスターを助けたい。
【人物背景】
彼を召喚するには、特別な触媒も資格も必要ない。
ただ求められる事。それがバーサーカーが召喚されるたった一つの条件である。
ステータスが高く、話が通じるタイプのバーサーカーである金木研は当たりの部類のサーヴァントと言える──だが。
だが、彼が登場し、関わる事になった物語が辿る結末は、悲劇に他ならないだろう。
【マスター】
千翼@仮面ライダーアマゾンズ
【能力技能】
ネオアマゾンズドライバーを用いる事で仮面ライダーアマゾンネオへと変身できる。
また、極限まで追い詰められる事で、オリジナル態へと変化する。
【人物背景】
人の世に生まれるべきではなかった怪物。
【願い】
大切な人と共に生きたい、という誰もが持つ根本的にして本能的な欲求こそが、彼の切なる願いである。
万能の願望器を用いれば、その願いが祝福とともに叶えられる未来もあり得なくはないだろう。
最終更新:2018年05月08日 21:30