――いつの間にか、とっぷり日が暮れていたらしい。
引っ越して来て間もない、見滝原の自分の部屋。
すっかり暗くなった部屋の中、僅かに窓から差す今日最後の残光に照らされて。
少女の身の上話を全て聞き終わった、黒い肌の神父は、静かに語りだした。

「ホタル……君は、『運命』というものを信じるかね」
「う、『運命』……ですか?」
「他人よりも『不幸』だという君……ならば、わたしに言われるまでもなく肌で感じているはずだ。
 偶然ではなく必然。
 コインを投げれば決まって大事なところで裏が出る。
 サイコロを振れば常に1のゾロ目。
 降水確率20%の予報に反して土砂降り。
 統計学もギャンブラーの勘も全てを裏切る……『予め決まっていた』、そんな『運命』のことだ」

少女はごくり、と唾を飲み込み、それに合わせて短く切りそろえられた黒髪が揺れる。
整った容姿の少女だった――いや、それも当然。
少女はアイドルである。
それも、日本でそれなりに名の知られたアイドルである。
白菊ほたる
所属プロダクションの倒産に伴い、見滝原の芸能プロダクションに移籍し、今は再デビューの準備中……
ということになっている、ひとりのアイドルである。
少女は神父の言葉を受けて、思わず自分の胸に手を当てる。
不幸。運命。必然。
あまりにも身に覚えが、あり過ぎた。

「そしてまた、この出会いも『運命』なのだろう。
 わたしがサーヴァントとして呼ばれたことも。
 この『能力』を携えて現界したことも。
 そして、わたしのマスターが君であることも。
 わたしは、君のような子をこそ、『救いたい』のだ」
「ライダーさん……」
「どうやら私の真の能力――『第二宝具』は、今は使用ができないらしい。
 魔力が足りないのか、条件が整っていないのか。
 しかしそれも、『聖杯』があればなんとかなるのだろう。
 そして私の『第一宝具』、『メイド・イン・ヘブン』があれば、おそらくは――」
「『聖杯』……『聖杯戦争』……」
「約束しよう、ホタル。
 この『ライダー』、『エンリコ・プッチ』は、必ずや君を『天国』に連れていく、と。
 わたしの願いが実現すれば、君はもう、『不幸』に怯えて過ごすことはない。
 『覚悟』を得ることで、君は『幸福』になるのだ――」

神父の姿をしたサーヴァントは、熱っぽく語る。
少女には神父の語る言葉の半分も理解できなかったけれど。
たったひとつ、神父が本気であることだけは、少女にも理解できた。

手の内にある、透明な宝石を改めて見つめる。
それは夕日に照らされ、深紅に輝くようで。
以前の所属事務所が倒産する際、最後にせめてと掃除を手伝った彼女が、倉庫で見つけたソウルジェム。
これを手にしたのは、果たして『不幸』だったのか、それとも『運命』だったのか。
記憶を取り戻し、聖杯戦争の知識を得たばかりの白菊ほたるには、判断がつけられなかった。


【クラス】
ライダー

【真名】
エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険 第6部「ストーン・オーシャン」

【属性】
中立・善

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:EX (スキル参照) 魔力:C 幸運:C 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 プッチには特に何か際立ったエピソードがある訳ではないが、彼は聖職者であり、このランクに至っている。

騎乗:―(A)
 乗り物を乗りこなす才能……なのだが、このライダーは乗り物を必要としない。
 後述する宝具/スタンド『メイド・イン・ヘブン』はどんな乗り物よりも速い。
 なお便宜上、『メイド・イン・ヘブン』の疾走に判定が必要な場合、A相当の騎乗スキルとして判定を行う。

【保有スキル】
加速:EX
 敏捷のステータスおよび移動速度を限度なく上げる能力。
 常時発動型のスキルであり、自動的に敏捷のステータスも『EX』となる。
 通常、表記『EX』は決して『A++』よりも『上』を意味しないが、これに限ってはその例外に相当する。
 敏捷『A++』と比べても、遥かに、純粋に、さらにケタ違いの速度で動くことができる。
 全速力で移動した場合、サーヴァントの視力をもってしても視認は困難。心眼(偽)等をもっても回避は困難。
 そして能動的に発動させるタイプの能力は大抵は後手に回るしかないという、破格で常識外のスピードを誇る。

【宝具】
神の思し召し(メイド・イン・ヘブン)
 ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 エンリコ・プッチの最後のスタンドであり、破格の『加速:EX』の力の源。
 『加速』のためにはこの宝具を展開する必要があり、特に消耗などはない。
 馬の前半身と人の上半身を繋げたようなヴィジョンのスタンドで、プッチ自身から遠く離れることはできない。
 速度は速いが、精密作業性は決して高くはない。
 そのあまりの速度に水面を走るような芸当も可能だが、基本的に、速さ一辺倒の能力である。
 なお『メイド・イン・ヘブン』の前の2つの能力、『ホワイトスネイク』『C-MOON』は使用できない。

天国への階段(ステアウェイ・トゥ・ヘブン)
 ランク:EX 種別:対世界宝具 レンジ:全世界 最大捕捉:全世界
 世界全てを『加速』させ、『特異点』を超えて一巡させる能力。
 むしろこれこそがプッチのスタンドの真価であり、加速能力などそのための手段でしかない。
 しかし現時点において、この宝具は何故か使用不能となっている。
 プッチ自身にもその理由は分かっていない。
 『聖杯』の力があればあるいは、と思っているが、果たして。

【武器】
 スタンド『メイド・イン・ヘブン』

【人物背景】
 グリーンドルフィンストリート刑務所の教誨師。
 善良な神父と思われていた彼こそが、徐倫を冤罪にハメた一連の事件の黒幕であった。
 承太郎の記憶から友人・DIOの残した『天国に行く方法』を手に入れた彼は、そして行動を起こす――
 ジョジョ第六部、世界が一巡した後、敗北してからの参戦。

【サーヴァントとしての願い】
 使用不能となっている第二宝具を解放し、ふたたび世界を一巡させ、『天国』を実現させる。
 そして白菊ほたるを含めたすべての人類を『幸福に』する。


【マスター】
白菊ほたる@アイドルマスター シンデレラガールズ

【能力・技能】
 その圧倒的な『不運』。
 アイドルとしての歌唱力、およびそれなりの知名度。

【人物背景】
 不幸体質の薄幸少女。
 その『不幸』の内容・程度は多岐に渡る。
 引いたおみくじが全て大凶、といった冗談めいたものから、所属プロダクションの倒産まで。
 しかし彼女自身には自覚がないが、どんな『不幸』であれ、彼女の命に関わるような事態は一切起きていない。
 アイドル活動も多難続きではあるが、曲がりなりにもデビューは果たし、既にそれなりのファンがついている。

 以前まで所属していた芸能プロダクションが倒産した所からの参戦。
 いわゆるゲームにおける『プロデューサーさん』に出会う前に相当する。
 見滝原での設定上では、そこから見滝原にある別の芸能プロダクションに移籍し再デビューする直前だった。

【マスターとしての願い】
 ライダーがもたらすという『天国』に期待する……?
 そのために聖杯戦争を頑張って貰う……?
最終更新:2018年05月10日 18:34